過払い金

取引の分断と一連性とは?取引の一連性が認められる6つの条件も解説!

同じ業者で何度もお金を借りた場合、それらの取引が分断されているのか、一つの取引が続いていると判断されるかは、過払い金請求の裁判でもよく争われています。

なぜなら、取引の分断は、過払い金の時効や取り戻せる過払い金にも影響するからです。

そこでこの記事では、

  • 過払い金請求における取引の分断と一連性の違い
  • 取引の一連性が認められた場合のメリット
  • 取引の一連性が認められる条件

など、取引の分断や一連性について解説します。

この記事を読めば、どのようなケースで、複数の取引が一つの取引として続いていると認められるのかわかるようになります。

特に同じ消費者金融やクレジットカード会社で何度もお金を借りたことがある方は、ぜひ参考にしてみてください。

過払い金請求で取引の分断と取引の一連は大事な争点

過払い金請求をする方のなかには、金融機関など債権者からお金を借りて完済した後に、再度同じ債権者から借金をするケースもあります。

このようなケースでは、過払い金請求をした方と債権者の間で取引の分断について争われることが多いです。

取引の分断とは、複数の取引を別の取引として扱うこと

取引の分断では、複数の契約があっても個々の契約として考える

取引の分断とは、同じ金融機関など債権者から何度もお金を借りている場合にそれぞれの取引を別個の契約として考えることです。

通常、借金の完済後から再度お金を借りるまでの間には、空白の期間があるのが普通です。

そのため、同じ業者で何度もお金を借りている場合、債権者側は「空白期間があるので、一旦契約は分断されている」と主張します。

取引の一連性とは、最初の取引が一つの取引として続いていること

取引の一連性では、複数の取引があっても一つの取引として考える

一方で、過払い金請求を行う側の司法書士や弁護士の多くは、債権者とは違う考え方です。

1回目の返済終了日から取引していない期間があっても、再度契約をすれば1回目の契約がそのまま続いていると主張します。

この考え方を取引の一連性と呼びます。

過払い金を取り戻したい方と債権者の間では、複数の取引が分断されているのか、一つの契約として続いているのか争われることが多いです。

ただ、複数の取引に分かれているのか、続いているのかは、裁判官により考え方が違うため、裁判による判決を待たなければはっきりしないケースも多いです。

ところで、なぜ過払い金請求をする司法書士や弁護士は、1回目の取引と2回目以降の取引が一つの取引として続いていると主張するのでしょうか?

実は、複数の取引が一つの取引として認められると、メリットがあるのです。

取引が続いていることが認められた場合のメリット

過払い金請求をする際に、複数の取引が続いていることが認められると、さまざまなメリットがあります。

  • 時効が延びるため過払い金請求できる期間が長くなる
  • 取り戻せる過払い金が増える可能性がある

時効が延びるため過払い金請求できる期間が長くなる

複数の取引が一つの取引として認められると過払い金の時効が延びるため、過払い金請求が可能な期間が長くなります。

そもそも、過払い金請求には、請求可能な期限があります。民法166条によれば、時効は、最後の取引終了日から10年までと定められています。

(債権等の消滅時効)
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
(引用元:民法第166条|e-Gov

取引終了日とは、すなわち借金を返し終えた日のことです。

そのため、借金の完済日から10年以上経過しているという理由で、過払い金請求を諦める方もいます。

ただ、借金を完済した後に、同じ業者から再度お金を借りた場合は、最初の完済日から10年以上が経過していても時効を迎えていないケースもあります。

なぜなら、1回目の借金完済日を時効の起点(時効期間を数え始める日)にするのか、2回目以降の取引終了日を時効の起点にするのかで、時効を迎える日も変わるからです。

取引が分断されているか一連性があるかにより時効期間が変わる

※2回目以降の取引で同じ契約書を利用していれば、時効が延びる可能性がある

たとえば、複数の取引が分断されていると考えた場合、時効の起点は1度目の借金完済日である平成18年6月です。

そのため、時効の起点日から10年が経過した平成28年6月より後に過払い金請求はできません。

一方、1回目の借金完済日と2回目の取引開始日の間に空白期間があっても、一つの取引が続いていると認められた場合はどうなるでしょうか?

この場合、時効起点は、1回目の借金完済日ではなく、2回目の完済日にあたる平成23年6月です。

時効を迎える日が令和3年6月まで延びるため、期間内であれば、過払い金請求ができます。

なお、取引が続いていると認められた場合に、時効が延びるかについては、最高裁判所でも判例がでています。

判例によると、一連性のある取引の場合、過払い金返還の請求をする権利が消滅する時効は、取引が終了した時点から進行するとされました。

過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては,同取引により発生した過払金返還請求権の消滅時効は,過払金返還請求権の行使について上記内容と異なる合意が存在するなど特段の事情がない限り,同取引が終了した時点から進行するものと解するのが相当である。
(引用元:最高裁判所判例集|裁判所

つまり、同じ消費者金融やクレジットカード会社で複数回借金をした場合、1回目の借金完済日から10年以上が経過していても、過払い金を取り戻せる可能性はあるのです。

取り戻せる過払い金が増える可能性がある

複数の取引が一つの取引として続いていると認められた場合、取引が分断されている場合よりも多くの過払い金を取り戻せる可能性があります。

なぜなら、複数の取引が一つの取引として続いている場合、取引ごとに発生した過払い金を次の借入金のうち元本の返済に充てられるからです。

1回目の取引で発生した過払い金を2回目の取引の元本に充てられれば、2回目の取引の元本が減った状態で過払い金を計算できます。

借金の元本が減るということは、本来支払うべき利息も減るということです。

利息を支払いすぎているのであれば、当然多くの過払い金を取り戻せる可能性が高いです。

一連性があると認められれば、1回目の取引時の過払い金を2回目の元金に充当できる

たとえば、1回目の取引で過払い金が30万円発生し、2回目の借金の元本が50万円のケースで取引が続いていると認められたケースで考えてみましょう。

このケースでは、2回目の元本は20万円に減ります。そのため、利息として支払うべき金額は減ります。

貸付金額 2回目の取引の元本
分断取引 50万円の元本をもとに計算される
一連取引 50万円ー30万円=20万円(本来の元本)
本来支払うべき利息は、20万円の元本から計算された利息になる

一方で、1回目の取引と2回目の取引が個別であると判断されると、取引ごとの過払い金を計算しなければなりません。

そのため、1回目の取引で発生した過払い金を2回目の元金返済に充てることは不可能です。

取引が分断と判断されれば、1回目の過払い金を2回目の元金に充てられない

同じ業者から何度も借金をした場合、複数の取引がそれぞれ個別の取引とされるのか、一つの取引とされるのかにより、戻ってくる過払い金額が異なります。

複数の取引が一つの取引として認められるための条件とは?

金融機関など債権者と何度も取引をしていれば、必ず一つの取引が続いていると認められるわけではありません。

では、どのような条件を満たせば、一つの取引として続いていることが認められるのでしょうか?

取引が続いていると認められるかは、借金をしたときに債権者と結んだ契約書が何枚あるのかが鍵を握ります。

複数回同じ債権者から借金をしたとしても、契約書が一枚しかない場合と契約書が複数枚ある場合では、取引が続いていると認められるための条件が違います。

基本契約書が1枚しかない場合は、取引が続いていると認められやすい

基本契約書が1枚しかない場合は、引き続き契約が続いていると認められやすいです。

特に、契約書内で過払い金充当合意がされていれば、複数の契約でも一つの契約として扱われます。

過払い金充当合意とは、1回目の完済時に存在する過払い金を、2回目の取引時に発生する借金の元本返済に充てられることについて合意しているという考え方です。

このような考え方がある理由は、基本契約が続いているのであれば借金を完済していても、再度基本契約と同様の条件で借金をする可能性があるからです。

過払い金請求をすると、金融機関など債権者から「1度目の取引と2度目の取引は別の契約。1度目の取引終了日から10年が経過しているので時効を迎えています」と言われても引き下がる必要はありません。

ただし、契約書が1枚しかない場合でも例外はあります。

1回目の取引終了日と2回目の取引開始日間の空白期間が長期に渡っている場合は、裁判官により、取引は分断していると判断されるケースもあるので、注意が必要です。

具体的には、空白期間が1年を超えてくると、基本契約書が1枚しかなくても取引がずっと続いていると認められなくなる可能性があります。

ただ、どのぐらいの空白期間があれば、複数の取引が一つの取引として続いていると認められるかは裁判官次第です。

そのため、下級審で複数の取引はそれぞれ別個の取引分断と判断されても諦めるのは早いです。控訴すれば、一つの取引として認められる可能性はあります。

借金をしたときの基本契約書が複数ある場合の条件

同じ業者から借金をする際に、再度契約書のやり取りを行った場合は、どうなるのでしょうか?

契約書が複数あり、取引が続いていると認められるかについて、最高裁判所平成20年1月18日判決により、判断方法が示されました。

第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行われた期間の長さやこれに基づく最終の弁済から第2の基本契約に

基づく最初の貸付けまでの期間,第1の基本契約についての契約書の返還の有無,借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続の有無,第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間における貸主と借主との接触の状況,第2の基本契約が締結されるに至る経緯,第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同等の事情を考慮して,第1の基本契約に基づく債務が完済されてもこれが終了せず,第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができる場合には,上記合意が存在するものと解するのが相当である。
(引用元:最高裁判所判例集|裁判所

過払い金請求訴訟で取引が分断、取引が一連について争う際は、以下の6つの条件をもとに判断されます。

  • 1回目の契約期間がある程度長い
  • 契約までの空白期間が長すぎないこと
  • 利率など契約内容に違いがない
  • 空白期間中に金融機関など債権者から接触があった
  • 1回目の取引終了後に契約書の返還がなかった
  • 2回目の取引開始時にカードが再発行されていない

1回目の契約期間がある程度長い

まず、1回目の契約期間がある程度長いことが重要です。なぜなら、1回目の契約期間が長いということは、次も同じ債権者から借りる可能性が高いと判断できるからです。

逆に、1回目の契約期間が短ければ、再度お金に困ったときに同じ債権者からお金を借りるとは限りません。

ただ、1回目の契約期間がどのぐらい長ければ、取引が続いていると認めれるかは、特に決まっておらず、裁判官の判断によります。

契約までの空白期間が長すぎないこと

1回目の取引終了日から2回目の取引開始日を表す空白期間が長すぎないことは、とくに重視されます。

なぜなら、空白期間が短ければ、返済終了後に同じ債権者からお金を借りようとしていてもなんら不思議ではないからです。

取引が続いていると認められやすい空白期間の長さは決まっていませんが、1年以下であれば、認められやすい傾向があります。

ただ、空白期間が1年を超えていても、取引が続いていると認められた判例もあるため、諦める必要はありません。

利率など契約内容に違いがない

2回目以降の取引をする際に、1回目の取引時に結んだ契約書と同じ条件で契約を結ぶこともあります。

契約内容に違いがないのであれば、1回目の取引が続いていることが認められやすいです。

ただ、利率や限度額が変更になっていても、1回目の取引が続いていると認められる可能性はあります。

実際に平成28年5月24日東京裁判所の判決では、契約書の利率や限度額が異なっていても、実質的な契約は変わっていないという理由で、複数の取引は連続しているという判決がなされています。

空白期間中に金融機関など債権者から接触があった

空白期間中に金融機関など債権者から接触があった場合は、1回目の取引が続いていると判断されやすいです。

債権者からの接触とは、完済後に再度借入の勧誘があったかどうかです。

電話での勧誘以外にダイレクトメールなどでの勧誘についても、債権者からの接触にあたる可能性があります。

1回目の取引終了後に契約書の返還がなかった

借金を完済したにもかかわらず、契約書や返済用のカードを引き続き利用している場合、1回目の取引が続いていると認められやすいです。

なぜなら、契約を終了する意思があるのなら、契約書の返還があるからです。

1回目の取引終了後に契約書の返還がなかった場合は、契約がまだ続いていると判断されるでしょう。

一方で、再度お金を借りるときに契約書のやり取りをしているケースでは、別の取引として扱われやすくなります。

2回目の取引開始時にカードが再発行されていない

金融機関など債権者から借金をする際に、お金を借りたり返済したりするために利用できるカードが発行されることがあります。

借金の返済が終了したときにカードの失効手続きをした場合、再度同じ業者でお金を借りたとしても、取引は分断していると判断される可能性があります。

一方、2回目の契約以降も、1回目の取引で使用していたカードを使用して借金の返済をしているのであれば、取引が続いていることが認められやすいでしょう。

ところで、クレジットカード会社からお金を借りた場合は、借金を完済したとしてもカードの失効手続きが行われることはありません。

なぜなら、クレジットカードは、ショッピング目的でも利用するからです。

そのため、クレジットカードのキャッシング枠を利用してお金を借りている場合は、取引が続いていることが認められやすいです。

このように、取引が分断されているか、続いているのかについては、さまざまな条件をもとに判断されます。

したがって、6つの条件をすべて満たしていなくても、取引が続いていることが認められる可能性は十分にあります。

ただし、裁判官によって判断がわかれるケースもあるので注意が必要です。自分で判断するのではなく、弁護士や司法書士へ相談した方が良いです。

基本契約を結んでいない場合

事例としては少ないですが、借金をした方と金融機関など債権者との間で基本契約を結んでいないことがあります。

この場合、基本契約書はありません。しかし、最高裁判所の判決にもある通り、過払い金充当合意があるものとして、一つの取引が続いていると判断されます。

前記事実関係によれば,本件各貸付けは,平成15年7月17日の貸付けを除き,従前の貸付けの切替え及び貸増しとして,長年にわたり同様の方法で反復継続して行われていたものであり,同日の貸付けも,前回の返済から期間的に接着し,前後の貸付けと同様の方法と貸付条件で行われたものであるというのであるから,本件各貸付けを1個の連続した貸付取引であるとした原審の認定判断は相当である。
(引用元:最高裁判所判例集|裁判所

そのため、同じ債権者からお金を借りていて契約を結んでいない場合でも、一つの取引が続いていると判断されやすいです。

弁護士に依頼をしなければ、取引の分断と一連性があるのか判断できない

最高裁判所の判例では、取引が続いていることが認められるケースも多いです。

ただ、金融機関など債権者と複数の取引がある場合、取引が分断されているか一連性があるのかの判断は簡単ではありません。

取引に関する書類を集めた上で、取引がずっと続いていることを証明する必要があります。

そのため、同じ債権者から何度もお金を借りている場合は、通常の過払い金請求とは異なり、過払い金を取り戻すのに苦労するでしょう。

しかし、過払い金請求訴訟の経験や実績が豊富な弁護士や司法書士に依頼をすれば、過払い金を取り戻すことは可能です。

また、過払い金の引き直し計算についても、無料もしくは格安で対応する弁護士事務所や司法書士事務所は多くあります。

おわりに

消費者金融やクレジットカード会社から何度もお金を借りた場合、複数の取引が分断されているのか、一つの取引が続いていると判断されるかは大きな違いです。

過払い金請求をされる方にとっては、一つの取引が続いていると判断された方がメリットがあります。

  • 過払い金請求が可能な時効期間が延びる
  • 過払い金を多く取り戻せる可能性がある

ただ、取引の分断と一連性についてに判断は、裁判官により判断がわかれるところです。そのため、自分で過払い金請求を起こした場合、一つの取引が続いていることを証明するのは難しいでしょう。

そのため、何度も同じ業者でお金を借りた場合は、弁護士や司法書士に依頼すべきです。