過払い金請求に関して専門家が間にはいることはよくあることですが、これはあくまで手続きや交渉の代理人といった法律上のものです。
一方で、過払い金請求そのものは本人が行わなければならないものですが、「家族が代理で請求する」という形の代理は可能なのでしょうか?
特に本人がケガや病気で動くことができない場合、当然代理での請求も考えたくなるものです。
本稿では、過払い金請求に関して家族が本人の代理で請求することはできるのかということについて説明していきます。
過払い金請求は原則的には本人がおこなう
過払い金請求は、原則的に本人が行わなければなりません。
借金をしていた人のみが請求する権利を有しているため、基本的に家族やそれ以外の人が代理を行うことはできず、例外の場合のみとなります。
もちろん、司法書士や弁護士といった専門家への依頼も本人でないと行うことはできません。
病気やけがなどで本人が動けない場合は代理が可能
では、例外的に過払い金請求を家族が代理で行うことができるケースとはどのような時なのでしょうか?
例外となるのは請求するべき本人が動けないといったケースで、ケガや病気で入院しているといったシチュエーションが該当します。
一方で、いくら本人が動けないからといっても家族が独断で代理を務めて請求するということはできません。
過払い金請求はあくまで請求できる権利を有する本人の意思が必要であり、意思が無ければ代理もそもそも不可能です。
「動けない家族から過払い金の請求をしてもらうように頼まれた」という状況なら意思があるため代理を行えますが、「動けないのをいいことに勝手に請求を始める」ことはできないので、しっかりと許可をとならければなりません。
もちろん、請求する相手にも意思表示をする必要があり、本人が過払い金請求を希望する旨の内容を記載した委任状を作成しておく必要もあります。
本人に過払い金請求する意志がない場合
前述の通り、家族がいくら請求したいと思っても本人が希望しない限り請求することはできません。
本人の同意なしで代理をする方法は一切ありませんので、代理で請求したい場合は本人を説得するしかないのです。
基本的には過払い金請求に関するメリットを説明して、本人を納得させるという形で説得します。
過払い金請求のメリットとしては
・借金を完済している状態ならブラックリスト入りのリスクが無く、不安なく請求できる
・借金がある状態なら、返還されたお金で完済できたり借金を減らすことができる
などがありますので、本人の現状に合わせて説明してあげるといいでしょう。
もちろん、説得しても請求の意思を示さない場合は請求できませんので、諦めるしかありません。
もちろん、専門家についても本人が依頼しなければならず、代理で頼むことは原則的に不可能です。
依頼したい場合は同様に説得が必要で、費用は後払いのところがある、手続きの手間が掛からないといった利点を説明することになるでしょう。
また、依頼に関しては専門家と本人がやり取りを交わす必要もあります。
本人が無理して専門家との話し合いに出席したり、電話のやり取りが求められますので、その点も説明しなければなりません
中には本人のもとに直接出向いてくれる法律事務所もありますから、まずは事情を説明して相談をしてみるといいでしょう。
代理での過払い金請求は裁判を起こす際にも不安要素がある
過払い金請求を起こすと基本的に貸金業者側との話し合いから返還する金額を決めていきますが、貸金業者側は支払金額を渋ることが多く平行線になる可能性も高いです。
折り合わない場合は裁判で争うことになりますが、代理で請求をしている場合は裁判提起時に大きなリスクを伴います。
過払い金に限った話ではありませんが、裁判では請求額が140万以下の場合簡易裁判所に、それ以上の場合は地方裁判所にそれぞれ訴訟を提起することになっています。
しかし、代理請求を行うことができるのは簡易裁判所のみで、本人が請求することが必須な地方裁判所への提起は行うことはできないのです。
140万円以上の請求はできないということであり、この条件は交渉の段階でも影響してくる可能性があります。
もちろん、地方裁判所への提起に切り替えることは可能ですが、本人が請求することになりますので、当然本人がやり取りを行う必要がありますし、裁判にも出席が求められます。
代理を行っている時点で本人が万全でないということが前提になりますので、地方裁判所での提起は極めて厳しいといえるでしょう。
このため、発生している過払い金が140万円以下なら大丈夫ですが、それ以上の過払い金が発生している場合は140万以下に妥協して訴訟を起こさなければなりません。
以上のように、過払い金請求を代理で行うと裁判に移行した場合に請求できる金額に限りがあるというリスクがありますので、その点をしっかりと頭に入れておく必要があります。
また、貸金業者側は何度も過払い金請求に関する対応を何度も行っているため、裁判の知識に関しても豊富で、それを前提とした主張を展開します。
代理で交渉を行うと足元を見たような条件の提示を行ってくることもあり得るので、その点についても注意しておかなければなりません。
専門家に依頼する場合、140万円以下の過払い金であれば、司法書士が代理で請求でき、裁判にも対応できます。140万円以上の過払い金請求は弁護士であれば代理が可能です。
借金をしていた人が亡くなった場合、相続人が過払い金請求できる
以上のように、例外でしか行えない上にリスクもある代理での過払い金請求ですが、本人が亡くなってしまっている場合は少し話が変わってきます。
家族が亡くなってしまうと、生前遺した財産や負債を相続するのかを3カ月以内に決断します。
この時に借金を相続すると、発生した過払い金ごと相続をしたことになり、請求を行うことができるようになるのです。
もちろん、借金が過払い金以上に残っていると相続しても損になりますので、その点はよく確認して相続を考える必要があります。
また、交渉時には相続人であることを示すために戸籍謄本を示す必要がありますから、普段の代理請求とは少し違った形になることも頭に入れておかなければなりません。
また、相続といっても一人だけで相続するというケースだけではないので、それについても考慮する必要があります。
どれだけ過払い金が相続されるのか、請求は一人で行うのか相続人全員で行うのかといったことも話し合う必要があり、この点をまずクリアしていかなければならないということも頭に入れておかなければなりません。
状況に応じて対応が変わってきますので、ややこしい場合は専門家に相談するといいでしょう。