債務整理

任意整理すると信用情報に傷がつく 〜早期返済には止むを得ない場合も〜

信用情報は、金融機関が借金をする取引の前に、返済能力などを確認するための情報のことです。借金の返済に困って任意整理をした場合、いわゆる「ブラックリスト入り」する状態になります。

任意整理の手続きをすると、事故情報が消えて再び借金ができるようになるまで時間がかかります。ブラックリスト入りしている状態では不便が生じることもあるため、任意整理の前にどのくらいで解消されるか確認しておく必要があります。また、事故情報が消えたかどうかは自分で確認する方法もあります。

今回は、信用情報の仕組みや自分の情報の確認方法、ブラックリスト入りしている期間中の対処方法などについて具体的に解説していきます。

任意整理は信用情報に影響がある

任意整理をすると信用情報に影響があり、様々な経済活動が制限されます。そのため、任意整理をする前にそれらのリスクをあらかじめ考慮しておくことが必要です。

信用情報

信用情報とは、クレジットカードの発行やローン契約などの前に、貸金業者が申込者の返済能力や過去の取引履歴などを確認するための情報を指します。

信用情報は、クレジットカードを発行する申込みをしたり、車や家などをローンで購入したなどの取引が開始された際に登録されます。また、月々の返済を行う際にも、返済を行った履歴が情報として登録されています。

任意整理

任意整理とは、借金の取引を開始した時期にさかのぼり、利息制限法という現在の法律で決められた上限金利15~20%で再計算することで、利息をカットして元本のみを3~5年間で返済する手続きのことです。任意整理では貸金業者と弁護士などが直接交渉して和解をし、和解内容に基づいて無理のない返済計画で借金を返すことができます。

任意整理は、個人再生や自己破産どの他の債務整理に見られるデメリットを避けながら、利息のカットなどを行うことができるため、債務整理の中では比較的ハードルが低い手続きです。

任意整理の手続きの流れ

任意整理では、依頼すると弁護士などが取引履歴を貸金業者から取り寄せ、現在の基準で利息計算などを行います。この段階で過払い金があった場合、過払い金請求も行うことになります。

その後、借金額を確定し、業者と交渉、和解内容に基づいて新たな返済を行うことになります。

任意整理は信用情報に影響がある

任意整理は借金の利息をカットして、3~5年で返済していくように貸金業者と交渉するため、面倒な手続きが少なくて済みます。

しかし、任意整理を行うと、一定期間銀行やクレジットカード会社などの審査に通らなくなります。そのため、新規クレジットカードの発行はできず、今使用しているカードも利用停止されることがあります。住宅ローンや自動車ローンに関しても利用することができなくなります。

この信用情報の傷がついた状態を「ブラックリスト入りした」状態と言い、信用情報機関に事故情報が登録されている状態になっています。クレジットカード会社や消費者金融は、契約の申込みがあれば信用情報を必ずチェックするため、貸金業者が申込者の事故情報を確認すると、審査通過は難しくなるのです。

信用情報機関の特徴と信用情報のチェック方法

信用情報は信用情報機関が管理し、必要に応じて貸金業者に開示します。信用情報機関にはそれぞれ役割に違いがあり、自分で情報をチェックすることもできます。

信用情報機関の役割

信用情報機関は、個人の支払いや滞納などの信用情報を管理する機関であり、CIC、JICC、KSCの3つの機関が存在します。

各信用情報機関に加盟している金融機関は、融資やクレジットカードの作成前に、申込者に関する過去の信用情報を確認し、審査に役立てます。

金融機関は借金を確実に返済できる能力がある人物にしかお金を貸したくありません。そのため、金融機関にとって申込者の信用情報は非常に大切な判断材料となるのです。

各信用情報機関の違い

それぞれの信用情報機関によって、加盟する企業などに違いがあります。まず、CIC(株式会社シー・アイ・シー)ですが、こちらは主に信販会社、クレジットカード会社が加盟している信用情報機関です。

借金の返済に分割払いで対応している金融機関や貸金業者であれば、必ず信用情報の照会を行わなう必要があります。CICは、これらの業者からの照会に対して、管理している信用情報を提供しています。

次に、JICC(株式会社日本信用情報機構)ですが、こちらは主に貸金業者が加盟している信用情報機関となります。

消費者金融会社などが貸付を行う際に、信用情報をJICCに照会し、JICCに登録されている信用情報が提供されます。

最後にKSC(一般社団法人全国銀行協会)ですが、こちらは主に銀行と信用金庫が加盟する信用情報機関になっています。

銀行のローンやカードローンを契約する際などに信用情報の照会先となる機関です。

機関名 登録されている情報
株式会社日本信用情報機構(JICC) ・本人の氏名、生年月日、電話番号、郵便番号
・申込内容
・ローン等の契約内容や支払い状況に関する情報
・クレジットカードの利用履歴
株式会社シー・アイ・シー(CIC) ・本人の氏名や生年月日、電話番号、郵便番号
・申込内容
・クレジットカードの契約内容や支払い状況に関する情報
・クレジットカードの利用履歴
全国銀行個人信用情報センター(KSC) ・クレジットカードやローンの契約内容、返済、延滞などの履歴
・小切手、手形などの不渡情報
・個人再生や自己破産などの官報に公開されている記録
・本人確認書類(運転免許証)などの紛失情報
・盗難被害にあった場合などの本人が申告した情報
・銀行ローン、銀行系カードの利用履歴

なお、事故情報については3つの信用情報機関で共有されます。

どれかの信用情報機関で延滞の情報が登録されると、他の信用情報機関加盟の金融機関でも新たな借金やローン契約はできなくなります。

各債務整理によるブラックリストの登録機関の違い

3つの債務整理は、手続きすると事故情報として登録され、「ブラックリスト」入りしますが、登録期間は手続きの種類によって異なります。

なお、信用情報機関によって、ブラックリスト期間のカウントの開始方法は捉え方は異なります。また、状況に応じてブラックリストへの登録期間が伸びるケースもあります。あくまで参考程度に知っておき、解消時期が近づいたらチェックするようにすると良いでしょう。

機関名 任意整理 個人再生 自己破産
CIC 5年 5年 5年
JICC 5年 5年 5年
KSC 5年 10年 10年

信用情報をチェックする方法

自分の信用情報が気になる場合は、自分で情報開示をすることができます。ここでは、CICに開示する場合を例に説明していきます。

CICに信用情報の開示請求をする際に必要なものとしては、登録情報開示の申込書や発行手数料、運転免許証や免許証などの身分確認書の3点です。ただ、インターネットで開示請求を行うことも可能で、その場合は登録情報開示の申込書は用意する必要はありません。

登録情報に関する開示申込書は、信用情報機関の公式ホームページからダウンロードし、記載して提出します。発行手数料はクレジットカードや郵便局で発行する定額小為替証書で支払いが可能です。本人確認書類は、下記のうちどれかを用意すれば申込できます。

  • 運転免許証​
  • パスポート
  • 住民基本台帳カード
  • 個人番号カード
  • 外国人登録証明書、在留カード、又は特別永住者証明書
  • 健康保険証
  • 公的年金手帳
  • 福祉手帳
  • 戸籍謄本
  • 住民票
  • 印鑑登録証明書

CICでは、パソコンやスマートフォンなどインターネットから信用情報の開示請求ができます。開示するには手数料として1000円が必要で、インターネットで開示請求を行ってから96時間以内なら何度でも信用情報を確認することが可能です。

インターネットから照会を行う場合は、クレジットカードで手数料1000円の決済を行う必要があるため、クレジットカードを持っていない場合は郵送か窓口での開示請求を行わなければなりません。

インターネットを使用して信用情報の開示請求を行う際には、デバイス、クレジットカード、クレジットカード情報を登録している電話番号を用意しておき、クレジットカードに登録されている電話からCICに電話をかけ、音声アナウンスに従って数字を入力していきます。

信用情報に傷がつくとどうなる?

信用情報に傷がつくと、

  • クレジットカードが利用できなくなる
  • ローン契約ができなくなる
  • 携帯料金の分割払いができなくなる
  • 奨学金の保証人になることができない
  • 賃貸契約ができない場合がある

などの影響があります。

クレジットカードが利用できなくなる

ブラックリスト入りする最大のデメリットは、クレジットカードの新規発行ができなくなる点です。クレジットカードの発行を申し込んで審査に落ちてしまうと、新たに事故情報が登録されてしまい、ブラックリストの登録解除までさらに期間が長くなるため、おすすめすることはできません。

任意整理をする前に使用していたクレジットカードについても、しばらくすると使用できなくなってしまいます。この使用できなくなるタイミングは、クレジットカード会社ごとに異なります。

また、クレジットカードの更新を行う際にカード会社は再度審査を行い、信用情報を確認しますので、クレジットカードの有効期限が近くなると使えなくなると考えておいたほうが良いでしょう。

ローン契約ができなくなる

ブラックリストに載ってしまうと、ローンやキャッシングなどの借金ができなくなります。しかし、借金ができないことは必ずしもデメリットになるわけではなく、無計画にキャッシングを利用していたような「借金癖」を解消するチャンスととらえることもできます。自分の経済状態など身の丈に合った生活を習慣づけるためにも良い機会になると考えることもできます。

また「ブラックリストの期間中でもお金をお貸しします」という誘い文句で借金をさせる業者は、違法なヤミ貸金業者である可能性が高いため、絶対に利用しないようにしましょう。

携帯料金の分割払いができなくなる

ブラックリストに入ると携帯電話やスマホを購入した際の分割払いができなくなります。携帯端末の分割料金は月々の利用料金と一緒に支払われますが、この分割払いも一種のローンと見なされます。

携帯料金を分割払いする際には信用情報登録機関に照会が行われ、ブラックリスト入りすると審査が通らない可能性が高いとえます。

どうしても携帯電話の機種を交換したいのであれば、一括払いで支払うか古い機種を購入し、携帯電話本体の支払い分を抑えると良いでしょう。携帯電話は、旧機種であれば価格が下がり一括購入しても大きな出費にはなりません。

また格安スマホ会社に乗り換えを行うと、毎月の利用料金下がり、負担も減ります。

奨学金の保証人になることができない

ブラックリスト入りすると、奨学金の保証人になることはできなくなります。例えば、本人の子どもが奨学金を受給する際、親であっても保証人になることはできません。そのため、配偶者や親族など別の人に保証人をお願いする必要がでてきます。また、「機関保証制度」という、保証機関が本人の保証人になってくれる制度も用意されています。現在では機関保証も多くの人が利用しているため、保証人になれないことが大きなデメリットになることは少ないでしょう。

賃貸契約ができない場合がある

賃貸物件の入居審査では、ブラックリストに入っているかどうかが問われるケースはほとんどありません。そのため、任意整理などをしてもほとんどの場合引っ越しなどを問題なく行うことが可能です。

しかし、賃貸住宅で保証会社と契約することを義務付けているケースがあります。保証会社は本人の保証人になってくれる会社のことですが、賃貸物件の中では貸金業者が保証会社になっている場合もあり、入居審査において信用情報を確認されることがあるのです。この信用情報を確認する過程でブラックリスト入りが知られてしまうと、入居を断られるケースがあるのです。対処法としては、契約しようとしている不動産会社に対してあらかじめ保証会社はどの会社かを聞いておくといいでしょう。

ブラックリスト入りしている期間中でもできること

ブラックリスト入りしている期間中でもできることとしては、

  • デビットカードを使う
  • 電子マネーで決済
  • 返済中の借金は滞納しない

などの対処法があります。

デビットカードを使う

デビットカードは、発行の際に審査が必要ありません。そのため、信用情報がブラックリスト入りしていても、カードを問題なく発行することができます。

クレジットカードでの決済が利用できないと生活に不便を感じる場合があります。デビットカードも決済する手段としては現金よりも便利なので、クレジットカードの利用ができない場合の代替手段としておすすめです。

デビットカードの特徴としては、クレジットカードと違いすでに口座にあるお金から引き落とす点です。つまり、口座の残高以上のお金を使うことはないため、借金の性質はなく、自分の返済能力の範囲内で決済ができ安心です。

電子マネーで決済

最近は電子マネーも普及しており、コンビニやスーパー、ショップなどの多くで電子マネーによる決済ができます。

電子マネーもクレジットカードとは違い、借金の性質はありません。あらかじめ保有している残高の範囲内から入金し、支払いを行います。そのため、電子マネーも信用情報の審査は必要なく、ブラックリスト入りしていても自由に使うことができます。

電子マネーはスマートフォンでも使用でき便利なため、普段の支払い手段として持っておくと良いでしょう。

返済中の借金は滞納しない

任意整理の手続きをした後の返済時期に返済を滞納してしまうと、ブラックリストの解消を回復するまでの期間が延びてしまいます。

滞納すると、任意整理してもさらに悪化させてしまい、振り出しに戻ってしまう恐れがあります。携帯電話の端末料金も、滞納すると事故情報として登録されてしまいます。

任意整理後は返済を滞納しないように注意しましょう。もし、滞納しそうな恐れがある場合は、すぐに弁護士に相談するべきです。

信用情報が回復した後に注意すべきこと

信用情報が回復したとしても、注意が必要なことはあります。ここでは、借入先や信用情報のチェックなどについて解説します。

同一業者からの借入は難しい

任意整理の手続きをして、交渉を行った貸金業者に再度クレジットカード発行の申し込みやローン契約をしないようにしましょう。

たとえば信用情報が回復しブラックリストから外れたとしても、過去に任意整理など債務整理手続きをした貸金業者やそのグループ会社の記録には、「社内ブラック」として情報が残っており、取引をすることが難しくなっています。任意整理を行った後は、提携カードも含め、社内ブラックに該当する会社には申し込まず、他の会社から申し込みを行いましょう。

また、短い期間で複数の申し込みを行うと、借り逃げを会社からは警戒され、多重申し込みとして記録が信用情報機関に登録される、いわゆる「申込ブラック」状態に陥ってしまいます。 申込みブラックになると当然借金などが難しくなるため、審査に落ちたからと言って焦って他の業者も申し込まず、半年以上は空けて申し込みするようにしましょう。

新たな借入には気を付ける

任意整理などの手続きをしたということは、過去に一度自分の支払い能力以上の借金をしてしまったということです。新たな借金をする際は、本当にそのお金が必要なのか、借金をするリスクを考えられているか、返済能力は十分かなどを慎重に検討する必要があります。

再度借金が返済できなくなると、ブラックリストに再度載ることは当然ですが、周囲からの信用も失ってしまう恐れがあります。まずは借金をしない前提で生活するように心がけましょう。

信用情報を定期的にチェックする

信用情報は、各信用情報機関に自分で開示請求をすれば登録情報を確認することができます。そのため、登録情報が消えているか心配な場合は、開示請求してみましょう。

また、ブラックリストの登録が解消された後も、不安な場合はその都度開示請求をすることをおすすめします。ブラックリストには期間が定められているとはいえ、一度登録されると長期間決済手段やローン契約などが制限され、生活に支障を来します。心配ならその都度チェックを行いましょう。

任意整理なら生活への影響を最小限にできる

任意整理は信用情報に影響を与えますが、その分返済に困っている人にとってはメリットも大きな手続きです。ここでは、周囲にバレにくい、信用情報に傷がついても問題ない場合があるなどの点を解説します。

任意整理は周囲にバレにくい

任意整理は個人再生や自己破産と異なり、裁判所を介した手続きは行いません。弁護士や司法書士に依頼して貸金業者と直接交渉、和解を行うことで、返済額の見直しができる手続きです。

そのため、任意整理は裁判所からの郵送物が届いたり、裁判所に出向くこともなく、周囲にバレずに手続きを終えることができるのです。

任意整理は無理なく返済の負担を減らして借金を完済することが可能なため、返済に困っている人にとってはメリットの大きな手続きです。

信用情報に傷がついても問題がない場合も

信用情報に傷がつくと新たな借金やクレジットカードの発行が困難になるため、この状況を恐れて任意整理をためらう人がいます。

しかし、人によってはクレジットカードを利用していなかったり、ローン契約の予定がない人もいるでしょう。そのような人であれば、特にブラックリスト入りしても生活に大きな影響はありません。

クレジットカードが使えなくても、電子マネーやデビットカードを使えば支払いをある程度スムーズに行うことができ、わざわざ現金を持ち歩く必要はありません。

また、借金癖があり、常に借金に頼って生活していた人にとっては、借金ができなくなる期間中に自分の生活を見直し、生活を自分の収入の範囲内で行う良い機会と言えます。借金癖がある人にとっては、クレジットカードやローンが組める状態そのものがリスクと言える場合もあり、現在の借金の負担が軽くなるのであれば、むしろ借金ができる環境を制限したほうが生活が安定することもあります。

任意整理では信用情報に影響はありますが、必要以上に恐れる必要はありません。借金の負担を解消するメリットが大きいのであれば、任意整理を進める選択をすべきでしょう。

まずは弁護士に相談しよう

弁護士であれば、任意整理で貸金業者とスムーズな交渉や手続きをすることができます。また、ひとりひとりの借金の状態に合わせて、任意整理や他の手続きを行うべきかどうか助言できるため、借金問題を解決する上で一刻も早く相談すべきでしょう。

任意整理では利息のカットだけでなく、貸金業者からの督促を止めたい、家族にバレたくないなど様々な要望があるはずです。これらの課題を解決するためには、弁護士に相談することをおすすめします。

おわりに

任意整理は、将来の利息をカットし、3~5年で無理なく返済できるように借金を整理する手続きです。財産を処分することなく、周囲にバレるリスクも少なく返済できるため、返済に困っている人にとっては大きなメリットがあります。

一方で、任意整理をすると信用情報に影響があり、手続きを行うとおおむね5年間クレジットカードの新規発行やローンの契約などができなくなります。信用情報は信用情報機関に開示請求すれば確認することができます。

任意整理はブラックリスト入りすることがデメリットですが、人によってはクレジットカードを使わなかったり、ローンを組む予定がないなど大きなデメリットにならないこともあります。また、ブラックリスト入りしている期間は、デビットカードや電子マネーなどの代替手段を利用することで、便利な決済手段を確保することも可能です。任意整理のメリットとデメリットを理解した上で、手続きするかどうか決めることが重要です。