債務整理

任意整理と特定調停の違いを解説!それぞれに適したケースは?

任意整理と特定調停はどちらも債務整理手続きであり、両方ともよく似た性質を持っているため一見すると違いがよくわかりません。

任意整理と特定調停の違いを把握するには、費用や手続きにかかるコスト、強制執行に関する違いなどを見ると、自分がどちらを選ぶべきか判断する材料となります。特定調停は手続きにかかる費用の面でメリットがありますが、それだけで選択するにはリスクが大きい場合があります。

そこで今回は、分かりづらい任意整理と特定調停の違いを解説するとともに、それぞれに適したケースをご紹介します。自分の状況に合わせてベストな選択をしましょう。

任意整理と特定調停の共通点

任意整理と特定調停は共通点が多く存在します。

ここでは、交渉の方法や減らせる借金の額、債権者の選択が可能なことなど共通点について解説します。

任意整理・特定調停ともに交渉による和解を目指す

任意整理と特定調停は、ともに借入先との交渉により和解案の合意を目指します。

特定調停においては、裁判所によって選任された調停委員が借入先と債務者の間で仲介します。任意整理では、弁護士や司法書士が債務者の代理人となり、本人に代わって借入先との交渉を行います。

特定調停では裁判所が間に入る点が任意整理と異なる点ですが、いずれも話し合いによる和解を目指すという性質は共通点です。

債務整理する借入先を選択できる

任意整理、特定調停ともに、債務整理する借入先を選べることが大きなメリットです。債務整理する借入先を選べると、住宅や車のローンなどの借金を手続きから外すことができ、日常生活において必要な財産を維持することができます。

また、債務整理をすると借金の保証人に迷惑をかけてしまわないか心配する人もいます。しかし、任意整理、特定調停ともに、保証人がいる借金を除外することができるため、保証人に迷惑がかかることを防ぐことができます。

任意整理と特定調停の違い

任意整理と特定調停の違いについて解説します。主に債務整理や過払い金請求、強制執行などの点で違いがあります。

債務整理費用の違い

特定調停は、弁護士に依頼する費用を用意できない債務者のために用意された制度です。

そのため、任意整理に比べて特定調停は債務整理にかかる費用を安く抑えることができます。対象となる借入先1社あたり500円、郵便切手代を入れても2000円程度で手続きすることができるため、目先の返済に困っている人でも手続きできます。

一方、任意整理の手続きを弁護士に依頼した場合の相場を見ると、着手金で借入先1社あたり2万円程度必要になります。

どうしても費用を抑えたい場合は、特定調停を検討しましょう。

過払い金請求ができるかどうかの違い

任意整理、特定調停ともに、引き直し計算によって借金元本の見直しを行う点は共通しています。

しかし、借金の額を超える過払い金が発生していた場合、過払い金請求も同時に行えるのは任意整理のみになります。特定調停の手続きで過払い金が発生している場合は、別途過払い金請求をしなければお金を回収することができないため、過払い金が大量に発生している場合は注意が必要です。

手続きの前から明らかに過払い金が発生していると見込める場合は、任意整理を選択した方が金銭的なメリットを得られる可能性は高くなります。

強制執行停止機能があるかどうかの違い

任意整理にはなく、特定調停にだけある機能として、強制執行の停止機能があげられます。裁判所に必要だと認められれば、法的な効力によって給料、不動産の差し押さえを停止できるのです。

給与が今まさに差し押さえられている状態など、対応に急を要する状況であれば、任意整理よりも特定調停を申し立てる方がメリットが得られます。

債務名義としての効力の違い

債務名義とは、債務者に強制執行を行なう際に必要になる公的機関が作成した文書のことです。確定判決や和解調書、調停調書などが債務名義に該当します。

任意整理の手続きを進めた場合、借入先の貸金業者との間である程度話がまとまったら、話し合いの内容から新しい返済計画を作成し、両者で和解契約を締結することになります。その後、和解契約をしたことを証明する書面として、両者で和解書を取り交わします。

取り交わした和解書はあくまで両者の間でのみ交わした私的な書面です。そのため、和解書を根拠にして、相手方が約束を破ったからといって即座に強制執行を行うことはできません。つまり、債務名義にはならないやり取りなのです。

一方、特定調停の場合は、両者の間で話がまとまると、調停調書が作成されます。特定調書の内容は任意整理における和解書と似ていますが、裁判所が作成しているため、法的な効力が異なり、債務名義となるのです。

そのため、債務者が借金の返済を延滞するなどすると、調停で定められた事項の約束を破ったことになり、債権者である貸金業者はその調停調書を債務名義とし、即座に強制執行をすることができます。

特定調停による債務名義での調停は、債権者に有利な条件となってしまい、強制執行のリスクが生まれてしまいます。当然、調停後に滞納などをせず約束を守っている限り問題はありませんが、その後も借金を返済し続ける立場からすれば、任意整理の方がその後の返済生活でのリスクは少ないと言えます。

任意整理を選んだ方が良いケース

債務整理において、特定調停より任意整理を選択したほうが良いケースをご紹介します。

具体的には、

  • 手続きを楽にすませたい場合
  • 取り立てを早く止めたい場合
  • 出廷する手間をかけたくない場合
  • 過払い金請求を考えている場合

などは任意整理を選択したほうが良いでしょう。

手続きを楽にすませたい場合

特定調停は手続きの費用を抑えられる反面、簡易裁判所に特定調停の申し立てを行う書類である申立書の作成や、自分の財産の状況や家族の収入状況、債権者名簿の作成などをし、書類を裁判所に提出しなければなりません。

依頼した弁護士や司法書士に必要書類を作成してもらえる任意整理に比べると、特定調停は書類を作成や情報収集に多くの時間と手間を要することになります。本人だけでも準備は可能ですが、家族や周囲に協力してもらえるとスムーズに書類を収集できるでしょう。

取り立てを早く止めたい場合

任意整理、特定調停ともに、手続きをすると借入先からの取り立てを停止させることができます。ただし、任意整理は専門家に依頼してからすぐに取り立てを止められるのに対して、特定調停は裁判所に申し立てを行って数日間経ってから取り立てが止まります。

特定調停は自分で書類の作成、提出をすることで申し立てを行います。そのため、人によっては手続きまでに時間がかかり、すぐに取り立てをストップさせることは困難です。取り立てに悩んでいる場合は、弁護士などに任意整理を依頼してすぐに取り立てに対処することをおすすめします。

出廷する手間をかけたくない場合

特定調停の場合、月に1回の頻度で平日に3、4回ほど、債務者本人が裁判所に出廷する必要があります。当然、出廷には時間と手間がかかるため、月に1回程度でもそれまでの準備や当日の時間を空けておく必要があり、大きなコストになります。

また、債権者である借入先が複数ある場合、出廷を求められる回数も増える傾向があり、本人の負担はさらに大きくなります。

任意整理であれば、依頼した弁護士が借入先との交渉もすべて行ってくれるため、本人の負担は大きく軽減できます。なかなか仕事を休めない人、職場や家族に気づかれたくない人は、任意整理を選択した方が良いでしょう。

過払い金請求も考えている場合

特定調停では、任意整理と同じように引き直し計算は行うものの、過払い金が発生していたことがわかっても過払い金請求を同時に行うことはできず、別途請求手続きをしなければなりません。

一方、任意整理であれば、引き直し計算時に過払い金が発生していれば過払い金請求も行うことができます。

過払い金請求によりお金を取り戻せる場合、借金残高から取り戻せた過払い金の金額を差し引くことができます。また、借金残高よりも過払い金の方が多かった場合は、その分のお金を取り戻すことが可能です。

過払い金が発生している可能性があるかどうかは、2010年6月17日以前に借入をしたか、借金を完済してから10年以内かなどがひとつの基準となります。もし過払い金に心当たりがある場合は、任意整理の方がメリットが得られるかもしれません。

特定調停を選んだ方が良いケース

特定調停を選んだ方が良いケースは、費用を抑えたい場合や強制執行を止めたい場合です。

ただし、過払い金請求はできないため、あらかじめ過払い金が発生していないか確認しておくと良いでしょう。

費用を抑えたい場合

特定調停は任意整理よりも費用を大幅に抑えることができるため、弁護士への依頼費用を用意できない場合は特定調停を選択することになるでしょう。

ただし、任意整理でも費用を抑えたり、依頼時に用意しなければならないお金を抑えることは可能です。

例えば、債務整理に関する着手金無料の事務所に任意整理依頼すると、手続きにかかる費用を抑えられる可能性があります。

また、国が設立した法律の相談窓口である法テラスであれば、借金問題を相談したり専属の弁護士を紹介してもらい依頼をすることも可能です。法テラスの費用は最低限ですむことが多く、少額での分割払いも受け付けています。

任意整理をしたくても弁護士への依頼費用が払えないと悩んでいる人は、特定調停を選ぶ前にこれらの点を検討してみましょう。

強制執行を止めたい場合

特定調停では、強制執行を停止する機能があることが大きな特徴です。

この機能を活用することで、給料や所有する不動産の差し押さえを手続きする中で停止することができます。

特定調停の手続きでは、借入先に強制執行を停止させる申し立てをその他の手続きと同時に行うことが可能です。特定調停を行う際、裁判所が強制執行を停止させる必要があると認めた場合は、法的な効力をもって裁判所が強制執行を停止することができます。

一方、任意整理では、あくまで弁護士と貸金業者との任意の交渉になるため、貸金業者の強制執行に対して法的な効力をもって停止を求めることはできません。

気を付けなければならない点は、強制執行を停止させた後の返済についてです。特定調停で強制執行を停止させ、調停が成立した後に返済を滞納した場合は、再度強制執行によって財産を差し押さえられてしまうリスクがあるのです。調停が成立した後に調停調書が作成されますが、調停調書は確定判決と同じ効力がある債務名義になるためです。

任意整理では、借入先との和解後に和解書を作成しますが、和解書には調停書のような効果はなく、任意整理後に滞納をしてもすぐに給与などが差し押さえられる心配はありません。

特定調停をする場合は、その後の返済が滞ることがないように家計を管理する必要があります。

任意整理と特定調停の手続きの違い

特定調停は裁判所への申し立てを伴います。また、調停に代わる決定の際は、調停委員会の決定に基づきその後の返済が行われることもあります。

特定調停では裁判所を介した手続きが行われる

一方で、任意整理は裁判所を介することはなく、あくまで依頼した弁護士と貸金業者が任意に交渉を行うため、申し立てのようなプロセスはありません。

債務の調査から和解案の作成、交渉まで弁護士が本人に代わってやり取りを行うため、本人の負担は特定調停よりも大きく減らすことができます。

任意整理は専門家と債権者の間で交渉が行われる

このように、任意整理と特定調停では手続きに大きな違いがあるため、自分がどれだけ時間や手間をかけられるかをよく考えて手続きしましょう。

任意整理・特定調停で悩んでいるなら弁護士に相談

任意整理と特定調停は類似点が多いため、どちらを選べばよいか悩んでいる人も多いのではないでしょうか。

いずれも弁護士に相談してから手続きを始めると安心です。

弁護士なら面倒な手続きや交渉を代行できる

任意整理では面倒な取引履歴の調査や借金額の確定、交渉をすべて弁護士が代わりに行うことができます。任意整理は貸金業者との交渉になるため、経験豊富な弁護士に依頼することをおすすめします。

また、任意整理は周囲に手続きや借金の存在がバレたくない人にもメリットがあります。弁護士であれば連絡手段などに細心の注意を払ってくれるため、安心して完済までの道筋を見通すことが可能です。

特定調停は基本的に弁護士を介さないで自分で行うことできますが、裁判所に提出する書類の作成やチェック、裁判所が定める調停期日への出頭などを代わりに任せることは可能です。面倒な手続きや自分の知識に不安を感じる場合は、ぜひ弁護士に依頼することを強くおすすめします。

相談は無料で行うことが可能

弁護士事務所の中には、無料で相談を受け付けている事務所も存在します。借金の督促に悩まされている人、任意整理と特定調停のどちらを選択すれば良いのか悩んでいる人などは、まず弁護士に適切なアドバイスをもらいましょう。

弁護士事務所の公式ホームページのメール、電話などで相談を受け付けています。

任意整理の前に過払い金の有無を確認できる

任意整理の手続きでは、弁護士は過払い金が発生しているかどうか確かめます。しかし、正式に依頼する前に電話やメールで弁護士事務所に連絡をし、借金の具体的な状況を伝えることができれば、ある程度弁護士が過払い金の有無について判断することができます。

もし弁護士に相談せず、費用が安いからといって特定調停を選択し、後で過払い金が発生していることが分かった場合は、別途過払い金請求を行う必要が出てきます。この場合、過払い金請求するのに新たな費用や時間がかかってしまいます。

もし過払い金に心当たりがある場合は、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

特定調停では自分で行うデメリットも理解しておく

特定調停は不成立になる場合が多く、成功率は決して高くありません。そのため、せっかく自分で書類の作成などの手続きに時間と労力をかけても、成果を得られずに終わってしまうリスクが高いのです。特定調停は確かに費用を抑えることはできますが、費用面だけ考えて成果が得られなければ借金問題は解決しません。

一方で、任意整理は特定調停よりも成功しやすいため、確実に借金の利息を減らしたい場合、返済額を抑えたい場合は、弁護士に依頼して任意整理を行う方が良いでしょう。

また、弁護士に相談すると、任意整理と特定調停だけでなく、状況に応じて個人再生や自己破産についても説明を受けることができます。利息のカットや分割払いだけでは対処できないような多額の借金がある場合などは、これらの手続きも検討できます。

おわりに

任意整理と特定調停は、ともに引き直し計算などのプロセスを経て借金を整理する方法で、利息のカットなどにより返済額縮減効果があると言えます。

一方で、任意整理と特定調停の違いは、必要な費用、裁判所への出廷の有無、強制執行の停止機能の有無、過払い金請求ができるかどうかなどの点に見られます。特定調停は費用をかなり安く抑えることが可能ですが、手続きをする手間や時間がかかるほか、成功率も低いため、なかなか借金問題を解決する現実的な方法とは言えません。

任意整理であれば弁護士が手続きや借入先の貸金業者との交渉を代行してくれるため時間や手間がかからず、手続きすることができます。

借金問題を解決したいなら、弁護士に依頼して任意整理をすることをおすすめします。