過払い金請求は、弁護士事務所に依頼することでスムーズにおこなうことができます。自分で過払い金請求をしたり、目先の費用だけを考えて司法書士事務所に依頼することが本当に得策といえるのでしょうか。
弁護士事務所を選ぶときには、実績が豊富で優良な弁護士事務所を自分で見つけることが大切です。なかには、依頼者の満足を考えずに、お金もうけのためだけに過払い金請求の案件を扱う弁護士事務所や、悪徳な弁護士事務所と結託している仲介業者もあります。
過払い金請求を依頼する弁護士事務所を選ぶときに着目すべきポイントをおさえつつ、信頼できる弁護士事務所を探しましょう。
過払い金が発生する仕組み
過払い金が発生する仕組みでおさえておきたいポイントは、「グレーゾーン金利」にあります。
平成22年より前には、利息制限法と出資法という2つの法律によって、次のようにそれぞれの法律で金利の上限が決められていました。
利息制限法の上限金利 | 元本10万円未満:年20% 元本10万円超から100万円未満:年18% 元本100万円以上:年15% |
---|---|
出資法の上限金利 | 年29.2% |
利息制限法と出資法では、違反した場合に刑事罰の対象となるかどうかの違いがあります。利息制限法で決められた上限を超えた金利で貸し付けをしたとしても罰則はありません。
しかし、出資法で決められた上限金利を超えると罰則があるのです。
利息制限法 | 違反しても罰則はない |
---|---|
出資法 | 違反すると罰則がある |
そのため、貸金業者の多くが出資法で決められた上限金利で貸付をしていました。
利息制限法で決められた上限金利と、出資法で決められた上限金利の間の金利が「グレーゾーン金利」です。
しかし、グレーゾーン金利は法律の改正によって撤廃されることになります。
平成22年6月18日以降、出資法の上限金利は29.2%から20%に引き下げとなったのです。20%を超える金利で貸付をおこなうと、貸金業者は処罰の対象になります。
貸付の元本が100万円未満の場合、出資法と利息制限法の上限金利とで差がある状態ですが、利息制限法で定められた金利で貸付をおこなうと、貸金業法違反として行政処分の対象となりました。
そのため、貸金業者は利息制限法によって定められた15%~20%の上限金利で貸付をすることになったのです。
過払い金請求のメリット・デメリットとは?リスクも解説
過払い金を請求する上で、メリットだけでなくリスクやデメリットもあることはご存知ですか?注意点をしっかり理解したうえで、過払い金請求をするのかしないのか検討しましょう。
リスクは、弁護士に依頼することで最小限に抑えることができます。正しい知識をもって対策をすれば、リスクを過剰に心配する必要はありません。
過払い金請求の「払いすぎた利息を取り戻す・借金を減らす・完済する」といった金銭面でのメリットは、リスクやデメリットよりも大きなものとなるでしょう。
過払い金請求をするメリット
過払い金が戻ってくるというメリットだけでなく、場合によっては、貸金業者からの督促が止まったり、借金を完済できたりする可能性があります。過払い金請求の主なメリットは、次の3つです。
過払い金が戻ってくる
過払い金請求によって過払い金が戻ってくること自体が大きなメリットだといえます。過払い金が戻ってきた場合、他の貸金業者への返済に充てたり、生活費の足しや貯金にすることもできます。
「過払い金請求をすることで、払いすぎた利息が戻ってくるかもしれない」ということは、TVのCMなどで知っている方もいるでしょう。過払い金請求は、借金を返済中の人でも完済した人でもおこなうことができます。
過払い金が発生する可能性がある方は、2010年以前に貸金業者から借り入れをおこなっていた方です。
貸金業者からの借り入れには、クレジットカードのキャッシング利用分も含まれます。
過払い金請求には時効がありますので、心当たりのある方は早めに過払い金請求を検討しましょう。
督促が止まる
過払い金請求をおこなうことで、貸金業者からの督促がストップすることもあります。
ただし、過払い金請求をしたからといって、必ずしも取り立てが止まるわけではありません。
借金返済中の場合、借入先が闇金ではなく貸金業者であれば、取り立てが止まります。
弁護士を通して受任通知を受け取った貸金業者は、債務者(お金を借りている方)に取り立てをおこなってはいけないという法律上のきまりがあるため、督促が止まるのです。
借金を完済できる可能性がある
戻ってくる過払い金が残っている借金よりも多かった場合、借金を完済できます。
借金返済中の方でも過払い金請求は可能です。借金をなくせる可能性もあるので、過払い金があるか確認をしましょう。
過払い金請求をするリスクとデメリット
過払い金を請求する前に、リスクやデメリットを必ず理解しておきましょう。
「過払い金請求にデメリットはない」という主張もありますが、デメリットはあります。リスクを知らずに過払い金請求をおこなうことで後悔することになるかもしれません。
ブラックリストに載るリスクがある
過払い金請求をするだけでは、ブラックリストに載ることはありません。
しかし、借金返済中の方が過払い金請求をしても借金が完済できない場合は、「任意整理」という扱いになり、ブラックリストに載ってしまいます。借金返済中であっても、過払い金請求によって借金が完済できる場合はブラックリストには載りません。
「ブラックリストに載る」ということは、個人信用情報に良くない情報が載ることをさします。個人信用情報とは、個人の借り入れや返済の履歴を記録したものです。返済の長期延滞や、債務整理があった場合には、良くない情報として一定期間記録されます。
延滞や債務整理歴といった良くない情報が個人信用情報に載ることを「ブラックリストに載る」「ブラックリスト入りする」「信用情報に傷がつく」などと言います。
ブラックリストに載ると、一定期間は新たな借り入れやクレジットカードの契約ができなくなります。
過払い金請求をおこなうだけで個人信用情報に記録されることはありませんが、借金返済中の方は気をつけましょう。過払い金請求をすることでブラックリストに載る可能性があるかどうか心配な方は、ぜひ弁護士に相談してみてください。
家族にバレるリスクがある
過払い金請求をおこなうと、貸金業者から書類が自宅に届きます。届いた書類を同居している家族が見れば、借金があることや過払い金請求をしていることに気づかれてしまう可能性があります。
「自宅に貸金業者からの書類が届くのは困る」という方は、弁護士に過払い金請求を依頼することで家族にバレるリスクを減らすことができます。弁護士に過払い金請求を依頼した場合、貸金業者からの書類は弁護士事務所へ届きます。
弁護士からの郵便物や連絡で家族にバレることが心配な方は、自宅とは別の住所に郵便物を送ってもらったり、連絡する時間帯を考慮してもらうように弁護士に伝えましょう。
過払い金請求した業者が利用できなくなる
過払い金請求をおこなうと、過払い金請求した業者を利用できなくなるデメリットがあります。
しかし、過払い金請求をしない貸金業者の利用は可能です。過払い金請求をした業者が利用できなくなるデメリットよりも、過払い金請求をするメリットのほうが大きいでしょう。「この貸金業者を利用できなくなるとどうしても困る」といった特別な事情がないかぎりは、大きなデメリットとして考える必要はありません。
事務所に依頼せず過払い金請求はできる?
過払い金請求は、弁護士事務所を自分で探して弁護士に任せることを強くおすすめします。
過払い金請求をおこなうには、次のような方法もあります。
- 自分で過払い金請求を行う
- 知人や友人に手伝ってもらう
- 役所の相談や法テラスを利用して弁護士を紹介してもらう
しかし、自分で過払い金請求をおこなうには注意しなければならないことが多く、手間や時間がかかるのに対して、もらえる過払い金が少なくなることもあります。知人や友人に手伝ってもらったとしても、メリットがない場合がほとんどです。
「過払い金請求は弁護士事務所に依頼せずにおこないたい」と考えている方は、どのようなメリット・デメリットがあるのかを確認してみましょう。
自分で過払い金請求をするメリット
自分で過払い金請求をするメリットは、ほとんどありません。
しいていえば、弁護士に依頼する場合に比べて費用がかからないことがメリットといえます。弁護士に依頼した場合、弁護士への報酬を支払わなくてはなりませんが、自分でおこなえば報酬を支払う必要はありません。
自分で過払い金請求をするデメリット
自分で過払い金請求をする場合、デメリットは非常に多くなります。
督促が止まらない
借金の返済中に過払い金請求を弁護士に依頼すれば、貸金業者からの督促は止まります。しかし、自分で過払い金請求をする場合は、督促は止まりません。
引き直し計算でミスをする可能性
自分で引き直し計算をしてミスをする可能性もあります。計算がとても複雑になるので、個人が正確におこなうのは非常に困難です。
引き直し計算を間違えると、「過払い金請求をすれば完済できる」と思っていた借金が完済できないといった事態にもなりかねません。
引き直し計算では、貸金業者との取引をすべてさかのぼり、利息制限法で決められた利率が適用されていた場合の残債元本額を計算します。さらに、利息制限法で決められた利率を超えた利息分は、すべて借入れの元本に充てて計算していきます。
交渉が不利になりやすい
自分で貸金業者と交渉をおこなう場合は、弁護士に依頼するよりも不利になりやすいです。
貸金業者も過払い金請求の経験があり、交渉も行っているでしょう。そのため、個人で貸金業者に交渉をした場合、取り戻せる過払い金が少なくなる可能性が高いです。
手間や時間がかかる
自分で過払い金請求をおこなう場合、手続きをすべて自分行わなくてはなりません。
- 過払い金請求に必要な引き直し計算
- 貸金業者との交渉
- 交渉がうまくいかなかったときの裁判
いずれも手間や時間がかかるうえ、知識が多くない個人が自分でやろうとすると、勉強にも多くの時間を割かなければなりません。
裁判になれば、裁判所に行かなくてはなりません。忙しい方や面倒くさがりな方ほど、過払い金請求を自分でするのは難しいといえます。
家族にバレやすい
過払い金請求を自分でおこなう場合は、弁護士に依頼するよりも家族にバレやすいです。
過払い金請求をおこなうと、貸金業者からの書類が自宅に届いたり、家族と過ごしているときに電話がかかってきたりすることもあります。貸金業者からの郵便物や、貸金業者との通話の内容から、借金が家族にバレる可能性が高いです。
自治体の役所の相談会
市区町村の役所で、弁護士による債務相談がおこなわれていることがあります。
自治体が実施している安心感や、無料で相談できることが多いといった点がメリットです。しかし、相談日時が限られていることもあり、仕事をしている方が自治体の相談会を利用するのは難しい場合もあります。また、対応する弁護士に過払い金請求の実績があるかどうかまではわかりません。
法テラス
法テラスは、国によって設立された法人です。経済的に困っている方は、法律相談の料金を立て替えてもらえる「民事法律扶助制度」を利用できる場合もあります。
ただし、法テラスが過払い金請求を行ってくれるわけではありません。法テラスがおこなっているのは案内だけのみで、法テラスへ相談すると弁護士を紹介され、紹介された弁護士に過払い金請求を依頼することになります。
また、法テラスで紹介される弁護士に過払い金請求の実績があるかどうかはわかりません。
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弁護士と司法書士はどちらに依頼すればいい?
過払い金請求は、弁護士に依頼するのがおすすめです。
弁護士にかぎらず、司法書士に過払い金請求を依頼することもできます。ただし、司法書士なら誰でも依頼できるというわけではありません。過払い金請求を依頼できるのは、「認定司法書士」という法務大臣の認定を受けた司法書士です。
弁護士と司法書士のどちらに依頼するかによって、それぞれメリットとデメリットがあります。
司法書士に依頼するメリットとデメリット
司法書士に依頼するメリットは、弁護士よりも安い費用で依頼ができる可能性があることです。デメリットは、過払い金請求できる金額に限度があることや、裁判時に代理人になれない場合があるということです。
弁護士に依頼するより費用が安いことがある
司法書士事務所では、弁護士に依頼するよりも安い費用で過払い金請求ができる場合があります。ただし、司法書士事務所のホームページなどで案内されている料金には、実費が含まれていないといった場合もあります。
弁護士事務所でも実費がいくら必要になるのかを確認する必要がありますが、「司法書士事務所に依頼すれば弁護士事務所より費用が安く済む」とアピールしている司法書士事務所では、より念入りに費用の確認をすることをおすすめします。
過払い金請求額が140万円を超える場合、司法書士に依頼することはできません。司法書士に依頼をして、引き直し計算をおこない、過払い金請求額が140万円を超えていることが発覚した場合、その時点で司法書士を通しての法律相談や貸金業者との交渉は打ち切りとなります。
裁判時の代理人になれない場合もある
司法書士が裁判で代理人となれるのは、簡易裁判所での決められた手続きだけです。地方裁判所での裁判となった場合、司法書士は代理人になることができません。
弁護士に依頼するメリットとデメリット
弁護士に依頼することで、司法書士に依頼する場合のデメリットはすべて解決されます。
ただし、費用が高くなることもあります。弁護士に依頼したほうが絶対に高いというわけではなく、司法書士に依頼したほうが費用が高くなることもあります。
過払い金や借金額の制限がない
弁護士に過払い金請求を依頼する場合、過払い金の金額がいくらになっても問題になることはありません。過払い金請求額が大きくなりそうな方ほど、はじめから弁護士に依頼するほうが良いでしょう。
どの裁判所の訴訟でも代理人になれる
簡易裁判所、地方裁判所、いずれの裁判所での訴訟になったとしても、弁護士であれば代理人になることができます。
はじめから弁護士に依頼するのがおすすめ
過払い金請求は、はじめから弁護士事務所を探して依頼することをおすすめします。
司法書士に依頼して、過払い金請求額が140万円を超えたり、地方裁判所での裁判となったりした場合、新たに弁護士へ依頼しなくてはなりません。
担当していた司法書士から弁護士を紹介してもらえる場合もありますが、司法書士に紹介される弁護士に、必ずしも過払い金請求の実績があるとはかぎりません。
また、司法書士への着手金と、新たに依頼する弁護士への着手金や報酬をそれぞれ支払わなければなりません。費用を節約するつもりで司法書士事務所に依頼しても、最終的に弁護士に依頼することになれば、はじめから弁護士事務所に依頼するよりも費用が高くなる可能性もあります。
あとから手間や費用が余分にかかってしまう可能性も考えながら依頼する事務所を検討しましょう。
過払い金請求の経験豊富な事務所の見つけ方
満足度の高い過払い金請求をおこなうためのポイントは、「経験豊富」かつ「良心的な」弁護士事務所に依頼をすることです。経験が豊富なだけでは良心的な事務所といえない場合もあります。
残念ですが、依頼者のことを親身に考えない弁護士事務所も存在しています。悪徳な弁護士事務所にだまされないためにも、良心的な弁護士事務所を見分けるコツを知っておく必要があります。
良心的な弁護士であれば、過払い金請求の依頼を受けるときには、「債務整理事件処理の規律を定める規定」という日本弁護士連合会が定めたルールに従います。
安心して依頼できる弁護士事務所を探すために、次のようなポイントを確認しましょう。
実績を確認する
過払い金請求の実績が豊富な弁護士の在籍する事務所に依頼しましょう。
弁護士は借金問題だけでなく、離婚や交通事故などさまざまな問題をとりあつかっています。そのため、弁護士によって実績が豊富な分野とそうでない分野があります。
過払い金請求の経験があまりない弁護士に依頼するよりも、実績豊富な弁護士に依頼したほうがスムーズかつ有利に過払い金請求をすることができる可能性が高いです。
費用を確認する
費用を明確にしてくれる弁護士事務所を選びましょう。
「債務整理事件処理の規律を定める規定」でも、費用についてわかりやすく説明する努力が弁護士に求められています。
費用について不明瞭な点があると安心できないばかりか、あとから「思ったよりも費用が高額になってしまって手元にお金が残らなかった」と後悔することも考えられます。
手元に残るお金の目安を知るためにも、費用がどのくらいかかるのか正確に知る必要があります。
面談ができるかどうか確認する
担当の弁護士と面談ができる弁護士事務所を選びましょう。
弁護士は依頼者と会って個別面談をすることが原則として「義務」になっています。そのため、次のような宣伝をしている弁護士事務所には注意が必要です。
- 来所不要
- 面談不要
- メールや電話のみで解決
また、出張相談会を開催している事務所も注意してください。
出張相談会をしている事務所だから悪いというわけではありません。しかし、弁護士と直接会って個別面談をするという義務を表面的に満たすためだけに出張相談会を開催している場合もあります。
また、次のようなポイントもチェックしておくといいでしょう。
- 自分が行くことができる距離に事務所がある
- 事務所が職場や自宅の近くにあるなど行きやすい
- 弁護士が面談に近くまで来てくれる
弁護士が面談に来てくれる場合、交通費は誰が負担するのか確認してください。
事務所の方針を確認する
実績をアピールして過払い金請求の依頼を多く受けるものの、すべて事務員だけが対応している事務所には注意しましょう。
大量に過払い金請求の案件を受け、実際は事務員が処理をしているような事務所では次のようなトラブルも考えられます。
- 連絡がいつも事務員から来るので担当弁護士と話す機会が少ない
- 事務所から進捗状況が聞けないので不安になる
- 案件の数を重視するだけで依頼者の満足を考えてくれない
誰がどのように過払い金請求を進めていくのか、弁護士から具体的に説明を受けるようにしましょう。「実績はたくさんあるので、とにかくお任せください」などと回答を濁す場合には注意が必要です。
多重債務の根本的な解決をしてくれるか確認する
弁護士が過払い金請求を受ける場合、依頼者の他の借金についても整理する必要があります。
「債務整理事件処理の規律を定める規定」では、過払い金の請求先以外の貸金業者からも借金があるのに、過払い金請求だけをおこなって借金の整理をしない依頼を弁護士は受けられないと定めています。
借金返済中の方にとって、過払い金請求は借金を整理するための手段です。抱えている債務について誠実に向き合ってくれる弁護士事務所に依頼をしましょう。
無料相談を利用して印象を確認する
広告ではよい印象でも、実際は異なるかもしれません。実際の印象を確認するには、無料相談を利用するのがおすすめです。弁護士事務所の雰囲気や、事務所で勤務する弁護士の印象を確認しましょう。
弁護士との信頼関係を築くためにも、次のような弁護士はおすすめできません。
- 弁護士の態度が威圧的
- 質問したことへの回答があいまい
- 時間などの約束を守らない
弁護士と依頼者も「人と人」である以上、性格的な相性もあるでしょう。直接会って受ける印象も事務所選びの参考になります。
過払い金請求を弁護士に依頼する場合の費用
過払い金請求を弁護士に依頼する場合に必要な費用や相場を知っておくと、弁護士事務所選びにも役立ちます。相場から大きく外れるような費用を掲げている事務所には注意しましょう。
弁護士に依頼する場合の費用の項目
過払い金請求を弁護士へ依頼する際は、次のような費用が必要になります。
- 実費
- 法律相談料
- 弁護士報酬
実費は、印紙代や交通費といった費用です。弁護士の報酬になるものではありません。
実費は細かく確認して見積もりを出してもらいましょう。法律相談料は、依頼者が弁護士へ相談する際の料金です。
- 初回のみ無料
- 何回でも無料
- 一回ごとに料金がかかる
法律相談料は30分につき5,000円程度が相場です。何回でも無料の事務所を選んだほうが費用の節約になります。
弁護士報酬は、次の3種類があります。
①着手金
着手金は、過払い金請求が成功したかしないかの結果にかかわらず支払う報酬です。弁護士が依頼を受けた段階で必要になります。一度支払った着手金は、依頼を途中で中止しても戻ってきません。
着手金を無料または低額に設定している事務所では、報酬金が高く設定されている場合もあります。着手金だけでなく、報酬金も必ず確認してください。
②報酬金
報酬金は、案件が成功した場合に弁護士へ支払う報酬です。過払い金請求の報酬金は次の2つです。
解決報酬金 | 貸金業者との交渉によって和解したり、貸金業者からの請求を免れたりした場合に支払う報酬です。過払い金請求の場合、過払い金が戻ってきた場合に発生します。 |
---|---|
過払い金報酬金 | 実際に回収した過払い金の額から計算される報酬です。過払い金報酬のことを「成功報酬」と呼ぶこともあります。取り戻した過払い金に対する過払い金報酬金の割合は、事務所によって異なります。 |
報酬金のメインとなる項目ですので、過払い金報酬の割合が低い弁護士事務所を選ぶと費用を抑えることができます。
ただし、過払い金請求の実績が少ないがために過払い金報酬の割合を低く設定している場合もありえます。実績と過払い金報酬のバランスがとれている事務所を選ぶようにしましょう。
③手数料
成功や不成功のない事務処理の費用です。
着手金や報酬金の相場は?
着手金や過払い金報酬金の相場がどのくらいなのかを把握しておくことで、費用が高すぎたり安すぎたりする事務所を見分けることができます。
相場から大きくはずれている費用を提示している事務所が必ずしも悪いというわけではありませんが、安易に依頼せず慎重に見極めましょう。
平成20年に日本弁護士連合会が実施した「アンケート結果にもとづく市民のための弁護士報酬の目安」から、過払い金請求にかかる着手金や過払い金報酬金の相場をご紹介します。
着手金や過払い金報酬金は、過払い金請求をする業者の数や、過払い金の金額によって異なります。
そのため、費用の目安を算出するための条件は次のように設定されています。
- 消費者金融など10社に対して総額400万円の借金がある
- 200万円の過払い金がある
- 示談が成立せず、裁判によって200万円の過払い金を取り戻した
この条件での着手金の相場は、次の表やグラフのとおりです。
10万円前後 | 34.3% |
---|---|
20万円前後 | 37.1% |
30万円前後 | 16.3% |
40万円前後 | 1.3% |
その他 | 11.0% |
着手金の相場は、10万円前後~20万円前後の場合が多くなっています。着手金が30万円前後の場合、やや高いという印象ですが弁護士の交通費といった実費も着手金のなかに含まれている可能性があります。
反対に、着手金が低い場合には、実費が含まれているのかいないのかを確認するようにしましょう。
着手金が40万円を超えてくる場合は、高いと判断してよいでしょう。
次に、過払い金報酬金の相場です。過払い金報酬金の相場は、表やグラフのとおりです。
20万円前後 | 25.6% |
---|---|
30万円前後 | 24.3% |
40万円前後 | 34.6% |
60万円前後 | 11.3% |
その他 | 4.2% |
過払い金報酬金は着手金よりも高い金額になっています。戻ってきた過払い金が200万円であるのに対し、40万円前後が一番多く、20万円前後~40万円前後で80%以上を占めています。取り戻した過払い金に対して1割から2割くらいの割合で過払い金報酬金を定めている弁護士が多いことがわかります。
40万円前後を超えると、50万円前後を飛ばして60万円前後と一気に金額が上がっている点も注目しましょう。30万円前後の場合と60万円前後の場合とでは、倍に近い金額の差があります。
取り戻した過払い金を手元に多く残すためにも、過払い金報酬金の割合はよく確認しましょう。
報酬金の上限には規制がある
着手金には上限の規制がありませんが、報酬金には上限の規制があります。
もともとは、報酬の基準はなく、弁護士や事務所がそれぞれ独自の報酬基準を持っていました。しかし、一部の弁護士や事務所が不適切な金額を請求する例があり、平成23年に日本弁護士連合会が弁護士報酬の上限を定めることになりました。
着手金には上限規制がありませんが、着手金以外の名目で手数料を別途取ることは禁止されています。
- 管理手数料
- 引き直し計算手数料
こうした手数料を個別に取ることはできず、着手金に含まれていなければなりません。
一方、報酬金については上限規制があります。
- 解決報酬金
- 過払い金報酬金
上記の報酬金以外で報酬金を受け取ることは禁止されています。さらに、それぞれに上限が決められています。
解決報酬金 | 1社あたり2万円以下 商工ローンの場合は5万円以下 |
---|---|
過払い金報酬金 | 訴訟せずに回収した場合:20%以下 訴訟によって回収した場合:25%以下 |
上限を超える報酬金を提示してくる場合は、誠実な弁護士事務所とはいえないので依頼するのを避けましょう。
弁護士事務所選びで失敗するパターン
「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためにも、弁護士事務所選びの失敗パターンを知っておきましょう。失敗するパターンを回避するだけでも、よい弁護士事務所にめぐりあう可能性が高まるはずです。
ランキングや口コミを鵜呑みにする
過払い金請求を依頼する事務所を探しているとランキングサイトや口コミサイトを見かけるでしょう。なかには「やらせ」や「広告」としてランキングや口コミが掲載されてることもあります。
ランキングや口コミを経由して弁護士事務所に依頼があると、サイトの運営者へ事務所から報酬が支払われるような仕組みになっていることもあります。
ランキングや口コミを見るときは、鵜呑みにせずに参考にとどめる程度にしましょう。
安易に仲介業者を利用する
- 自分で弁護士事務所を探すのは面倒
- よくわからないから仲介業者に任せたい
こうした理由で安易に仲介業者を利用するのはやめましょう。なかには悪徳弁護士と手を組んでいる仲介業者もあります。自分で探す手間を惜しまないようにしましょう。
費用が高額な弁護士事務所に依頼する
費用が高額だから安心できるというわけではありません。大切なのは費用とのバランスです。
たとえ多くの過払い金を取り戻すことができても、大半が弁護士の費用として消えてしまうのであれば、満足度の低い過払い金請求となってしまいます。
弁護士事務所に依頼するときには、相場を参考にして、費用が高すぎる弁護士事務所は避けましょう。
過払い金請求の経験が少ない弁護士に依頼する
過払い金請求の経験が少ない弁護士では、知識や経験が不足していることによって取り戻せる過払い金が少なくなることもありえます。必ず過払い金請求の実績があるか確認しましょう。
早期解決だけを重視している事務所を選ぶ
早期解決を重視しすぎると、少ない過払い金しか取り戻せなくなることもあります。
早期解決だけでなく、過払い金を少しでも多く取り戻すという姿勢があるか確認しましょう。
おわりに
過払い金請求は自分でもおこなうことができますが、弁護士事務所に相談することをおすすめします。経験豊富かつ良心的な弁護士事務所に依頼をすることで、満足のいく過払い金請求につながります。
経験が豊富な弁護士に任せることで、取り戻せる過払い金の金額がアップしたり、貸金業者との交渉を有利に進めることができる可能性があります。