過払い金の請求のためにはいろいろな準備や手続きを踏む必要がありますが、これらは自分だけですることが可能です。
専門家の方に任せて解決したいという人もいれば、お金の問題は自分で手続きや交渉を行いたいという人もいますので、そのような場合は請求に関する知識を得ておく必要があります。
本稿では過払い金の請求を自分で行う上での方法や注意点をまとめましたので、参考にしていただければと思います。
過払い金請求を自分でやる流れ
1.取引履歴を取り寄せる
まずは自分に発生している過払い金がいくらかどうかを計算する必要がありますので、請求対象の貸金業者に取引履歴を要求することから始めます。
取引履歴にはこれまでの自分の融資や返済に関する記録がありますので、これを基にすれば発生した過払い金を算出することができるのです。
取引履歴を取り寄せる方法は、「取引履歴開示請求書」を送付し、電話連絡で貸金業者に直接要求などいくつかの方式があります。
貸金業者は要求された場合応じなければならない義務がありますので送付されないということはありませんが、業者によって届くまでの時間に差があります。
一週間で届くところもあれば、一カ月以上掛かるところもありますので、時効が迫っている場合は要注意です。
2.過払い金がいくら発生しているか計算
取引履歴が届いたら、過払い金を算出するために引き直し計算を行います。
引き直し計算とは、実際に支払った返済額から利息制限法(15%~20%)に基づいて返済した場合の返済額を差し引くという計算法で、これにより導き出された金額が発生した過払い金になります。
実際に計算してみると非常に面倒ですが、無料の引き直し計算ソフトを公開しているホームページがいくつかありますので、困ったときはダウンロードして使用してみるといいでしょう。
3.請求先の貸金業者に過払い返還請求書を送る
発生した過払い金の額を確認することができたら、いよいよ過払い金を請求する旨の書類を内容証明、配達証明つきで送付して請求を開始することになります。
「過払い金返還請求書」には請求を行う旨や日付といった様々な情報を記載する必要がありますが、具体的に「こう書かなければならない」という決まりはありません。
そのため、いくつかのホームページが請求書の雛形を作成していますので、ダウンロードして雛形に必要事項を記載していくとスムーズに作成できます。
4.貸金業者の担当者と交渉する
まずは話し合いで払い戻される過払い金を決定することになりますが、最初の段階は電話で担当者相手に交渉します。
貸金業者側は過払い金の支払いを少なくすることに主眼を置いた交渉をしてくる可能性が極めて高いです。
具体的には「全額は支払えない」と言ったり、低めに算出した金額を提示するといったもので、しっかりと自分の意見を言えるようにしておかなくてはなりません。
5.話し合いで和解できなかった場合、過払い金請求の裁判をする
交渉が決裂した場合は裁判で結論を出すことになります。
請求するこちらが原告側になりますので、自分の住んでいる場所を管轄している地方裁判所に訴状を送って裁判を行います。
なお、過払い金の請求額が140万円以下の場合は、地方裁判所ではなく簡易裁判所に訴状を送ることになりますので、その点も頭に入れておきましょう。
訴状も過払い金返還請求書と同様にいくつかのホームページが雛形を用意していますから、スピーディに手続きを行いたい場合は、雛形をダウンロードして訴状を作成するといいです。
6.過払い金の入金
話し合いで支払われる金額の合意がなされたり、裁判の結果が出て支払われる金額が決定されると、後は過払い金が実際に入金されるのを待つことになります。
和解が成立しての払い戻しの場合は数カ月で入金がありますが、訴訟後の場合は訴訟の期間も含めて1年以上掛かりますので、留意しておく必要があります。
入金が行われて、ようやく全ての工程が終了です。
過払い金請求を自分でやるメリットとデメリット
メリット
過払い金を自分で請求する際のメリットは、専門家に方に依頼するための金額が掛からないということに尽きます。
専門家は頼りになりますが、一部が無料で過払い金の計算を行ってくれるくらいで、請求の交渉・訴訟に至るまで報酬を支払わなければなりません。
自分で全て解決できれば依頼する分のお金が浮くのでかなり得をしますが、貸金業者との交渉の過程で大幅に払い戻し額を減らされて大損した、ということがないように交渉については特に気を付けなければなりません。
デメリット
デメリットとしては、手間と時間が掛かるという点がまず挙がります。
過払い金には最終取引から10年という時効が存在し、一部の例外を除いてそこを過ぎてしまうと請求することができなくなるというリミット付きです。
基本的に借金を完済した時が最終取引と判断されますが、過払い金が発生するのは「グレーゾーン金利」の適用に関する対応が甘かった2007、08年以前の借金が対象になりますので、2017年現在過払い金の時効が迫っている人は非常に多いです。
モタモタしているうちに時効になってしまうので、時間を掛けられない人は専門家の方に依頼する方がいいでしょう。
次のデメリットは、交渉によって戻ってくる過払い金が少なくなる可能性高いことです。
貸金業者は過払い金に関して豊富な知識を持っていますし、過払い金の支払いで業績が悪化している事情から、なるべく支払額を少なくするための交渉を展開します。
個人で請求している人相手には特にその傾向が強くなり、交渉に押されて少ない金額で合意してしまうということになりかねません。
専門家は知識も豊富で、業者側の交渉のやり方も熟知していますので、交渉の中で自分の意見を通しやすくなるというメリットがあるのです。
次は、同居している家族に過払い金の請求を知られてしまうことです。
過払い金の請求を行う=過去に借金をしていたということですので、黙って借金していた人にとっては過払い金の請求によって隠れた重大な行動を知られるリスクがあります。
黙って手続きを行いたい人も、専門家への依頼が必要になるのです。
過払い金請求は自分でするべきなのか?
結局のところ、過払い金の請求は自分で行うべきなのでしょうか?
結論から言えば、「状況によっては自分で請求した方がいい場合がある」一方で、専門家に依頼するよりもリスクが大きいのです注意です。
自分で請求する場合は時間と手間が掛かるものの、上手くいけば専門家への報酬を浮かすことができますので、「時効までに余裕がある人」が個人での請求が合っているといえるでしょう。
とはいえ、自分で請求する際であっても実際に請求を始める前に専門家にアドバイスをもらうということはできますし、後で軌道修正して専門家に依頼するといったことも可能なので「最初から最後まで自分で解決しよう」というよりも、「困ったら専門家に依頼しよう」といった柔軟な考えをもって、準備や手続きを行うといいです。