返せない借金の督促状が届いてしまったら…
借りるのは簡単でも返すとなると大変なのが借金というものですね。返済しないといけないことは分かっていても、ついつい返済日を忘れてしまったり手元にお金がなかったり、返済が遅れてしまうことも少なくありません。1日や2日、返済が遅れたくらいでは大きな影響はないでしょう。でも、それが癖になって1週間、2週間と、どんどん返済日が遅れてしまうとなると話は違ってきます。
借金を滞納していると、ある日、貸金業者から「督促状」が送られてきます。督促状とは、簡単にいえば「借金を返してください」という内容の手紙です。
返せない借金を抱えている債務者に多いのが、借金そのものから目を背けて、貸金業者からの電話や手紙を無視したり見ないふりをしたりしてしまうことです。返せといわれてもお金がないのだから、と届いた手紙を開けもせずに捨ててしまうなどという人もいます。でも、実はこれはとても危険な行為です。貸金業者から届く督促状にどんなことが書かれているのか、きちんと確認しましょう。
督促状に書かれている内容とは?
貸金業者から届く「借金を返済してください」という内容の文書には、2通りあります。
1つは「督促状」で、支払いの催促や請求書といった性質のものです。最初のうちは、督促状の内容はそれほどきびしいものではありませんが、何度も送られてくるうちに、ただ返済を促すだけではなく、返済がない場合の処置についても記載されるようになります。
そして、もう1つの「催告書」は、支払いを迫る通知書といった意味です。多くの場合、「期限までに返済がない場合には、法的手段による解決を図ります。」というような、大変きびしい文面となっています。催告書が送られてくるということは、貸金業者からの最終通告のようなものだといえます。
借金の督促を無視してしまうとどうなる?
貸金業者からの督促状や催告書を無視してしまうと、どうなるのでしょうか。
まず、借金返済が滞っている債務者へ貸金業者がどのようなアクションをとるのかの流れを見てみましょう。
(1)返済日を過ぎ、数日後に催促の電話が自宅や携帯電話にかかってくる
返済日を過ぎて、確認の電話が来ます。この時点ではただ単に返済を忘れている可能性もあるため、数日間をおいて債務者へ直接連絡をしてくることが多いでしょう。
(2)電話に出ない、返済がない場合には、職場やその他の連絡先へ電話がかかってくる
初回の連絡後にも返済がなかったり、そもそも電話に出なかったりというような場合には、職場やその他の連絡先へ確認の電話が入ります。この時点では貸金業者も社名を告げないことが多く、周囲に借金をしていることがバレる可能性は低いでしょう。
(3)さらに無視をしていると、本社から自宅住所に督促状が郵送される
文書で借金返済を促す連絡が来ます。この時点では差出人として貸金業者名が記載されていることがほとんどなので、家族に借金滞納がバレてしまう可能性が高いでしょう。
(4)貸金業者によっては自宅訪問し、返済の催促をする
回収担当者が直接自宅を訪問して催促をする場合もあります。通常の貸金業者であれば、テレビや映画などで目にするような恐喝行為や暴力行為は一切ありません。
(5)警告の督促状や催告書を無視すると、裁判所から支払督促がくる
貸金業者が裁判所を通して督促状を送ってきます。この時点では「貸金業者が借金の返済がないと訴えていますよ」という通知であり、この督促状が来たからといって給料や資産を差し押さえられるわけではありません。ただし、「期限までに連絡が取れないと法的手続きによる解決を検討する」といった内容が記載されています。
(6)裁判所からの通知を無視していると強制執行が行われる
裁判所からの督促状を無視していると、いよいよ強制執行といって、裁判所が預金・現金、家具や家財の差し押さえや給料の差し押さえをして、そこから借金を回収できるようになります。
このように資産や給料を強制的に差し押さえるまでには、貸金業者は債務者に複数回の接触を試みます。それをすべて無視するとなると、返済の意思がないと認められてしまうので、貸金業者からの連絡は決して無視してはいけません。
上記の流れの中で、問題が深刻化しているといえるのは、(3)督促状が郵送されてくるところでしょう。こうなると貸金業者はすでに法的手続きを視野に入れていると考えられます。さらに、裁判所の通知を無視するということは、訴えを認めることになりますので、戦わずして負けが決定してしまいます。
借金の催促のルール
借金を催促することは法的に認められた行為ですが、貸金業法21条「取立て行為の規制」でしっかりとルールが設けられています。そのルールを違反しての催促は、法律違反として抗議できるようになっています。
貸金業者からの取立てや催促が法律違反ではないかどうかをチェックしてみましょう。
・朝9時から夜8時までの時間帯のみ電話や訪問による取り立ての連絡が可能。
・1日に3回以上、電話にて催促を行ってはいけない。
・3名以上の人数で、借金催促を目的で自宅などを訪問してはいけない。
・職場を催促を目的として訪問してはいけない。
・電話や訪問時に、大声を出したり暴力的な言葉を使用したりしてはいけない。
差し押さえされる前にすべきことは?
督促状が送られてきたら、差し押さえされてしまう前にできることはあるのでしょうか? 自分の資産や給料を持っていかれるのを黙って見ているのではなく、少しでも資産を守るためにすべきことを覚えておきましょう。
・まずは貸金業者に確認する
貸金業者から督促状が届いたら、すぐに自分から連絡をするようにしましょう。借金の返済ができないのであればその状況を説明し、いつなら支払えるのか伝えなくてはいけません。誠意ある態度で返済の意思があることを伝えれば、返済を待ってもらうことも可能でしょう。
・司法書士などの専門家に相談する
借金がすでに返済不可能な状況に陥っている場合には、すぐに司法書士などの専門家に相談しましょう。自分の借金の状況を正確に伝えれば、解決策をアドバイスしてもらうことができます。
司法書士に借金を整理してもらうように依頼をすると、すぐに貸金業者へ「受任通知」を発送します。これが手元に届くと貸金業者は債務者へ直接連絡をすることができなくなり、返済も一時的にストップするので、借金の深刻化を防ぐことができます。
・裁判所からの支払い督促状には異議申立てをする
すでに裁判所からの通知が届くというところまで事が進んでしまっている場合には、すぐに異議申立てをしましょう。さきほども説明したように、裁判所の通知を無視すると強制執行されてしまいます。それを防ぐためには異議申立てをする必要があります。
支払い督促状には「支払督促異議申立書」が同封されており、名前・住所・連絡先と数行の言い分を書いて裁判所へ郵送するだけなので、自分でも簡単に行えます。ただし、異議申立てをすることで貸金業者との裁判が開始してしまいますので、和解にするか徹底的に争うのか、今後の訴訟も視野に入れて司法書士に相談するといいでしょう。
ちなみに、借金滞納について裁判を行うとしても、実際に返済をしていないのであればほぼ100%負けてしまいます。支払い督促状が届いたら異議申立てをするとともに、貸金業者と直接交渉を行って和解決着を目指しましょう。