債務整理は、借金の減額や免除ができる反面、デメリットがあります。デメリットの中でも、特に気になるのが家族への影響ではないでしょうか。
債務整理を行うと、少なからず家族に影響します。もし家族への影響を気にして債務整理をしないのであれば、一度どんな影響が出るのか知っておくと良いでしょう。
本記事では、債務整理が家族に与える影響や家族にバレずに債務整理する方法などを解説します。
債務整理とは
まずは債務整理について改めて知っておきましょう。
債務整理には、3つの種類があります。
手続きの種類 | 内容 |
---|---|
任意整理 | 主に利息軽減・毎月の返済額の減額 |
個人再生 | 最大で10分の1まで借金減額 |
自己破産 | 借金の免除 |
債務整理の種類によって、手続きや減額の幅が異なります。
また、どの債務整理をしても今後5年~10年間は借り入れやローンを組むなどはできません。
特に自己破産は借金を全額免除にできるメリットが大きい分、家族に与える影響を考えると、デメリットも大きいです。裁判手続き中は、裁判所の許可がなければ長期旅行や引っ越しができません。
また、持ち家や車を始めとした、手元にある20万円以上の資産は処分されます。持ち家や車がなくなれば、家族に迷惑をかけてしまうでしょう。
債務整理は少なからず家族に影響がある
債務整理をすれば、少なからず家族に影響が出るでしょう。ただし、債務整理の種類や債務整理をするのが誰かによって、どの位影響が出るかは異なります。
債務整理をする上で、一番ネックとなるのが生活の変化ではないでしょうか。
たとえば自己破産をした場合、持ち家がなくなり引っ越すことになれば、当然家族にも影響はでます。
では、実際に債務整理でどこまで影響がでるのか、また反対に影響しないことも合わせて解説していきます。
家財道具がすべて没収されるわけではない
債務整理のうち、自己破産は家財道具が没収されます。
しかし、家財道具すべて没収されるわけではありません。基本的に生活必需品と認められる家財は残すことができます。
また、多くの場合20万円以上の価値があるかが没収されるかの判断基準となるため、ほとんどの家財は残るでしょう。
民事執行法131条では、衣服や寝具、家具や台所用品は差し押さえできないとしています。
第百三十一条 次に掲げる動産は、差し押さえてはならない。
一 債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具
二 債務者等の一月間の生活に必要な食料及び燃料(引用元:民事執行法131条|e-GOV)
また、処分の対象になるのは、破産した方自身の所有物に限られます。
家族のものであれば、処分されることはありません。そのため、債務整理をしても生活が一変してしまうほど環境が変わることはないといえます。
自宅に住み続けることは可能
債務整理をしても、自宅に住み続けることは可能です。
ただし、債務整理の種類によって異なります。
自己破産の場合は、持ち家を売却しなければいけないので、そのまま住み続けることはできません。とはいえ、自己破産をして即退去ではなく、手続きから大体半年~1年は住み続けられます。
しかし、引っ越さなければいけなくなるため、家族に影響はかかってしまうでしょう。
また、家賃保証会社の審査に通りづらくなることはありますが、自己破産後でも賃貸契約することは可能です。
持ち家をそのまま残したい場合は、自己破産ではなく任意整理や個人再生を検討しましょう。
子どもの進学や就職に影響は出ない
債務整理をしてしまうと、「子どもの進学や就職にもなにかしらのデメリットがあるのでは?」と考えてしまう方も多いです。
しかし、自己破産が子どもの進学や就職に影響することはありません。
債務整理したことが周囲に知られることはありませんし、家族でもない人が調べることもできないのです。そもそも学校や会社側が、家族の債務整理の履歴まで調べることは、まずないでしょう。
また、自己破産をした場合、貸金業者や警備員など一時的に就けない職業が一部あります。しかし、これはあくまで自己破産した本人が対象です。
子どもが貸金業者や警備員の仕事をするのは問題ありません。
家族の信用情報には影響しない
債務整理をしても、家族の信用情報には影響しません。事故情報として登録されるのは、債務整理を行った本人だけです。
しかし、事故情報として登録されるのはあくまで本人のみなので、家族は変わらずにローンを組んだり、借り入れしたりすることができます。
信用情報は個人単位で作られており、世帯のまとまりで扱われているものではありません。
そのため、自己破産で持ち家がなくなったとしても、家族の誰かしらが新たに住宅ローンを組んで家を購入することも可能です。
債務整理の種類によって与える影響は異なる
どれだけ家族に影響が出るかは、債務整理の種類によって異なります。
基本的には借金の減額に比例して与える影響も大きくなると考えて良いでしょう。
たとえば任意整理の場合であれば、デメリットは少なく、家族に与える影響もそれほどではありません。しかし、借金を全額免除にできる自己破産であれば、自分はもちろん、家族へ与える影響は大きいです。
「任意整理」「個人再生」「自己破産」それぞれの場合で、どのような影響が出るのか以下で解説します。
任意整理の場合
任意整理は、債権者と協議の場を持ち話し合いをする手続きです。裁判所を通さずに債務整理できるため、比較的簡単に手続きできます。
ただし、大幅な借金の減額は期待できません。
また、任意整理は債務整理の対象を選べるため、家族への影響を抑えやすい債務整理といえるでしょう。
しかし、もちろん任意整理した場合でも家族に与える影響はあります。主な影響は下記の3つです。
- 自分名義でローンが組めない
- 家族カードが使えない
- 子どもの奨学金の保証人になれない
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自分名義でクレジットカードの新規発行、ローンが組めない
債務整理をすると、信用情報機関に事故情報が登録されます。いわゆる「ブラックリスト」として登録されます。
任意整理の場合、事故情報は5年間残ってしまうため、5年間は自分名義でローンを組んだり、クレジットカードの使用や新規発行はできません。
ただし5年間ローンを組めない、クレジットカードの新規発行や使用ができなくなるのは、あくまで任意整理をした本人のみです。
家族の信用情報に傷がつくわけではないので、家族がローンを組んだり、クレジットカードを新規発行することはできます。
また、クレジットカードには家族カードがあります。家族が主契約者になっている場合、家族カードを所有することは可能です。
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家族カードが使えない
家族カードとは、クレジットカード契約者である本人の家族に対して発行できるクレジットカードです。
家族カードの主契約者が債務整理をすると、付随した家族カードはすべて使用できなくなります。
もし債務整理する本人が主契約者であるなら、家族に大きな影響を与えることになるでしょう。ただし、家族カードが使えなくなっても、家族それぞれが自分名義でクレジットカードを契約することはできます。
また、家族が主契約者となった家族カードを所有することも可能です。
債務整理される本人が家族カードの主契約者であれば、家族カードが使えなくなること、それぞれのクレジットカードを契約してもらうことを話しておくと良いでしょう。
子どもの奨学金の保証人になれない
債務整理によるブラックリスト登録は、あくまで本人のみなので、子どもが奨学金制度を使えなくなることはありません。
奨学金は子ども本人が契約し、返済義務も子どもにあるためです。
しかし、任意整理をすると奨学金の連帯保証人になれません。
任意整理から5年以降、ブラックリストから抹消された状態ならば連帯保証人になれますが、任意整理から5年以内、ブラックリストに登録されている期間は連帯保証人にはなれません。
子どもに奨学金を受けさせたい場合は、自分以外の親族や配偶者を頼るまたは機関保証制度を利用しましょう。
個人再生の場合
個人再生は、3年~5年の返済計画書を提出し、裁判所に認めてもらう方法です。原則3年ですが、特別な事情がある場合5年までの長期分割弁済が認められます。
最大で10分の1まで借金を減額できる可能性があります。しかし、その分任意整理よりも家族に与える影響は大きいです。
特にローンで自宅や車を購入した場合は注意しましょう。自宅や車はローンを完済するまではローン会社に所有権があり、「所有権留保」という形になります。
たとえば車の場合、ローンを完済するまでは、購入者が所有者ではなく、所有者(ローン会社)に車を使用させてもらっている状態なのです。
ローン完済までの間に返済が滞ったり、債務整理をした場合には、債権の一部として没収されてしまいます。
ただし、「所有権留保」がつかない場合、個人再生しても車は引き上げられません。
もし家族共有の車をローンで購入していると、没収されたことが原因で個人再生したと知られてしまう可能性もあります。大幅な減額が期待できる分、家族に与える影響も大きいと覚えておきましょう。
家族が返済を迫られる可能性
個人再生をすると、家族が返済を迫られるケースがあります。
個人再生は任意整理のように整理する対象を選ぶことができません。
そのため、家族が保証人となっているものがあると「保証債務」を負ってしまい、主債務者が返済できない場合に保証人が返済しなければいけないのです。
第四百四十六条 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
(引用元:民法446条|e-GOV)
配偶者が保証人になっていると、配偶者へ一括請求され、配偶者も一緒に債務整理しなければいけない場合があります。
家族に大きな影響を与えてしまうことになるので、個人再生を行う場合は、保証人が誰になっているか確認しておきましょう。
自己破産の場合
自己破産は借金を全額免除にできる債務整理です。
他の債務整理と異なり、自己破産は支払い不能状態に陥った場合のみ適用できます。
ただし、借金を全額免除できる分、デメリットは多いです。特に大きな影響となるのが2つです。
- 持ち家の没収
- 車を没収される可能性
持ち家が没収されれば、当然引っ越さなければいけないので、家族への影響は大きくなってしまうでしょう。
また、車を没収された場合も、家族で共有して使っている場合、影響が小さいとはいえません。債務整理の中でも、家族に与える影響が大きいと覚えておきましょう。
持ち家の没収
自己破産をすると、賃貸契約ならば継続して住み続けられますが、持ち家の場合は手放さなければいけません。
持ち家は売却されて債権者への返済に充てられ、住宅ローンが残っている場合は、ローン会社が競売を行います。
自己破産をすれば持ち家を残すことはできないので、持ち家をどうしても残したい場合は個人再生や任意整理を選ぶしかありません。
車を没収される可能性
自己破産をすると、車やバイクも没収される可能性があります。
しかし、持ち家とは異なり残せる可能性もあるのです。
ローンが残っている場合は、ローン会社の所有権になるため、ローン会社が引き上げます。ローンの支払いが完了している場合、または一括で支払い済みであれば残せる可能性が高いです。
自己破産で没収されるのは、多くの場合20万円以上の価値がある財産となります。車やバイクの評価額が20万円未満であれば、処分の対象外となるのです。中古車業者などの査定額が20万円未満ならば、そのまま使い続けられます。
また、仕事で車が必要な方もいるでしょう。その場合は裁判所に申し立てをすれば、「自由財産の拡張」として認められる可能性があります。
4 裁判所は、破産手続開始の決定があった時から当該決定が確定した日以後一月を経過する日までの間、破産者の申立てにより又は職権で、決定で、破産者の生活の状況、破産手続開始の時において破産者が有していた前項各号に掲げる財産の種類及び額、破産者が収入を得る見込みその他の事情を考慮して、破産財団に属しない財産の範囲を拡張することができる。
(引用元:破産法34条|e-GOV)
自由財産の拡張は、一律な判断基準がなく、破産者の生活状況や収入などから判断されるものです。
仕事や日常生活の中で、車が必需品と認められれば、没収されずに使い続けられます。
ただし基本的には没収される可能性が高いです。車が没収されてしまえば、家族に不便を感じさせてしまうでしょう。
家族が保証人の場合は注意
債務整理で一番気を付けなければいけないのは、家族が保証人の場合です。
個人再生や自己破産をすると、保証人に返済義務が生じます。これは、家族ではなく”保証人”であるからです。
保証人が家族でなければ、別の保証人に返済義務が生じます。
もし家族が保証人の場合、一括返済を迫られ、保証人である家族も一緒に債務整理しなければいけなくなる可能性が高いです。
ただし、任意整理に関しては、整理する対象を選べるので、家族が保証人になっている債務を外せば問題ありません。
自己破産と個人再生の場合、整理する対象が選べないため、必ず保証人に影響を与えてしまいます。
保証人に返済を求められる
重要なのは、債務整理をする本人と家族であることではなく、”保証人”という点です。
どの債務整理をしても、保証人になっていない限りは家族であっても返済を求められることはありません。
しかし、身近で信用できる相手ということから、配偶者を保証人とするケースは多いです。家族が保証人となっている場合、個人再生や自己破産をすれば、保証人に返済を迫られてしまいます。
また、もし離婚していたとしても、保証人であることに変わりはありません。そのため、返済義務は生じてしまいます。
家族にバレずに債務整理するには?
債務整理を行うにあたって、「家族にバレたくない」と考える方は多いです。
基本的に債務整理は本人の問題であるため、家族に知られる可能性は低いでしょう。弁護士に依頼した場合でも、弁護士から第三者に伝えることはまずありません。
ただし、解説したように債務整理の種類によってデメリットが大きくなります。
個人再生や自己破産の場合であれば、家族に与える影響が大きいためバレやすいです。
持ち家や車が没収されれば、同居されている家族は不審に感じるでしょう。また、個人再生と自己破産は手続きも多く、裁判所に出頭しなければいけないため、そこから家族にバレる可能性もあります。
家族に知られずに債務整理を行うなら、バレるリスクの低い任意整理を検討しましょう。
任意整理は家族にバレる可能性が低い
任意整理はリスクが低く、手続きも少ない手続きです。
裁判所に出頭する必要がなく、必要書類や手続きも個人再生や自己破産と比べると少ないため、バレにくいといえるでしょう。
また、任意整理は整理する対象を選択できるので、家族に影響のない債務だけを対象とすれば、生活に大きな変化を与えることはありません。
もちろん任意整理をするにあたって作成しなければいけない書類もありますが、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士に依頼すれば、書類の作成や債権者とのやり取りも任せられるので、バレる可能性が大幅に低くなります。
任意整理でバレるケース
個人再生や自己破産と比べれば、任意整理はバレる可能性が低いです。
しかし、100%バレないということはありません。
任意整理の場合でも、ちょっとしたことが原因でバレることはあります。バレてしまう主な原因は、下記3つです。
- 郵便物
- 各種審査
- 返済延滞
郵便物
任意整理に限らず、債務整理がバレてしまう主な原因は郵便物です。
債務整理を行う場合、さまざまな書類のやり取りをしなければいけません。債権者とのやり取りの書類が見つかれば、そこから任意整理がバレることはあります。
また、郵便だけではなく、電話にも注意が必要です。電話の内容や電話の履歴からバレてしまう可能性があります。
これらのリスクを回避するなら、弁護士への依頼を検討しましょう。
弁護士へ依頼した場合、債権者とのやり取りは弁護士が行い、郵便物も弁護士事務所へ送られます。直接やり取りしなくて良いので、バレるリスクは低くなるでしょう。
各種審査
任意整理をすれば、5年間は新規クレジットカードの発行やローンが組めなくなります。
家族と同居していれば、何らかのタイミングでローンを組むような大きな買い物が必要となることがあるでしょう。
しかし、任意整理をした本人は審査が通らなくなるため、バレてしまう可能性があります。
もちろん「審査に通らなかった」と伝えられるだけで、「ブラックリストに登録されている」とは伝えられません。とはいえ、「なぜ審査に通らなかったのか?」という話になる可能性は十分あります。
任意整理後に大きな買い物をしたい場合は、現金やデビットカードを使うようにしましょう。
返済延滞
任意整理は、借金を免除できるものではありません。今後も継続して借金を返済していきます。
任意整理後、スムーズに返済できていれば問題ありませんが、返済が滞った場合は注意しましょう。
返済が滞れば、債権者から再度郵便や電話などが来るようになるので、郵便物からバレる可能性が高くなります。
また、弁護士に依頼した場合は、弁護士費用の延滞も気を付けましょう。
家族に影響を与えず債務整理を考えているなら弁護士へ相談
できるだけ家族に影響を与えずに債務整理をしたいなら、弁護士へ相談することを強くおすすめします。
弁護士へ依頼すれば、郵便物や書類から債務整理がバレることはありません。また、借金の総額や収入などに見合った債務整理や、できるだけ家族にバレにくい債務整理を提案することができます。
家族への影響を心配するのであれば、弁護士への依頼を検討するべきです。
状況に合った債務整理を相談できる
債務整理の経験が豊富な弁護士であれば、債務者の状況に合う債務整理を提案することができます。
自分の状況に、どの債務整理が適切かを見極めるのは簡単ではありません。特に家族に影響を与えたくない場合、どの債務整理を選ぶかは重要な部分です。
どの債務整理をするべきか悩んでいるのであれば、まずは一度相談しましょう。
また、相談する際は弁護士事務所の公式サイトなどから確認して、債務整理の経験が豊富な弁護士を選ぶことをおすすめします。
家族にバレる可能性が低い
弁護士に依頼すると、家族にバレる可能性が低くなります。
書類作成や郵便物の代行はもちろん、裁判所への出頭も弁護士が行うからです。
債務者が連絡を取り合うのは弁護士だけなので、ちょっとしたきっかけでバレることはありません。
弁護士に依頼する際は、事前に「家族に知られたくない」と伝えましょう。