金融機関など債権者からお金を借りる場合、保証人や連帯保証人を求められることがあります。
保証人も連帯保証人も、借金をした債務者がお金を返済できなければ、代わりに返済をしなければならない点は同じです。
では、保証人と連帯保証人では、どのような点が違うのでしょうか?
この記事では、
- 保証人と連帯保証人の3つの違い
- 債務整理や過払い金請求をした際に保証人に迷惑がかかるのか?
- 保証人に迷惑をかけないためにはどうすればいいのか?
など、保証人と連帯保証人の違いを解説します。
この記事を読めば、両者の違いを理解できるので、保証人や連帯保証人に迷惑をかけない方法などについてもわかります。
借金をするときの保証人と連帯保証人の3つの違いを解説
消費者金融やカードローンでお金を借りる場合、基本的に保証人や連帯保証人を求められるケースは少ないです。
しかし、以下のようなケースでは保証人や連帯保証人を求められます。
- 多額の借金をするとき
- 返済能力に不安があると判断されたとき
- 過去の信用情報に問題があるとされた
借金をする際に、保証人や連帯保証人を求められる理由は、お金を借りた債務者が返済できない場合に、保証人や連帯保証人から返済をしてもらうためです。
ところで、保証人には、以下の3つの権利があります。
- 返済を求めらても、借金をした債務者に請求して欲しいと主張できる
- 返済を求められても、先に借金をした債務者から回収して欲しいと主張できる
- 保証人が複数いれば、支払う借金は保証人の数で割った金額が上限になる
返済を求められても、借金をした債務者に請求して欲しいと主張できる
保証人は、金融機関など債権者から借金の返済を求められても「借金をした債務者に請求して欲しい」と主張できます。
このことを催告の抗弁権と呼び、民法第452条にも定められています。
第四百五十二条 債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。
そのため、債務者が滞納しているという理由だけで、保証人がすぐに返済に応じる必要はありません。
(引用元:民法第452条|e-Gov)
ただし、債務者が自己破産していたり、夜逃げして行方不明になったりしているケースでは、催告の抗弁権は主張できません。
返済を求められても、借金をした債務者から回収して欲しいと主張できる
保証人は、金融機関など債権者から借金の返済を求められても「先に借金をした債務者から回収して欲しい」と主張可能です。
このことを検索の抗弁権と呼びます。
第四百五十三条 債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。
(引用元:民法第453条|e-Gov)
たとえば、返済能力のある債務者が、なかなか返済をしないことがあります。このような場合に、債権者はスムーズに借金を返済して欲しいがために、保証人に対して借金の返済を求めるケースがあります。
しかし、債務者が返済に応じない場合、債権者は債務者の給料を差し押さえる可能性もあります。
そのため、保証人は債権者から返済を求められても、すぐに返済をする必要はないのです。
保証人が複数いれば、支払う借金は保証人の数で割った金額が上限になる
保証人が複数存在する場合、支払わなければならない借金は、保証人で割った金額に限られます。
このことを分別の利益と呼び、民法第427条および第456条で定められています。
第四百五十六条 数人の保証人がある場合には、それらの保証人が各別の行為により債務を負担したときであっても、第四百二十七条の規定を適用する。
第四百二十七条 数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。
(引用元:民法第427条および第456条|e-Gov)
たとえば、借金が600万円あり、保証人が3人存在するケースで考えてみましょう。
このケースでは、保証人一人あたりが支払わなければならない金額は、200万円です。
そのため、債務者の借金を支払う羽目になっても、200万円を超える金額については、支払う必要がないです。
したがって、保証人になったからといって、債務者が払えない借金の全額を負わないで済む可能性もあります。
このように保証人は、債務者が借金を返済できない場合、3つの権利を主張できます。
そのため、金融機関など債権者から債務者の代わりに借金の返済を求められても、すぐに返済に応じる必要はないのです。
連帯保証人は保証人よりも責任が重い
では、債務者が借金をした際に保証人ではなく、連帯保証人を立てた場合、連帯保証人の責任の範囲はどうなるのでしょうか?
保証人を立てた場合との違いについて解説します。
連帯保証人は、保証人のように権利を主張できない
連帯保証人は保証人よりも責任が重いです。
保証人 | 連帯保証人 | |
---|---|---|
先に債務者に返済を請求する旨を主張(抗告の抗弁権) | できる | できない |
先に債務者から借金を回収する旨を主張(検索の抗弁権) | できる | できない |
複数人存在する場合の責任の上限 | 借金を保証人の数で割った金額のみ返済すれば良い | 借金の全額を返済しなければならない |
なぜなら連帯保証人は、保証人には認められている「先に債務者に対して返済を請求する主張」や「先に債務者から借金を回収する主張」ができないからです。
このことは民法第454条にも定められています。
第四百五十四条 保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前二条の権利を有しない。
(引用元:民法第454条|e-Gov)
また、民法第441条にもある通り、連帯保証人が複数存在するケースでは、保証人とは違い借金の全額を返済する必要があります。
第四百四十一条 第四百三十八条、第四百三十九条第一項及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。ただし、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。
(引用元:民法第441条|e-Gov)
たとえば、保証人が複数いる場合に支払わなければならない借金の金額は、借金額を保証人の数で割った金額のみです。
しかし、連帯保証人の場合、連帯保証人が600万円全額の返済を行う必要があります。
また連帯保証人が複数いる場合でも、借金全額を返済する義務があるので注意が必要です。
このように、連帯保証人と保証人では、債務者が借金を返済しない場合の責任の重さが異なります。
借金を返済しなければならない点は同じ
保証人や連帯保証人は、債務者が借金を返済できない場合、代わりに返済をしなければならない点は同じです。
したがって、
- 先に債務者に対して返済を請求して欲しい
- 先に債務者から借金を回収して欲しい
と主張しても、債務者が支払えない場合は、借金の返済を拒めなくなります。
そのため、安易に保証人や連帯保証人になるべきではありません。
また借金をする際に保証人や連帯保証人になってもらうときは、自分が支払えないと迷惑がかかることは肝に命じておきましょう。
借金をしたときの保証人とは、多くのケースで連帯保証人になる
借金をする際に金融機関など債権者から求められるのは、多くのケースで連帯保証人です。
金融機関などの公式サイトで以下のような表記があっても、連帯保証人を求められているケースがほとんどなので注意しましょう。
- 消費者金融なら担保・保証人不要で借金ができる
- 融資希望額が50万円以上場合は保証人が必要です
そのため、借金をするときに保証人を求められた場合、債務者が返済できなければ、連帯保証人に返済義務が発生します。
連帯保証人を求められたときは、慎重にならなければなりません。
債務整理をすると、保証人や連帯保証人に迷惑がかかるの?
借金額が多すぎたり毎月の返済負担が重すぎたりして、借金の返済が難しいこともあります。そのようなケースでは、債務整理で解決することも検討しましょう。
ただ、保証人や連帯保証人をつけている状態で債務整理をした場合、保証人や連帯保証人に迷惑がかからないか心配な方もいるかもしれません。
債務整理には、以下の種類があります。
- 任意整理
- 特定調停
- 個人再生
- 自己破産
保証人や連帯保証人に迷惑がかかるかは、どの債務整理を選ぶか次第です。
任意整理は、対象から外せば連帯保証人に返済義務はない
任意整理とは、金融機関など債権者と交渉して、借金の負担を減らす方法です。
借金額の減額 | 借金の金額自体を減らせる。ただし借金額を減らせるケースは少ない |
---|---|
将来支払う利息のカット | 完済するまでにかかる利息をカットできる |
毎月の返済金額を減らす | 3年から5年の分割払いにすることで、毎月の返済金額を減らせる |
任意整理は、任意整理する対象を選べます。そのため、連帯保証人がついている契約を任意整理の対象から外せば、連帯保証人の返済義務を避けられます。
とはいえ、任意整理の対象から外さなかった契約については、連帯保証人に返済義務が発生するので注意しましょう。
連帯保証人に迷惑をかけたくないのであれば、任意整理の対象から外して自分で借金を返済しましょう。
特定調停は借金が減額された場合のみ連帯保証人に返済義務が発生する
特定調停とは、裁判所の調停委員が債権者と交渉して、長期の分割払いにすることで、毎月の返済負担を減らせる方法です。
交渉が上手くいけば、将来かかる利息をカットできます。また利息制限法を超える金利でお金を借りている場合は、特定調停後に過払い金を取り戻せます。借金をした債務者が特定調停を申し立てた場合、金融機関など債権者は連帯保証人に対して一括請求を行います。
特定調停をしただけでは、連帯保証人が債務者の借金を代わりに返済する必要はありません。
ただ、いきなり借金の返済を求められるので、精神的な負担をかけてしまう可能性があります。
そして、特定調停をしたにもかかわらず、結局債務者が返済できないことになれば、連帯保証人に返済義務が発生するので注意が必要です。
なお、特定調停も任意整理同様、連帯保証人がついた契約のみを外せば、連帯保証人に迷惑がかからなくなります。
そのため、連帯保証人に迷惑をかけたくないのであれば、連帯保証人がついた契約は、特定調停の対象から外しましょう。
任意整理も特定調停も分割して借金を返済するという意味では同じです。
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個人再生をすると、減額された金額を連帯保証人が支払わなければならない
個人再生とは、裁判所に再生計画を認めてもらい、借金の総額を大幅に減らす方法です。
借金をした債務者が個人再生を申し立て減額された金額は、連帯保証人がすべて支払わなければなりません。
なお、個人再生を申し立てた債務者が最低限支払わなければならない金額は、民事再生法第231条2項3号および4号により決められています。
借金額 | 最低弁済額 |
---|---|
100万円未満 | 全額 |
100万円〜500万円未満 | 100万円 |
500万円〜1500万円未満 | 借金額の5分の1 |
1500万円〜3000万円未満 | 300万円 |
3000万円〜5000万円 | 借金額の10分の1 |
たとえば借金の総額が1000万円の場合、債務者は200万円の返済に抑えられます。ところが、連帯保証人は800万円も返済しなければなりません。
また、個人再生をしたにもかかわらず、債務者が200万円を支払わないければ、連帯保証人は全額の返済を求められます。
このように、債務者が個人再生をすると、連帯保証人にも迷惑がかかるので注意する必要があります。
自己破産をすると、免除された借金の全額を連帯保証人が支払わなければならない
借金をした債務者が自己破産をすると、連帯保証人は、債務者が免除された借金全額をすぐに一括で支払わなければなりません。
一括で支払わなければならない理由は、債務者と債権者の契約上、支払いを滞納した際に分割で支払うことができる権利(期限の利益)も失うからです。
第百三十七条 次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。
一 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
二 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
三 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。
(引用元:民法第137条|e-Gov)
自己破産となると、借金の金額も多いことがほとんどなので、連帯保証人にも多大な迷惑がかかります。
借金を返済できない場合は、連帯保証人も債務整理をする羽目になる
債務者が債務整理をすると、連帯保証人は、債務者の借金について一括返済を求められます。
しかし、債務者の借金をすぐに支払えない場合は、連帯保証人も債務整理をしなければなりません。
任意整理 | 連帯保証人も同時に任意整理を行い、借金の減額や分割払いをする |
---|---|
個人再生 | ・分割払いができないか債権者に相談 ・分割払いができない場合やそもそも借金が支払えそうにない場合は、個人再生手続きにより減額された借金を返済する |
自己破産 | 連帯保証人も自己破産をすることで、借金の支払いが全額免除される |
よくある事例としては、会社が債務者で連帯保証人が経営者というケースです。会社が倒産した場合、債務額が数億円以上になるケースも珍しくありません。
その場合、連帯保証人である経営者も借金の支払いができないので、自己破産せざるを得なくなります。
このように、借金をした債務者は債務整理をすれば、借金の負担を減らせます。しかし、連帯保証人に迷惑をかけてしまうこともあるので、注意しなければなりません。
過払い金請求をした場合、連帯保証人に迷惑がかかる可能性がある
借金の返済で苦しんでおり、債務整理をするために弁護士や司法書士に相談する場合、過払い金がないか調査します。
過払い金が発生していれば、過払い金請求をすることで、多くの過払い金を取り戻せたり、借金の金額が減る可能性があります。
ところが、過払い金請求をした際に、連帯保証人に迷惑がかかるケースもあるので注意しなければなりません。
では、連帯保証人に迷惑がかかるケースと迷惑がかからないケースでは、どのような違いがあるのでしょうか?
借金完済後に過払い金請求をすれば、連帯保証人には迷惑がかからない
過払い金請求をする際に、すでに借金の返済が終わっていれば、連帯保証人には迷惑がかかりません。
なぜなら、連帯保証人は借金をした債務者が借金を完済した時点で役目を終えるからです。
そのため、債務者が過払い金請求をしても、連帯保証人に連絡が行くこともないので迷惑はかかりません。
借金返済中に過払い金請求をすると連帯保証人にも迷惑がかかる
一方で、借金の返済が済んでいない状態で過払い金請求をすると、連帯保証人にも迷惑がかかります。
なぜなら、過払い金を請求された金融機関など債権者は、連帯保証人に対して借金の一括返済を求める可能性があるからです。
なお、返済中の借金を超える金額の過払い金が発生している場合でも、連帯保証人に迷惑がかかる可能性があります。
そのため、連帯保証人に迷惑をかけたくないのであれば、借金を先に返済してから過払い金請求を行いましょう。
ただ、借金の金額が多い場合は、過払い金請求を行う前に、連帯保証人と相談することをおすすめします。
借金の返済に困った場合は、弁護士や司法書士に相談すべき
債務整理や過払い金請求をする場合は、自分で手続きをするのではなく、弁護士や司法書士に相談すべきです。
債務整理をする場合、過払い金請求をする場合にわけて、その理由を解説します。
債務整理をする場合
自分で債務整理の手続きをする場合、連帯保証人に迷惑をかけないための適切な方法を理解していなければ、連帯保証人に迷惑をかけてしまいます。
たとえば、毎月の返済が苦しいため個人再生を考えている場合、そのまま自分で個人再生の手続きをすれば、連帯保証人に迷惑がかかります。
債務者が個人再生の手続を行った場合、債権者は、連帯保証人に対して個人再生により減額された金額の支払いを求めるからです。
ところが、借金の金額が多くなければ、任意整理を選ぶこともできました。
任意整理を行えば、連帯保証人が立てられている契約のみを任意整理の対象から外すことで、連帯保証人に迷惑をかけずに済んだかもしれません。
一方、弁護士や司法書士に相談をする際に、連帯保証人には迷惑をかけたくないことを説明すれば、できるだけ連帯保証人に迷惑をかけない方法を提示できます。
一刻も早くなんとかしたい気持ちもわかりますが、連帯保証人に迷惑をかけたくないのであれば、慎重に手段を選ぶべきです。
過払い金請求をする場合
過払い金請求をする場合、借金を完済しているか返済中であるかにかかわらず弁護士や司法書士に相談すべきです。
借金返済中に過払い金請求の相談を弁護士や司法書士に相談すれば、借金をすべて返済し終えてから過払い金請求をした方が連帯保証人に迷惑がかからない方法を提示することができます。また、過払い金請求をする際に自分で手続きをするのは、以下の理由からおすすめできません。
- 債権者も個人相手だと強気にでる可能性があり、取り戻せる過払い金が少なくなる
- 債権者との交渉や裁判の手続きが大変
- 督促や取り立てがすぐに止まらない
正確な過払い金を計算する必要もあるため、弁護士や司法書士に相談すべきです。
おわりに
保証人と連帯保証人の違いは、保証人には以下の権利がある点です。
- 返済を求めらても、借金をした人に請求して欲しいと主張できる
- 返済を求められても、先に借金をした人から回収して欲しいと主張できる
- 保証人が複数いれば、支払う借金は保証人の数で割った金額が上限になる
そのため、保証人よりも連帯保証人の方が責任は重くなります。ただ、借金をする場合に必要になることが多いのは、連帯保証人です。
そのため、連帯保証人を立てる際には、迷惑をかけないように返済をすることが大事です。
ただ、どうしても借金を返済できない場合、保証人に迷惑をかけない方法で債務整理や過払い金請求をすることも検討しなければなりません。