過払い金

過払い金請求に必要な書類と裁判に必要な書類

過払金請求をするためには、いくつかの書類を用意する必要があります。弁護士に依頼すればすべて弁護士が用意してくれますが、自分で請求するのであれば自力で用意しなければなりません。

取引履歴

取引履歴とは、その消費者金融業者との間のすべての借入れ及び返済の年月日、金額が記載されたリストのことです。弁護士に依頼すれば弁護士が取ってくれますが、自分でやるのであれば全ての消費者金融業者に電話して入手方法を問い合わせるところから始めなければなりません。

取引履歴を開示しないことが不法行為に当たると判断した最高裁平成17年7月19日判決が出るまでは、多くの消費者金融業者は、弁護士に対してすら3年から5年程度の取引履歴しか開示しませんでした。

今ではそこまでの抵抗を示す消費者金融業者はいませんが、契約書の切り替え後の取引のみを開示し、あたかも全ての取引履歴を開示したかのような振りをする消費者金融業者もいますので、全ての取引履歴が開示されたかどうかを注意深く確認し、一部の取引履歴が未開示であれば何度も繰り返して開示請求をする必要があります。

引き直し計算書

すべての取引履歴が開示されたことが確認できたら、利息制限法の利率に従って再計算することになります。再計算した計算書を「引き直し計算書」と呼びます。

弁護士に依頼すれば弁護士が計算してくれますが、自分でやるのであれば、エクセルのソフトを手に入れ(ネットで入手できますが、正確性に疑問がある可能性がありますので、弁護士が書いたマニュアル本の付属CDに収録されているソフトを利用した方が良いでしょう)、自分で入力して計算する必要があります。

とはいえ、引き直し計算にはある程度の専門的な知識が必要であり、できる限り過払い金が多額となるような計算方法にしなければなりません。ネットで少し検索した程度では正確な知識は手に入りませんので、自己流で計算すると知らないまま不利な計算方法で計算してしまい、本来であれば得られるはずだった過払い金よりも少ない額しか回収できないおそれがあります。

過払い金請求書

過払い金を請求するためには、指定した期限内に指定した銀行口座に請求した過払い金を振込送金して支払えということが記載された請求書を消費者金融業者に送付し、消費者金融業者との間で和解契約書を締結する必要があります。

なお、和解契約書は、消費者金融業者が作成してくれますが、当然のことながら、消費者金融業者が作成する契約書には、消費者金融業者にとって不利なことは記載されておらず、有利なことしか記載されていません。自分に不利な条項がないかどうかを判断できる能力があるかどうかにかかわらず、署名捺印してしまえば契約書に記載された内容の全てを理解し承諾したものとみなされてしまいますので注意が必要です。

訴状

消費者金融業者との話し合いがまとまらなければ裁判をするしかありません。裁判をするには、訴状と証拠が必要であり、消費者金融業者が法人であれば代表事項証明書を添付する必要があります。

弁護士に依頼するのであれば弁護士が全て用意してくれますが、自分でやるのであれば訴状をそれっぽく作文しなければなりません。訴状を作成したら、取引履歴を甲1号証、引き直し計算書を甲2号証とし、訴状、甲1号証、甲2号証のセットを3部作成し、右上に「正本」「副本」「控え」と朱書きし、切手と印紙を添えて、正本と副本の2部を裁判所に提出する必要があります(正確に言えば、引き直し計算書は訴状の添付書類であり、証拠ではありませんが、証拠として提出してしまうのがもっとも分かりやすいです。専門的な分類が必要であればあとで裁判所が何とかしてくれます)。

その後は、自分の言いたいことを「準備書面」というタイトルの文章に記載し、裁判の期日の10日ほど前に裁判所と消費者金融業者の双方に直接送付することを繰り返すことになります。

まとめ

弁護士の要求に消費者金融業者が従って和解がまとまるのは、抵抗しても最終的には裁判になり、有無を言わせず判決に基づいて強制執行されるからです。そのため、判決になれば得られるであろう金額を前提とした交渉をすることができます。

ところが、自分で交渉しようとすると、簡単に裁判をしたり強制執行することができないため、消費者金融業者に足元を見られてしまうおそれがありますし、再計算のやり方を間違えて損をしたことに気付かないまま和解をしてしまうおそれもありますので、十分な注意が必要です。