過払い金に関する法律事務所の広告などで見かける「過払い金請求には期限があります!」という文言。実際に過払い金はいつまで請求できるのでしょうか?時効を過ぎてしまったら絶対に取り戻せないのでしょうか。ここでは過払い金請求の時効について迫ります。
もくじ
過払い金の消滅時効は最後に返済した日から10年
過払い金を返せと請求できる権利は10年で消滅してしまいます。これを消滅時効といいます。過払い金請求の権利が10年で消滅するといっても、どの時点から数えて10年なのか、かつては論争となっていました。しかし今は裁判所の判例により「最後に返済した日」から10年と定まっています。
したがって、まだ返済中の人は時効を気にする必要はありません。過去に借金をしていて、すでに完済している人は時効を迎えてしまう前に過払い金請求する必要があります。
過払い金の消滅時効を中断させる方法
ここまで読んで、もしかしたら過払い金請求の時効が迫っているかもしれない、と焦る人もいるでしょう。でもまだ慌てないでください。過払い金請求の時効をストップさせる方法があるのでご説明します。
その1:訴訟の提起(裁判)によってストップさせる
進行している消滅時効期間をリセットしてゼロから再スタートさせる方法として、過払い金請求の訴訟(裁判)を起こすという方法があります。他にも支払い督促の申立をすることでもリセットできます。
その2:催告して時効を一旦ストップさせる
消滅時効が迫っている場合、裁判や支払い督促の申立などはどうしても時間がないケースもあるでしょう。すぐに裁判や支払い督促ができない場合は「催告」をしましょう。
催告とは、ここでいうと過払い金請求を求める意思を通知することです。催告した事実を立証するため、過払い金返還請求書を作成して配達証明付きの内容証明郵便で送るのが一般的です。催告日は過払い金請求書(催告書)が相手に到達した日です。
その日に時効期間が満了する場合など、内容証明郵便では間に合わないときはFAXで催告し、FAX機の通信管理レポートなどで相手方に送信された記録を確保します。
ここで注意点ですが、催告しただけでは時効はストップできません。6ヶ月以内に訴訟(裁判)を起こす必要があります。逆に、6ヶ月以内に裁判上の請求ができなければ、消滅時効が進行してしまいます。催告したらすみやかに訴訟の準備をすすめましょう。
注意!取引履歴を請求しただけでは時効は中断しない
過払い金請求するとき、まずは過払い金が発生しているかどうかを調べ、金額を計算するために貸金業者から取引履歴を取り寄せますが、取引履歴を取り寄せただけでは過払い金請求の時効はストップしません。取引履歴の開示請求自体は、過払い金請求する意思の通知ではないので、催告には当たらないからです。
10年近く前に完済した借金で消滅時効が近づいている場合は、ひとまず取引履歴を取り寄せるだけで安心せず、すみやかに過払い金請求の手続きをすすめる必要があります。
取引の個数と消滅時効の起算点
10年近く前に一度完済し、そのあとまた同じ貸金業者から借りていたことがある人は注意が必要です。1つの取引であれば完済から10年経っていなければ消滅時効は成立しませんが、取引の途中で何度か完済・解約・再開などがあり、取引が複数に分かれると判断された場合、取引ごとに取引終了時から消滅時効期間が進行します。
そのため最後に完済した日からは10年経っていなくても、今から10年近く前に途中で一度完済したことがある人は、その取引がひとつの取引ではなく分断と判断された場合、一度完済した時から10年経っていると、その時までの過払い金は消滅時効が成立してしまうのです。
時効をすぎたらもう無理?あきらめるのはまだ早い
不法行為があった場合は3年の猶予期間が発生する
完済した日から10年以上経ってしまった!という場合でも、取り戻せる可能性はゼロではありません。悪質な取り立て行為があった場合、貸金業者の対応に「不法行為」があったとして請求できます。
不法行為を理由とする損害賠償請求権は、「損害を知った時」から3年で消滅することになっています。貸金業者の不法行為がみとめられると、完済から10年以上経っていても、損害賠償金として過払い金を取り戻すことができるのです。「損害を知った時」を、取引履歴の開示を受けた時と考えると、取引履歴開示から3年以内であれば過払い金を請求する権利があります。
不法行為にあたるかどうかの判断基準について最高裁判所は、暴行や脅迫を伴う請求や、法的根拠がないことを知りつつあえてする請求など、「社会通念に照らして著しく相当性を欠くならば該当する」としています。これに該当するかどうかはケースバイケースですが、完済から10年以上経っていてもあきらめずに弁護士や司法書士などの専門家に相談してみましょう。
過払い金請求の消滅時効のまとめ
過払い金請求の時効は最後に返済した日(完済した日)から10年です。同じ貸金業者と取引を繰り返していた人は取引の分断が認められてしまうと取り戻せる過払い金の額が少なくなってしまうので注意が必要です。過払い金請求の時効が迫っている人は裁判を起こすことで消滅時効がストップします。消滅時効で過払い金を請求する権利が消えてしまう前に、いち早く行動を起こしましょう。