過払い金

過払い金請求とは?過払い金の発生条件と請求条件

テレビやCMで話題の「過払い金」を聞いたことはありませんか?

本記事では、過払い金が発生している条件や仕組み、手続きの流れまで、過払い金についての情報を詳しくまとめました。自分に戻ってくるお金があるのか疑問な方、どのように手続きすればよいのか悩んでいる方は参考にしてみてください。

過払い金とは?

過払い金とは、貸金業者にお金を借りて返済するときに規定の分より多く支払ってしまった「業者に払いすぎたお金」のことです。本来であれば支払う必要のないお金です。そのため、業者に対して手続きを取ることで取り戻すことができます。この払いすぎたお金を取り戻す手続きを過払い金請求と呼びます。

2010年以前にお金を借りていて、完済してから10年たっていない人は過払い金が発生する可能性があります。過払い金請求をすれば、払いすぎたお金が戻ってくるかもしれません。

過払い金が発生する仕組み

過払い金の発生する仕組みを解説します。金利の上限を定める法律には、利息制限法と出資法の2つあります。

借金額 利息制限法の上限金利
10万円未満 年20%
10万円〜100万円未満 年18%
100万円以上 年15%

利息制限法の上限金利は15~20%ですが、違反した場合の刑罰や行政罰はありません。一方、出資法の上限金利は29.2%で、違反した場合に刑事罰や行政罰を受けることがあります。

利息制限法の上限金利15~20%以上は違法な金利ですが、貸金業者は刑事罰が科せられないことをいいことに、利息制限法の上限金利15~20%以上、刑事罰がある出資法の上限金利29.2%を超えない範囲の金利を設定して、金利を取っていました。

利息制限法の上限金利15~20%以上、刑事罰がある出資法の上限金利29.2%を超えない範囲の金利をグレーゾーン金利といいます。グレーゾーン金利で借金をしていた場合、過払い金が発生するのです。

みなし弁済

みなし弁済とは、利息制限法の上限金利を超えて金利を取ることは禁止されていましたが、以下の条件を満たしている場合、利息制限法の上限金利を超える金利を取ることを認めるという制度です。

  • 貸主である貸金業者が貸金業登録業者であること
  • 貸主が借主(債務者)に対して契約時に法定の契約書(17条書面)を交付していること
  • 貸主が利息を受領したとき法定の領収書(18条書面)を交付していること
  • 借主が任意に利息として支払ったこと
  • 借主が利息と認識して支払ったこと

みなし弁済を利用した貸金業者は利息制限法に違反する金利を取り、借主にとって大きな負担となりました。債務者は高い金利で借金を返済していたため、借金返済のために別の業者から借入をすることで借金がどんどん膨れ上がり、多重債務に陥る人が増え社会問題になりました。

2006年に最高裁判所は「みなし弁済にある『借主が任意に利息として支払ったこと』は事実上強制されたもので任意での支払いではない」とみなし弁済の適用を否定する判決をくだしました。

貸金業者と借主との契約において、期限の利益喪失特約(いくら借りて、いつまでに返すという契約をして、もし返せなかったら即日、全額返済することという内容)があることがあります。期限の利益喪失特約がある場合、借主は事実上利息制限法の上限金利を超える利息で支払いを強制された状況であることから、「借主が任意に利息として支払ったこと」とはいえず、みなし弁済の要件が満たされないと判断されたからです。

この判断でみなし弁済の廃止が決定づけられ、過払い金請求が認められるようになりました。

また、過払い金は消費者金融やクレジットカードでの借入に限らずグレーゾーン金利で取引をしていれば、過払い金が発生します。借入した消費者金融やクレジットカード会社に過払い金請求をすることによって、過払い金を取り戻すことができます。

しかし、2010年には貸金業法などの法改正があり出資法の上限金利が29.2%から20%に引き下げられたため、グレーゾーン金利が撤廃されました。そのため、2010年以後の借入には過払い金が発生することはありません。

過払い金が発生する条件とは?

過払い金が発生する条件は、次の3つです。

  • グレーゾーン金利で取引をしたことがある
  • 時効になっていない(完済後10年が経っていない)
  • 貸金業者が倒産していない

グレーゾーン金利で取引をしたことがある

利息制限法で定めた上限金利より高い金利で貸金業者と取引していたことがあれば、過払い金が発生します。

利息制限法で定めた上限金利は、下記のとおりです。

借金額 利息制限法の上限金利
10万円未満 年20%
10万円〜100万円未満 年18%
100万円以上 年15%

これ以上の金利で取引していた場合は、過払い金が発生している可能性が高いです。

時効になっていない(完済後10年が経っていない)

過払い金請求には時効があり、10年経つと過払い金請求ができなくなります。

10年というのは最後の返済日から10年経ったら時効という意味で、いつ借入したかは関係ありません。また最後の返済日とは“完済”という意味で、現在も返済中であれば時効にはなりません。時効になるまでに、過払い金を請求すべきなのです。

貸金業者が倒産していない

貸金業者によっては、過払い金請求できる場合と過払い金請求できない場合があります。貸金業者が倒産してしまっている場合は、過払い金請求ができません。

過払い金請求できる主な貸金業者

  • アコム
  • プロミス
  • レイク
  • アイフル
  • CFJ
  • ニコス
  • オリコ
  • セディナ
  • エポス

貸金業者によって対応が異なるため、上記に記載がない貸金業者でも、過払い金請求できる可能性はあります。

過払い金が請求できない貸金業者も、下記に紹介します。

過払い金請求できない貸金業者

  • アエル
  • 日立信販
  • SFCG
  • 武富士
  • SFコーポレーション
  • 丸和商事(ニコニコクレジット)
  • クロスシード
  • ネットカード
  • 連専

上記の貸金業者は倒産したため、過払い金を取り戻すことができません。例外的に債権譲渡があった場合は、過払い金請求できる可能性もあります。

過払い金請求のメリット・デメリット

過払い金請求のメリットとデメリットは完済の場合、返済中の場合があります。また、弁護士・司法書士に依頼する場合、自分で過払い請求する場合で様々です。

過払い金請求をそれぞれのパターンで行った場合のメリット・デメリットをご説明します。

過払い金請求のメリット

  • 過払い金が戻ってくる

過払い金を請求しても、借金を完済していればブラックリストに載ることはありません。

また借金返済中でも過払い金請求先の業者を選び、戻ってきた過払い金で借金を完済できればブラックリストに載ることはありません。

借金返済中の方が過払い金請求をすると、ブラックリストに載るという情報が出回っています、実際には過払い金請求により完済することができれば、ブラックリストに載ることはありません。そのため、まずは自分にいくらの過払い金が発生するのか、ブラックリストに載るのかどうかを確認してから、過払い金請求手続きに進むかどうかを判断するのがよいでしょう。

過払い金請求のデメリット

  • ブラックリストに載る可能性がある
  • 過払い金請求した貸金業者から借入ができなくなる

戻ってきた過払い金で借金を完済できなければ、残った借金は任意整理扱いになるため、ブラックリストに載る可能性があります。

自分はブラックリストに載るか載らないか、過払い金が発生するのか発生しないのかは、過払い金の引き直し計算をすることによってわかります。自分で過払い金の引き直し計算をすることもできますが、計算方法が複雑ですので、弁護士や司法書士などの専門家に過払い金請求の依頼をおすすめします。

また、過払い金請求のデメリットとして、過払い金請求した貸金業者から借り入れをすることができなくなることも挙げられます。

過払い金請求は弁護士と司法書士のどちらに任せる?

「過払い金請求は、弁護士や司法書士などに任せたほうがいい」と聞いたことがある人もいるでしょう。では、過払い金請求は、どちらにお任せするのがよいでしょうか?

実は、弁護士と司法書士では、法的に取り扱える業務が異なります。例えば司法書士の場合、借金の金額に制限があります。対して、弁護士はどんな案件でも引き受けることができます。

それぞれ詳しくご説明いたします。

司法書士

司法書士とは、司法書士資格を持ち、裁判所、検察庁、法務局などに提出する書類の作成や、登記に関する業務、過払い金請求を含む債務整理の業務を行うことができます。

司法書士と弁護士の違いとして、法的な制限があるか法的な制限がないかです。司法書士は個別の借金や過払い金が140万円以下に限って、相談、交渉、訴訟ができます。

弁護士

弁護士とは、弁護士資格を持ち、訴訟事件や示談交渉など、法律に関わるすべての業務を行うことができます。また借金や過払い金の金額にかかわらず、過払い金請求を含む債務整理の相談、交渉、訴訟ができます。

弁護士はあらゆる法律の業務を行うことができますが、得意分野で業務を行うのが一般的です。なかでも過払い金請求や債務整理を専門に扱う弁護士もいます。 一方、司法書士の中にも過払い金請求や司法書士を専門に行う事務所もありますが、金額や裁判での対応に制限があります。弁護士に依頼すれば過払い金を含め、あらゆる対応ができるため安心です。

借金のお悩みや過払い金があるかどうか知りたい場合は、弁護士に相談するのが一番の近道といえるでしょう。

自分が過払い金の対象か自分で確認する

過払い金が発生するかどうかは、利息制限法の上限金利を越えているかどうかで判断できます。そのためには、貸金業者から取引履歴を取り寄せ、引き直し計算をする必要があります。

この取引履歴には、今までの貸金業者とのお金のやり取りがすべて記載されてありますので、いついくら返済したかということから、払いすぎたお金を計算することができます。この作業を「過払い金の引き直し計算」とよびます。

もし、引き直し計算で過払い金があることがわかれば、借金を完済していても、借金を返済中でも過払い金請求をすることでお金を取り戻すことができます。

過払い金の引き直し計算や過払い金請求手続きは、自分で行うことも可能ですが、計算方法が複雑で計算を間違えるとお金を取り戻せなくなることもあります。また、借金を現在返済中かどうかなど、返済状況によってメリット・デメリットがあるので注意が必要です。

しかし、弁護士に依頼することで正確な金額がわかり、手続きがスムーズに進めることができます。さらに、弁護士に依頼することでより多くの過払い金を取り戻すことができるためおすすめです。

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自分で過払い金請求を行う方法

弁護士や司法書士に依頼しなくても、自分で過払い金請求を行うことは可能です。

しかし、弁護士や司法書士などに依頼しないとなれば、自分で貸金業者から取引履歴を取り寄せ、過払い金が発生しているか過払い金の引き直し計算をし、貸金業者と交渉をしなければなりません。

自分で過払い金請求をすると期間が長くかかり、複雑な引き直し計算には手間がかかります。もし、過払い金の引き直し計算を間違えると取り戻す金額が少なくなったり、取り戻すことができなくなったりする可能性があります。

そのため、自分で過払い金請求をする場合でも、過払い金請求が得意な弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

過払い金請求の流れ

過払い金請求は、どのように手続きが進むのかご紹介いたします。

  • 弁護士へ問い合わせ
  • 過払い金請求の契約書を締結
  • 貸金業者へ受任通知を送る
  • 過払い金の引き直し計算
  • 貸金業者との過払い金額の交渉
  • 過払い金返還

過払い金請求の手続きは自分で行うこともできますが、時間も手間もかかります。

しかし、弁護士に依頼することによって、過払い金請求の手続きをスムーズに進めることができます。過払い金請求に強い弁護士に依頼すれば、過払い金をより多く取り戻せる可能性があります。