過払い金

みなし弁済と過払い金請求の関係とは?

「みなし弁済」や「過払い金」「過払い金請求」など言葉、CMや広告などで聞いたことはありませんか?「過払い金請求」とは、借金返済の際に払いすぎていた分のお金を取り戻すための制度です。

近年多くの人が行っている過払い金請求は、以前多く行われていた「みなし弁済」と呼ばれる制度が原因となっています。

かつてより、お金を借りたことに対する利息は、利息制限法という法律で定められていました。法律で定められた利息を「法定利率」と呼びます。もちろん法律で定められた割合以上の利息を請求することは、法律的に考えれば無効となり、お金を借りる側の人は、求められたとしても支払う必要はありません。

ですが、かつてほとんどの貸金業者が堂々とそれ以上の利息を取っていました。法律で定められているより多く利息を取ることを、正当化するための制度がこのみなし弁済です。

みなし弁済とは?

前途の通り、みなし弁済とは、法律で定められた割合以上の利息を、合法的に取るための制度です。法律で定められた割合を超えているのに合法的であるというとなんだか違和感を覚えませんか?どのようにそんな矛盾を可能としていたのでしょう。

みなし弁済とは具体的にどういった制度のことを指すのでしょうか。みなし弁済は、所定の要件を満たした場合に、法律で決められた利息の割合(法定利率)を超えて請求した分の利息も、合法であると見なされる制度です。

みなし弁済が認められるための要件は5つあります。これらは旧賃金業法第43条で定められています。

みなし弁済の要件

みなし弁済の5つの要件は以下の通りです。

1.お金を貸した側の人が、「貸金業登録」という商売としてお金を貸すための登録を済ませていること。
→闇金などの違法な賃金業者ではないということが必要とされます。

2.お金を貸す際に、「17条書面」と呼ばれる書類を、お金を借りる側の人に渡したこと。
→「17条書面」とは契約書のことを指します。お金の貸し借りの契約の際、法律で定められたきちんとした契約書を交わすことが必要とされます。

3.その法定利率を超えた利息を、貸主が受け取った時、「18条書面」と呼ばれる書面を、借主に提出したこと
→「18条書面」とは、領収書のことです。上記2と同じく、利息を受けとった際に法律で定められたきちんとした領収書を渡すことが必要とされます。

4.お金を借りた側の人が、「利息の支払いである」と理解した上で、返済をしていたこと

5.お金を借りた側の人が、任意でその額を支払っていたこと
→強制的ではなく、借りる側の人が自らの意志で支払っていたことが必要とされます。

この5つをクリアした場合、法定利息を超えた利息を受け取っても問題がないとされていました。
実際これら5つの条件をクリアすることはかなり容易です。5つめの条件では、「任意でその額を支払っていたこと」とありますが、貸主側が貸す際に、「この金額は利息制限法の利率を超えています」とわかりやすく宣言する必要があるわけではありません。

ごく自然に利息制限法を超えた利息を載せて、請求し、お金を借りている人も請求されるがまま支払ってしまいます。こんな状況でも、決して強制したわけではないので、“任意に支払った”とみなされます。

みなし弁済の撤廃

お金の貸し借りの関係においては、お金を借りる側のほうが立場が弱くなります。
お金がなくて必要だから借りに来るのであって、「利息が高いから辞めておく」といえる余裕のある人はそもそも差し迫ってお金を借りる必要のない人だけでしょう。

賃金業法はそもそも、絶対的に立場が弱くなってしまう、お金を借りる側の人を守るために作られた法律でした。そのはずが、このみなし弁済制度により長年の間、高利貸しを容認していたのです。

平成18年にとある裁判で、とうとうみなし弁済をはっきりと否定する判決が出、それ以降みなし弁済制度は撤廃されました。そもそもお金を借りる側の人を守るための法律なので、当たり前といえば当たり前のことです。

みなし弁済と過払い金請求

平成18年までほとんどの賃金業者が行っていたこのみなし弁済という制度。これが現在の過払い金請求の原因となっています。過去にみなし弁済により余分に支払わされてしまっていた分のお金を過払い金と呼び、それを取り返す手続きを過払い金請求と呼びます。

平成18年にみなし弁済が違法であるという判決が出ましたが、その判決以前のみなし弁済も無効となりますので、過去の分までさかのぼって請求することが可能です。過去の分までさかのぼれると言っても、過払い金請求には時効があります。最後に借り入れを行った日から10年が経過すると、過払い金を請求できなくなってしまいますので気を付けましょう。