債務整理

債務整理費用が払えない場合の対処法は?それでも債務整理はすべき?

「債務整理を検討しているけど、債務整理費用を払えないかもしれない」と、債務整理を検討していても、費用面の不安からためらう方が多いです。

債務整理費用の不安から、自分で債務整理ができないか考える方もいるでしょう。確かに債務整理を弁護士や司法書士に依頼すると、依頼費用がかかります。

しかし、債務整理を個人でおこなうハードルはとても高く、現実的ではありません。

貸金業者と話し合いをする任意整理の場合、個人ではほとんど応じてもらえないでしょう。また、個人再生や自己破産は書類の作成や収集、裁判所への出頭など多くの手間がかかり、法律知識がない方でなければ難しいです。

債務整理は、弁護士などに依頼することをおすすめします。

そこで、本記事では「債務整理の費用相場」「債務整理費用を払えない場合の対処法」について解説していきます。

債務整理の費用目安は?

債務整理の費用は、依頼する事務所によって異なります。

債務整理を弁護士に依頼する場合、3つの費用がかかります。

  • 相談料
  • 着手金
  • 解決報酬金

ただし、報酬に関しては日本弁護士連合会によって規定が定められています。

a~cの報酬金以外の報酬金の受領は禁止されます。

上限規制(規程第12条~第16条、施行規則第2条~第4条)

具体的な上限は、以下のとおりです(いずれも消費税別)。

a.解決報酬金  1社あたり2万円以下が原則。商工ローンは5万円以下。

b.減額報酬金  減額分の10%以下。

c.過払金報酬金 訴訟によらない場合回収額の20%以下。 訴訟による場合回収額の25%以下。

(引用元:債務整理の弁護士報酬のルールについて|日本弁護士連合会

また、管理手数料や引き直し計算の計算手数料のような名目で、手数料をとることも禁止されています。

報酬金は、規定内であれば弁護士や司法書士が自由に設定でき、一律の基準はありません。

任意整理

任意整理にかかる費用は、着手金でおよそ2万円~5万円、報酬金として減額された借金の10%とすることが多いです。

まず、任意整理を行う際には、借金を見直し、過払い金が発生していないか調べます。

たとえば、借金が100万円あり、過払い金が50万発覚した場合、過払い金によって50万円の減額ができたと想定しましょう。

その場合、減額報酬金が10%だった場合、50万円の10%、つまり報酬金5万円です。

ただし、借金総額よりも過払い金による返還額が多かった場合、借金は相殺されます。

借金総額よりも過払い金による返還額が多い場合の一例

たとえば、借金が100万円あり、過払い金が150万円発生していた場合です。

150万円の過払い金が返還されれば、借金の100万円は相殺され、依頼者の手元に50万円残ります。

この場合、100万円減額できているので、100万円に対して10%、つまり10万円の減額報酬のみとする弁護士もいれば、「100万円の減額報酬10%+50万円の過払い金報酬20%」とする弁護士もいるのです。

報酬の定め方は弁護士によって異なるので、事前に費用に関して確認しておくと良いでしょう。

個人再生

個人再生でかかる費用は、おおよそ30万円~50万円+報酬金(かからない場合もある)です。

さらに、住宅資金特別条項(住宅ローン特別条項)を含める場合は、プラス10万円ほどかかります。

個人再生をすると、住宅ローンのある持ち家は手元に残せる可能性が低いです。

しかし、住宅資金特別条項(住宅ローン特別条項)を利用することで住宅ローンだけを除外して個人再生できます。

住宅ローンの残っている持ち家の場合、住宅資金特別条項(住宅ローン特別条項)を含めた金額で考えておいた方が良いでしょう。

報酬金は、減額された金額の10%~20%とされている場合が多く、過払い金を取り戻せた場合、過払い金報酬として大体20%ほどです。

さらに、個人再生に関するさまざまな手続きを行ってくれる、「個人再生委員」が選定された場合には、予納金として15万円~かかります。

予納金というのは、裁判をするにあたり、手続き費用として裁判所に納めるものです。

原則15万円からとなっており、事案によって異なります。

個人再生委員を選任するかどうかは裁判所の判断によるため、すべての個人再生において個人再生委員が必要になるわけではありません。

自己破産

自己破産は着手金と報酬金合わせて、おおよそ目安30万円~50万円です。

自己破産では、すべての借金が免除となるので、任意整理や個人再生のように、減額報酬ではありません。

また、破産手続きにおける債権者への配当、免責判断の調査を専門とする、「破産管財人」が選定されると、予納金として20万円~50万円ほどかかります。

以下のケースに当てはまると、破産管財人を選任される場合があります。

  • 換価可能な一定の財産があり、債権者への配当が可能と考えられる(財産型調査)
  • 財産がない場合、財産の隠匿や浪費等の一定の理由によって免責ができない事情があるのではないかを調査するとき(免責調査型)

しかし、破産管財人を選任する必要がなかったり、免責調査が不要と考えられたりした場合には、破産管財人を選任することなく、破産手続き開始と同時に破産手続き開始と同時に破産手続きを終了させます(同時廃止といいます)。

弁護士に依頼した場合はどのくらいお金がかかるのか

弁護士に債務整理を依頼すると、3つの費用がかかります。

  • 相談料
  • 着手金
  • 解決報酬金

手数料という名目で費用を請求するのは禁止となっており、「相談料」「着手金」「解決報酬金」以外はかかりません。

しかし、相談料や着手金は、弁護士などが自由に設定できる部分なので、相談する弁護士によって費用は異なります。

ただ、大体の費用相場は決まっています。

下記で、それぞれの費用の意味や費用目安を解説するので、弁護士へ債務整理を依頼する際の参考にしてください。

相談料

弁護士に債務整理を相談すると、30分5000円に設定していることが多いです。

法律相談は1時間以上かかることがあるので、大体1万円位を考えておくと良いでしょう。

ただし相談料に上限は設けられていないので、30分5000円以上の弁護士もいます。

また、近年では「相談料無料」としている弁護士もいるので、費用をできるだけ安く抑えたいのであれば、相談料無料の弁護士に相談しましょう。

そして、自治体や国の機関を使って弁護士に相談すれば、ほとんどの場合相談料は無料です。

下記で詳しく解説しますが、国によって設立された相談窓口「法テラス」などが代表的な例でしょう。とにかく相談だけしてみたい場合は、「法テラス」の活用も検討してみてください。

着手金

着手金は弁護士と契約した際に払う費用です。“弁護士が案件に着手する”ので、「着手金」となります。

任意整理や過払い金請求は、会社それぞれと話し合いをするので、1社あたり〇円と決めていることが多いです。

着手金の費用相場は以下の通りです。

手続きの種類 費用の相場
任意整理 2万円~5万円(1社あたり)
個人再生 20万円~30万円
自己破産 20万円~30万円

個人再生と自己破産は一律となっていますが、債権者があまりにも多い場合、追加で報酬を請求される可能性があります。

着手金は上限が設定されていないので、弁護士によってさまざまです。

あくまで”着手する費用”なので、着手金は結果に関係なく必ず発生します。

たとえば、任意整理で交渉に失敗した場合でも、着手金はかかります。何かしらの原因で弁護士が途中で解任した場合も、着手金は戻ってきません。

解決報酬金

解決報酬金は、名前の通り解決した際に弁護士に支払う費用です。

解決報酬金とは

任意整理や個人再生の場合「減額報酬金」、過払い金請求の場合「過払い金報酬」と呼ばれていますが、これらはすべて「解決報酬金」に含まれます。

解決報酬金の費用相場は以下の通りです。

手続きの種類 費用の相場
任意整理 減額された金額の10%
個人再生 減額された金額の10%~20%
自己破産 回収金額の20%

解決報酬金は、日本弁護士連合会によって上限が定められているため、規定以上の報酬を設定することはできません。

a.解決報酬金  1社あたり2万円以下が原則。商工ローンは5万円以下。

b.減額報酬金  減額分の10%以下。

c.過払金報酬金 訴訟によらない場合回収額の20%以下。 訴訟による場合回収額の25%以下。

※破産事件、民事再生事件などは報酬規制の対象外です。

(引用元:債務整理の弁護士報酬のルールについて|日本弁護士連合会

弁護士への債務整理費用を払えない場合の対処法

弁護士への債務整理費用が払えない場合、いくつかの対処法があります。そもそも債務整理は、借金で生活が苦しくなっている人を救うための制度ともいえます。

債務整理の費用で、さらに生活を圧迫したり、費用面が不安で債務整理を依頼できなかったりするのは本末転倒です。

また、支払い方法を「分割」や「後払い」など、対応している弁護士もいます。

「債務整理の費用が払えない」と悩んでいるなら、以下の方法を利用してみましょう。

債務整理費用をすべて無料になるわけではありませんが、債務整理費用の負担は減らせます。

分割払いを相談

債務整理の費用を分割払いで対応してくれる弁護士は多いです。

実際に任意整理の交渉をしたり、個人再生・自己破産の申し立てを行うのは分割払いが終わった後になりますが、貸金業者へ受任通知は送られるので、督促は止まり、返済はストップします。

多重債務に追われている方としては、督促が止まるだけでもメリットになるでしょう。

また、返済をストップした分、弁護士への支払いに回せます。

「分割払い可能」と大々的にしている弁護士もいれば、「大々的にはしていないけど、分割払いの相談に応じられる」という弁護士もいるので、まず検討している弁護士に相談してみましょう。

後払いを相談

債務整理の依頼費用を、後払い対応している弁護士もいます。

先払いで支払えない方や、「今すぐは支払えないけど数か月後には支払える」という方は、後払いを相談してみましょう。

しかし、債務整理の手続きが終わったからといって、債務整理費用を一括で支払えるか不安な方もいますよね。

そんな場合は、後払いにするだけではなく、分割+後払いも相談可能です。

月額支払い額の引き下げの相談

債務整理費用を分割後払いにしても、急な出費で費用を支払えなくなることがあるかもしれません。

急な病気や仕事の都合などで、支払いが厳しくなる方もいます。

もし毎月の支払いが厳しくなった場合は、月額支払い額の引き下げを相談してみましょう。

事情を話せば、考慮して応じてくれる可能性はあります。

もし支払いが厳しくなっても、突然音信不通になったり、連絡なく滞納することだけはしないでください。

連絡なく滞納すると、弁護士は辞任するしかありません。

弁護士が辞任してしまうと、再度貸金業者からの督促が始まるので、必ず一度連絡をいれましょう。

着手金無料の弁護士を探す

少しでも債務整理の依頼費用を抑えたいなら、着手金無料の弁護士を探しましょう。

「着手金無料」または「完全成功報酬制」としている弁護士もいます。

「着手金無料なんて信用していいの?」と思うかもしれませんが、債務整理を検討している人は「生活に困っている人」が多いです。そのため、相談料無料や着手金無料としている事務所が数多くあるのです。

「債務整理したいけど、今すぐ費用が準備できない」というような場合は、着手金無料の弁護士に相談してみると良いでしょう。

過払い金で相殺

債務整理をする際に、過払い金があれば過払い金請求を行います。

借金と過払い金の両方がある場合は、、借金と相殺します。

借金よりも過払い金が多い場合は、手元にお金が戻ってくるので、債務整理をする必要がなくなります。

法テラスを利用する

法テラスは、債務整理や過払い金請求に関する相談ができます。

法テラスでできることは、主に3つあります。

(引用元:民事法律扶助業務|法テラス
  • 代理援助
  • 法律相談
  • 書類作成援助

法テラスでは、1回あたり30分弁護士などの専門家に相談できます。

通常弁護士など専門家への相談料は30分5000円~と設定されている場合が多いので、無料で相談できるだけでも大きいメリットです。

さらに、法テラスでは弁護士費用の立て替えが可能です。

(引用元:民事法律扶助業務|法テラス

ただし、立て替えには一定の条件を満たしていなければいけません。

(引用元:民事法律扶助業務|法テラス
  • 資力が一定額以下(月収が一定額以下・保有資産が一定額以下)
  • 勝訴の見込みがないとはいえないこと
  • 民事法律扶助の趣旨に適すること

一定の条件はあるものの、条件を満たせば費用を立て替えてくれます。債務整理費用が不安な方は、一度法テラスに相談してみましょう。

借金問題を無料で相談する場合は?

債務整理を依頼する前に、借金問題のみを誰かに相談したい方もいるでしょう。借金問題は、身内に相談しにくい悩みです。

とはいえ、いきなり弁護士などの専門家に相談するのは「敷居が高い」と感じる方もいるのではないでしょうか。

まず一度気軽に借金問題を相談するのであれば、無料相談を活用してみてください。

自治体無料相談

お住まいの各自治体で、地域の弁護士を招いた無料法律相談を行うことがあります。

「いきなり弁護士事務所に直接相談するのは敷居が高い」と感じる方は、まず自治体の法律相談に参加してみましょう。

ただし、法律相談は定期的に開催されているわけではないので、各自治体の公式サイトや広報誌を確認してください。

相談時間は大体30分前後です。債務整理するべきかどうか、弁護士と相談してみましょう。

消費生活センター

消費生活センターは、多重債務などのトラブルを専門的に受け付けているサービスです。

気軽に相談できる「消費者ホットライン」があるので、まずは電話で相談してみましょう。相談料は発生しませんが、窓口へつなぐ場合は、ナビダイヤル通話料が発生します。

また、相談日や相談時間を事前に連絡していれば、直接訪問しての相談も可能です。

債務整理など法的な手続きが必要な場合は、弁護士を紹介してもらえます。

消費者ホットラインの他、各都道府県別に消費生活センターや窓口があるので、お住まいの地域の消費生活センターに連絡しましょう。

生活支援相談所

生活支援相談所は、各区や市の生活に関する相談窓口です。

主に以下のような相談を受け付けています。

(引用元:暮らしに役立つ情報|政府広報オンライン
  • 生活に困っている
  • 住む場所がない
  • 家計が厳しい
  • 失業して支払いができない
  • 仕事が見つからない

お金だけではなく、生活のありとあらゆる相談にのってくれる機関です。お金の相談に関しては、家計の立て直しを支援員が助言してくれます。

状況に応じた支援計画の作成や相談支援、関係機関への連絡などサポートしてくれるので、債務整理前に一度相談してみると良いでしょう。

各地域ごとに窓口があるので、お住まいの地域のの生活支援窓口を検索してください。

債務整理費用の支払いが難しい場合は弁護士に相談

債務整理の費用が払えないとお悩みなら、まず一度弁護士に相談するのをおすすめします。

支払い方法は必ずしも一択とは限らないので、負担の少ない支払い方法にしてもらえる可能性があります。

また、過払い金が発生していた場合、返還された過払い金から債務整理費用を支払える可能性があるので、過払い金の相談もしてみましょう。

債務整理費用に利息はない

弁護士への債務整理費用を分割や後払いにした場合、基本的に利息は発生しません。

分割や後払いでも、決まった金額を支払えば問題ありません。

とはいえ、「分割払いにしてしまっては、借金を抱えているときと同じ」と考える方もいるでしょう。

しかし、借金やクレジットカードは利息がつき、結果的に本来借り入れした額より多く払わなければいけません。

弁護士への依頼費用に利息はつかないので、借金と比較すると、負担の差は明らかです。

債務整理費用は相談可能

弁護士への債務整理費用は、相談できます。

必ずしも前払い一括でなければいけない決まりはありません。

どんな支払い方法に対応してくれるかは、弁護士によって異なりますが、ほとんどの弁護士は相談にのってくれます。

大々的に「分割対応」や「後払い対応」と記載されていない弁護士でも、一度相談してみてください。

おわりに

「弁護士への債務整理費用を払えないから債務整理できない」と考えていませんか?確かに弁護士に依頼すれば、その分費用はかかります。

しかし、今ある借金は利息もかかっているので、将来的に見れば、債務整理費用を払ってでも債務整理した方が負担が少なくなるでしょう。また、多くの過払い金が発覚した場合、手元にお金を残せる可能性があるので、そこから債務整理費用に充てることもできます。