過払い金

過払い金請求を依頼する弁護士・司法書士を選ぶ失敗しないポイント

過払い金請求を弁護士・司法書士に依頼しようとした際に最初に悩むのは、誰に頼んだらよいかということでしょう。だれしも「どうせ頼むのなら腕のいい弁護士・司法書士に頼みたい」と思うはずです。そこで、今回は、腕のいい弁護士・司法書士を見分けるポイントについてお伝えします。

消費者金融業者が嫌がる弁護士・司法書士にこそ依頼すべきです

過払い金請求の相手方は消費者金融業者やクレジット会社です。そのため、消費者金融業者やクレジット会社が「この弁護士・司法書士に依頼されたら困る」と考えている弁護士・司法書士こそが依頼すべき弁護士・司法書士ということになります。

消費者金融業者やクレジット会社は、弁護士・司法書士との交渉経過をすべて記録しており、弁護士・司法書士ごとのデータベースを作成しています。事務所ごとではなく弁護士・司法書士ごとですので、弁護士・司法書士が事務所を移動したとしても、前の事務所でどのような活動をしていたかも含め、すべてが分かるようになっています。

では、消費者金融業者やクレジットカード会社は、どのような弁護士・司法書士をもっとも嫌がるのでしょうか。ひとことで言えば、もっとも嫌がられるのは、過払い金を確実に1円残らずむしりとる弁護士・司法書士です。とはいえ、イメージがわかないでしょうから、具体的な例を挙げてみましょう。

こんな弁護士・司法書士には依頼してはいけない

(1)事務員に丸投げする弁護士・司法書士

もっとも依頼してはならないのは、事務員に丸投げする弁護士・司法書士です。そんな弁護士・司法書士なんているのかと思うでしょう。いるんです。しかも、珍しくありません。過払い金請求事件の処理手順は、大まかに言えば、依頼を受けた旨の通知書の作成・送付、最初から最後までの完全にそろった取引履歴の入手交渉、取引履歴の再計算、過払い金請求の訴状の作成、和解書の作成・送付に分解できます。

事務員に丸投げしてはならないといっても、単純な事務作業まで弁護士・司法書士がやる必要はありません。問題なのは、過払い金の返還交渉まで事務員に丸投げしてしまう弁護士・司法書士がいるということです。

消費者業者やクレジット会社がなぜ弁護士・司法書士と和解するのかと言えば、その理由はひとつしかありません。すなわち、「今和解に応じなければ、あとでもっとひどいことになる」と思うからです。弁護士・司法書士の唯一にして最大の武器は、いつでも簡単に法的手続に移行できることであり、最終的には勝訴判決を得て強制執行できることです。

しかし、事務員では能力も権限もないことから、その武器を有効に使って交渉することはできません。したがって、事務員に丸投げすると、一般に、回収できる過払い金の金額は減り、解決までの時間が長引きます。

(2)過払い金を着服する弁護士・司法書士

依頼者のお金を着服する弁護士・司法書士は、残念ですがたまにいます。ばれると直ちに逮捕されますが、法律を知っている弁護士・司法書士が犯罪を犯すわけですから、ばれないように工夫しますので、そう簡単にはばれません。

着服がばれるきっかけは、大抵は事件放置です。依頼者が事件の進捗状況を何度確認してもはっきりしたことは教えてもらえず(進捗状況を依頼者に詳しく教えてしまうと着服がばれてしまうからです)、弁護士・司法書との直接の面談を何度希望しても事務職員しか出てこず、困った依頼者が弁護士会や司法書士会に相談し、弁護士会や司法書士会の担当役員が事実調査に乗り出して初めて発覚します。

弁護士会や司法書士会の担当役員が事実調査をするとはいっても強制調査権はありませんので、事態を把握するまでにかなりの時間が掛かります。そのため、発覚した時には既にたくさんの被害者が発生しており、返金は極めて困難という状況になっていることがほとんどです。

弁護士・司法書士はどうやって探したらよいか

知り合いに紹介してもらうことができれば、紹介してもらった方が良いでしょう。知人が弁護士・司法書士にとって重要度が高ければ高いほど(顧問弁護士を持っている知人がいれば最高です)一生懸命仕事をしてくれるでしょうし、知人が紹介してくれた弁護士・司法書士が過払い金請求について専門外であってもだれか別の詳しい弁護士・司法書士を紹介してくれます。

とはいえ、弁護士・司法書士を紹介してもらうためには消費者金融業者から借金をしたことを知人に伝えなければなりません。また、知人に紹介してもらう以上、相談限りで終わりにすると知人の顔をつぶすことになることから、そのまま依頼しなければならなくなります。

したがって、弁護士・司法書士を紹介してくれる知人がいたとしても、紹介してもらうかどうかについては慎重に判断すべきですが、一般的には、紹介者がいた方が弁護士・司法書士は頑張ってくれるでしょう。これに対し、弁護士・司法書士を紹介してくれる知人などいない人は、弁護士会に相談すれば弁護士会館の法律相談の予約を入れてくれます。

依頼すべき弁護士・司法書士かどうかはこうすれば確実に判断できます

弁護士・司法書士の相談を入れたとして、そこからが勝負です。依頼すべき弁護士・司法書士なのかを30分の相談時間の間に判断しなければならないからです。そもそも、どれほど有能な弁護士・司法書士であっても、取引履歴を入手して再計算してみなければ、過払い金が発生するのか、発生するとして幾らかを確実に判断することはできません。

内心では「大体2,30万円程度だな」と思っても、その予測は借入れ及び返済の状況によっては大きく外れる可能性があり、そうなると依頼者ともめるおそれがあるため、口に出すことはありませんし、もし具体的な金額を口に出す弁護士・司法書士であればうかつといわざるを得ず、依頼するかどうかを考え直した方が良いでしょう。

そこで、自力でできる限りの取引履歴を入手し、ネットで入手できる無料の計算ソフトを使って自力で再計算し、取引履歴と再計算書を持参すべきです。その上で、こう尋ねてください。「先生、回収できる金額とそれに掛かる時間を教えてください」と。

再計算書を見れば、こちらに法律的な弱点があるのかどうか、あるとしてそれは回収額と回収までの時間にどの程度影響するのかをある程度の確実さで予測することができます。具体的には、その弁護士・司法書士が依頼すべき弁護士・司法書士であれば、取引履歴の入手までの時間、提訴までの時間、裁判で和解がまとまる確率、判決が出るまでの時間、地裁判決の見通し、控訴される可能性、控訴判決の見通しについて、消費者金融業者やクレジット会社ごとに具体的な数字を挙げて説明してくれるはずです。

もしその弁護士・司法書士が事務員任せにしているのであれば、各社ごとの具体的な数字など答えられないでしょうし、再計算書を持参することで、こちらが幾らの過払い金が発生するかを把握しているということを伝えることができるため、着服のリスクを激減させることができます。

そんなの面倒くさいよと思った人は、もう運を天に任せるしかありません。幾ら質問をしても、再計算書がない限り、具体的な回答はできず、抽象的な一般論に終始されるでしょう。なお、最後に、依頼料が最終的に幾らになるかをあいまいにする弁護士・司法書士は、どれほど愛想がよく立派なことを言われても依頼してはいけません。

人間性は最終的には金に対する態度にあらわれますので、依頼料について、こちらから確認しなくても自ら進んでこれ以上ないほど詳しく説明してくれる弁護士・司法書士を選ぶべきです。