近年多くの人が利用している過払い金請求という手続き。借金返済の際に、多くとられすぎていた利子を返してもらえるという制度であることは、なんとなくご存知の方が多いでしょう。
ですがこの過払い金請求という手続き、場合によっては支払った分以上のお金を返してもらえることがあるのをご存知でしょうか?
実は、この過払い金とは、そもそも法律的に支払う必要のなかった分のお金を、貸金業者側がだまして得ていたということなので、貸金業者側がその余分な分のお金を不当に得た瞬間から、それが元の持ち主に返還されるまでの期間に利子をつけることが可能なのです。
ですがこれは常に適応されるわけではなく、裁判になった場合に、悪意の受益者であるか否かが争点となります。
過払い金請求を行う前に、利子をつけて請求できるのかどうかを一度確認してみましょう。
過払い金はなぜ利息付きで請求できるのか?
過払い金とは、もともと払いすぎていた利子のことを指します。その利子を返してもらう際に、さらにその過去の払いすぎていた利子分のお金にまた利子をつけることができると聞くと、なんだか複雑でよくわかりませんよね。
過払い金を返還してもらう際に利子をつけることができるのはどういった法律が裏付けとなっているのでしょうか。
これは、そもそもの過払い金請求をしてよいという法律的な根拠に当たるのが、不当利益返還請求になることが根拠となります。
不当利得返還請求とは?
まず不当利益返還請求権を簡単に説明します。民法第 703条では、「法律上の原因無く他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼしたものは、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う」と規定しています。
分かりやすく言うと、何の法律上の根拠(法律が認める正当な理由)もなく人から利益を得た(過払い金請求においては、法律の裏付けなく多めの利子をとっていた)人は、その得た利益(過払い金請求の場合は、とりすぎていた利息分のお金)を、元の持ち主(過払い金請求の場合、お金を借りた側の人)に返さなくてはいけないという意味です。
悪意の受益者とは?
そして民法704条では、「悪意の受益者はその受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合においてなお損害があるときは、その賠償の責任を負う」と規定しています。
ここで言う「悪意の受益者」とは、一般的によく使われる意味の「悪意」という意味ではなく、「法律的に根拠がないことを知りながら、その利益を受けていた人」を指します。要は借金返済の際に本来20パーセント以上の利息を受け取ってはいけないこと、29.2パーセントの利率をとることが法律上根拠がないということを知っていたうえで、その利息分のお金を受け取っていた場合、受け取った側の人が、「悪意の受益者」であるとみなされます。
過払い金を利息付きで返還してもらえるかどうかは貸金業者の状況などによる
このように、お金を貸した側の人が、悪意の受益者であると判断されるとき、利息をつけて返還を求めることは、法律の根拠があり、理論上は可能となります。ですが実際、利息をつけて返還してもらうことは容易ではなく、多いケースではありません。
昨今の過払い金請求ブームのため、過去の過払い金の返還に追われて、営業不振となってしまっている貸金業者がとても多いことがその原因の一つとして挙げられます。営業不振程度なら過払い金を請求することは可能ですが、もし倒産してしまったら、過払い金を返還してもらうことすらできなくなってしまうのです。
このように、過払い金を満額返還してもらうことすら難しいケースがとても多い中、満額にさらに利息をつけて回収することはなかなか難しいのが実情です。さらに、利息をつけて請求をする場合は、裁判をすることが前提となっています。
通常の過払い金請求の場合、裁判を行わないため、比較的短い時間、そして簡単な手続きで進めることができますが、裁判となるとそうはいきません。手続きも複雑になり、もちろん時間も長くかかってしまいます。
ですが、もちろん理論上、利子をつけての返還を請求することは可能です。貸金業者にもよりますが、実際に利子をつけて返還することが可能な場合もあります。
過払い金請求をする際には、利息を付けた返還を請求することが可能かどうかを、弁護士や司法書士などの専門家に相談してみましょう。とられすぎていた分のお金だけではなく、プラスアルファでお金が返ってくるかもしれません。