過払い金とは「グレーゾーン金利」と呼ばれていた、利息制限法が定める上限金利を超える金利をとっていた貸金業者がいたために発生した「払いすぎた利息」のことです。
その過払い金を返還させる請求をすることができ、多くの方が不当に払いすぎた利息を取り戻しています。
しかしなぜ、貸金業者は利息制限法を超える金利をとる「違法行為」が、以前は普通にまかり通っていたのでしょうか。今回は、過払い金請求をする上で重要なポイントになるこの「利息制限法」とはどういうものなのかについて触れて、グレーゾーン金利が発生した訳と、今の貸金業に関わるこの法律の変化について説明して参ります。
利息制限法とは
利息制限法とは,1954年に成立した法律で、貸金業者による暴利や貸主による搾取から弱い立場である消費者を保護するために,金銭消費貸借における利息や、遅延損害金の利率を一定限度に制限する法律です。
ちょっと堅苦しい表現なのでかみ砕いて説明すると、金銭消費貸借とは、すごく簡単にいえばお金を借りる事で、利息制限法は,借金の利息を制限する法律。そしてそれは、
元本額が10万円未満の借金 → 年率20%まで
元本額が100万円未満の借金 → 年率18%まで
元本額が100万円以上の借金 → 年率15%まで
以上のように決められています。
利息制限法は遅延損害金の制限もしている
利息制限法は,借金の遅延損害金、つまり返済が遅れたことによって貸金業者が被った、「損害」に対して請求できる慰謝料のようなものについても制限をしています。
遅延損害金は,上記の利息の制限の1,46倍までに制限されることが定められていて、具体的に説明すると、
元本額が10万円未満の借金 → 年率29,2%まで
元本額が100万円未満の借金 → 年率26,78%まで
元本額が100万円以上の借金 → 年率21,9%まで
となります。
過払い金と利息制限法の関係、「グレーゾーン金利」が生まれた訳とは
実はこの利息制限法には刑罰や行政罰の規定はありません。したがって,例え貸金業者がこの利息制限法に違反する金利を消費者に課していたとしても、刑事的・行政的な法的責任が生ずることはないのです。
一方、同じく貸金業に関わる法律に「出資法」というものがあり、こちらでも貸し付けの際、貸金業者が消費者に課すことのできる上限金利が定められています。
こちらは全てのケースでその上限を、「年率29,2%」としていて、利息制限法との利率の差が生まれていましたが、この出資法は違反した場合には,利息制限法と異なり、厳しい刑事罰や行政罰を受ける規定が明記されています。
つまり貸金業者は法律違反ではあるが、たいした罰則のない規則制限法を「無視」し、自らに大きな利益をもたらす利息29,2%ギリギリの利息を設定していたわけです。
刑事罰まで課せられる可能性のある、出資法だけを守っていたわけで、この状態は1980年代からずっと「暗黙の了解」のように業界内に浸透し、小さな町の金融業者だけでなく、テレビCMをバンバン流していた武富士やアイフル、アコムなど大手消費者金融も大きな顔でこの法律違反を続けていました。
これがグレーゾーン金利により消費者が苦しんだ原因で、多くの方が今現在、過払い金として請求したり、債務整理の原資として貸金業者に対していまだに残る借金との相殺を求めているわけです。
また、これは返済がスムーズにいかず長い間延滞や返済を繰り返し、「遅延損害金」が発生している場合でも、利息制限法を上回る分は「過払い金」と解釈して、同じように返還を請求できます。
利息制限法の今と他の法整備について
大きな問題を引き起こした原因となったこのグレーゾーン金利を無くすため、利息制限法、出資法の間に金利の差が出ないように、低い金利がわに合わせて出資法の上限利率を「年率20%」に法律が改正、2010年から完全施行されています。
そのため貸金業者は軒並み金利を下げ、過払い金の原因だった「グレーゾーン金利」という、実はグレーでもなんでもない、単なる法律を違反する高すぎる金利は、完全にその姿を消しました。また、合わせて上記で述べた「遅延損害金」に関しても、その上限は「20%」に引き下げ。
そのため、2010年以降に借金をして返済している、または完済した方に過払い金が発生することはありません。
また、同じく行政・刑事罰が発生する、貸金業者の登録制度や返済催促への厳しい規定を定めた「貸金業規制法」も、より強固な効力で消費者の保護を図った、「貸金業法」に2007年改正されています。
今回は以前の利息制限法には抜け道があり、それが過払い金の発生に大きく関わっていることについて説明してきました。
今は利息制限法・出資法・貸金業法が改正され、「グレーゾーン金利と新たな過払い金」はその姿を消しましたが、過払い金の請求期限つまり時効は最終取引日から10年と、まだ過払い金請求ができる方が残っている可能性もあります。
まだ、過払い金請求を「過去の事」と考えるのは早すぎ、自分の借金のなかに過払い金が発生していないか、もう一度良く確認しておくことも大切なのではないでしょうか。