過払い金請求をしたいけど、過払い金の計算方法についてわからず困っていませんか?過払い金の計算方法がわかれば、自分で過払い金の計算が可能です。
とはいえ、自分で過払い金の計算をおこなうとなるとどう対応していいか不安ではないでしょうか。
この記事では、
- 過払い金のしくみ
- 過払い金の引き直し計算の方法・手順
- 過払い金請求を司法書士や弁護士に依頼すべき理由
など、過払い金の計算方法と弁護士に依頼するメリットについて解説します。
過払い金の計算をする前に過払い金のしくみについて知っておく
過払い金の計算をする前に過払い金請求の目的や過払い金の仕組みについて知っておきましょう。
そもそも過払い金請求とは何の目的で行うものなのでしょうか?
過払い金請求は支払いすぎた利息を取り戻すために行う
過払い金請求は、支払いすぎた利息を取り戻すために行います。ただし、すべて借金に対して過払い金が発生しているわけではありません。
では、過払い金請求を行うためには、どのような条件を満たしていなければならないのでしょうか?
過払い金請求を行うためには、以下の2つの条件を満たす必要があります。
- 利息制限法で定められる年利15%〜年利20%を超える金利でお金を借りていた
- 最後の取引終了日から10年が経過していない
そもそも現在の利息制限法では、借金をした金額により上限金利が以下のように定められています。
借金額 | 上限金利 |
---|---|
10万円未満 | 20.0% |
10万円以上100万円未満 | 18.0% |
100万円以上 | 15.0% |
平成19年頃までは、多くの消費者金融やクレジットカード会社が出資法(上限金利29.2%)を超えない範囲でお金を貸していました。
そのため、利息制限法を超えた金利でお金を貸している業者が多く存在していました。
しかし、平成18年1月13日の最高裁判決以降、利息制限法に定められた金利を超えて取っていた利息を、取り戻せるようになったのです。
その結果、多くの方が支払いすぎた利息を取り戻すために、過払い金請求を行うようになりました。
過払い金の計算は支払いすぎた利息金額を知るために行う
過払い金請求をするためには、過払い金の金額がわからなければ請求できません。そのため、過払い金請求をする前に過払い金の計算を行い、支払いすぎた利息を計算する必要があります。
この支払いすぎた利息の計算を過払い金の引き直し計算と呼びます。過払い金の引き直し計算は、正確に行わなければなりません。
実際の過払い金よりも少ない金額で請求 | 取り戻せる過払い金が少なくなる |
---|---|
実際の過払い金よりも多い金額で請求 | 金融機関などの債権者から過払い金請求を断られる |
過払い金を間違えて計算した場合、取り戻せる過払い金が少なくなったり、過払い金請求を断られたりするリスクがあるので注意が必要です。
過払い金の引き直し計算の方法を解説!
過払い金請求を行うためには、過払い金がどのぐらいあるのかを計算しなければなりません。
では、実際にどのような手順で計算を行うのでしょうか?
過払い金の引き直し計算をするためには取引履歴が必要
過払い金の引き直し計算をする際に必要なものが、取引履歴です。
ただ、消費者金融やクレジットカード会社との明細書や契約書がどこにあるのかわからないという方もいるのではないでしょうか?
そこで、消費者金融やカード会社に対して、取引履歴の開示を求めます。ただし、取引履歴が届けば安心というわけではありません。
消費者金融の取引履歴 | ・法定利率で計算されていない ・契約条件についても記載がある |
---|---|
クレジットカード会社の取引履歴 | ・法定利率で計算 ・過払い金の利息については記載されておらず、契約条件はわからない ・毎月の利用明細書をそのまま送ってくる |
消費者金融に対して取引履歴の開示を求めると、法定利率で計算されていない取引履歴が送られてくることが多いです。
そのため、自分で過払い金の引き直し計算をしなければなりません。
一方、クレジットカード会社の場合は、法定利率で計算された取引履歴が送られてきますが、過払い金の利息や契約条件については記載されていないことが多いです。
なかには、毎月の利用明細書しか送らないカード会社もあります。このように金融機関など債権者により取引履歴の内容は異なります。
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支払いすぎた利息を法定金利内の利息に直して計算する
取引履歴を取り寄せたら、取引履歴の情報をもとに、実際に支払っていた利息を利息制限法の上限で支払った場合に直して利息を計算します。
そして、実際に支払いすぎた利息から利息制限法で支払った場合の利息を引けば、支払いすぎた過払い金が判明するのです。
過払い金の引き直し計算の計算式
過払い金の引き直し計算では、以下の2つを計算して求めます。
- 利息制限法の金利を適用した場合の利息
- 利息制限法の金利を超えて支払った場合の利息
過払い金の引き直し計算を手作業で行う手順は以下のように、1年間、1日あたり、1ヶ月という順番で利息を計算していきます。
たとえば、借りたお金が300万円、金利が25.0%で借りた場合で1ヶ月の過払い金を求めるときは以下のように計算します。
利息制限法の金利で支払った金額 | 実際に支払った金額 |
---|---|
300万円×15.0%=45万円 | 300万円×25.0%=75万円 |
45万円÷365日=1232円 | 75万円÷365日=2054円 |
1232円×30日=3万6960円 | 2054円X30日=6万1620円 |
- ①1年間の利息を計算
- ②1日あたりの利息を出す
※小数点以下切り捨て - ③1ヶ月分の利息を計算
- ④借金額から利息額を引いた上で2ヶ月目以降の利息を計算する
今回のケースでは、6万1620円から3万6960円を引いた2万4660円が1ヶ月分の過払い金です。
ただし、借金の返済をすれば、毎月の借金額は減ります。さらにこの作業を1ヶ月ずつ地道に続けるのは手間や時間がかかるでしょう。
そこで、ネット上に公開されている過払い金計算ソフトを利用します。
- 名古屋式
- 外山式
たとえば、名古屋式の計算ソフトを使う場合、Excelに以下の情報を入力する欄があるので、各情報を1ヶ月分ずつ入力して、過払い金額を計算します。
- 借金を返済した日
- 借入金額
- 返済金額
- 利率
- 日数
- 利息
- 未払利息
- 残った元金
- 過払い利息
- 過払い利息残額
過払い金請求を自分で計算する場合は、このように計算ソフトを利用すると良いです。
過払い金請求を行う際の注意点
過払い金請求を行う際の注意点について解説します。自分で過払い金計算をする予定の方は事前に把握しておきましょう。
- ネットの過払い金計算ソフトは、あくまでも概算
- 同じ業者で何度もお金を借りると、計算が複雑になる
- 古い履歴を取り寄せられない場合は、取引期間や返済額を推測して計算する
- 返済が遅れたときは、遅延損害金分の利息も戻ってくる可能性がある
1.ネットの過払い金計算ソフトはあくまでも概算
自分で過払い金の計算をする場合、ネット上にある過払い金計算ソフトを使用して計算を行います。
しかし、以下のようなケースに当てはまる場合、正確な過払い金を計算できないことがあります。
- 過去に遅延損害金が発生している
- 一度完済したが、同じ業者から再度お金を借りた
ネットの過払い金計算ソフトを使用すれば、100%正確な過払い金が算出できるとは限らないのです。
このような場合は、自分で計算するよりも、弁護士や司法書士に依頼した方が、より確実に計算できます。
2.同じ業者で何度もお金を借りると、計算が複雑になる
同じ業者で何度もお金を借りると、計算が複雑になります。たとえば、一度借金の返済が終了した後に、再度お金を借りたケースです。
計算が複雑になる理由は、契約書の状況によりどちらを時効の数え始める日にするかにより、時効の成立時期にずれが発生するからです。
契約書の状況 | 時効が成立して過払い金請求ができなくなる日 |
---|---|
1回目と2回目の取引が別々の契約 | 1回目の完済日から10年後 |
1回目と2回目の取引が一緒の契約 | 2回目の取引終了日から10年後 |
複数回の契約がある場合、それぞれの過払い金を計算しなければなりません。1回目と2回目の取引が別々の契約の場合、個別に過払い金を計算します。
しかし、1回目と2回目の取引が一緒の契約であると認められた場合、1回目の過払い金額を2回目の元金に充てられるため、より多くの過払い金を取り戻せる可能性が高いです。
ただ、複数の契約がある場合の過払い金計算は複雑です。
そのため、自分で過払い金を計算しようとすると苦労します。
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3.古い履歴を取り寄せられない場合は推測計算をする
借金をした消費者金融やクレジットカード会社のなかには、すべての期間の取引履歴を送ってくれない業者もあります。
- 取引履歴の保存期間が決まっているため、古い履歴から廃棄している
- 業者側で意図的に途中からの取引履歴を開示していない
ただ、古い履歴がなくても過払い金請求は可能です。まずは以下の書類が見つかれば、取引の証拠金として利用できます。
- 契約書
- 明細書
- 通帳の引き落とし記録
もし明細書や通帳の引き落とし記録が見つからないなど、取引期間や返済額について推定できない場合は、推定計算を行う方法があります。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
最初の取引日の履歴について推定計算をする | ある程度正確な計算ができる | 契約内容などから、計算が不備にならないように注意する |
最初の取引残高を0円として計算する | かんたんに計算しやすい | 裁判で認められるためには強い根拠が必要 |
最初の取引日の履歴について推定計算を行えば、ある程度正確な計算ができ、過払い金を取り戻すことが可能です。
4.返済が遅れたときは、遅延損害金分の利息も戻ってくる可能性がある
借金の返済が遅れると、遅延損害金を支払わなければなりません。過払い金請求では、遅延損害金として支払った利息も過払い金として戻ってくる可能性があります。
ただ、遅延損害金分も含めて計算しなければならないので、計算は複雑です。
過払い金計算ソフトが遅延損害金の計算に対応していないことも多いため、自分で計算をするのは手間がかかるでしょう。
過払い金の引き直し計算を行う手順
過払い金の引き直し計算を行う手順について解説します。
これから過払い金の引き直し計算をする場合は、参考にしてみてください。
1.金融機関など債権者から取引履歴を取り寄せる
過払い金の引き直し計算を行うためには、金融機関など債権者から取引履歴を取り寄せる必要があります。
取引履歴を取り寄せるとき方法は、以下のいずれかの方法で取り寄せましょう。
- 金融機関の窓口での請求
- 電話やFAXでの請求
- インターネットでの請求
取引履歴の開示をする場合に、債権者から「なぜ取引履歴が必要なのか」聞かれることがあります。
「過払い金請求をするため」と言うのではなく、
- 取引内容を確認したい
- 状況について確認しておきたい
などと答えるようにしましょう。
2.取引履歴記載の金利や取引期間などをもとに、過払い金の引き直し計算を行う
取引履歴には、金利や取引期間などについて記載があります。取引履歴をもとに過払い金の引き直し計算を行いましょう。
過払い金は、契約書に基づいて過去に支払った利息から利息制限法で定められた上限の利息を引くことで計算ができます。
ただ、手作業で計算をするのは、時間がかかりますし、計算間違いをするリスクもあります。
そこで、自分で計算をする場合は、表計算ソフトを使いますが、複雑なケースでは計算が困難です。
業者との交渉の手間や時間などを考えると、自分で計算するよりも、弁護士や司法書士に依頼した方が、正確に過払い金を計算できます。
3.金融機関など債権者に対して過払い金請求を行う
過払い金の引き直し計算が済んだら、金融機関など債権者に対して過払い金請求を行います。
過払い金請求の手順は以下の通りです。
過払い金を取り戻すためには、債権者との交渉や裁判が必要です。また必要書類もそろえなければなりません。
そのため、過払い金の引き直し計算から過払い金請求までの手続きを、すべて自分でやるのは手間や時間がかかります。
自分でやるよりも弁護士や司法書士に依頼した方が良いです。
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自分で引き直し計算や過払い金請求することをおすすめできない理由
弁護士や司法書士に依頼をするとお金がかかります。そのため、自分で過払い金の引き直し計算や過払い金請求をやりたいと考える方もいるかもしれません。
しかし、以下の理由から、手続きをすべて自分でやるのはおすすめできないです。
- 過払い金の引き直し計算を自分でやると、計算を間違える可能性がある
- 自分で過払い金請求を行っても、督促や取り立てが止まらない
- 債権者との交渉がうまくいかず、過払い金をほとんど取り戻せないことがある
- 借金をしていることが家族にバレる可能性が高い
1.過払い金の引き直し計算を自分でやると計算を間違える可能性がある
過払い金の引き直し計算を自分でやると計算を間違える可能性があります。
計算を間違えると、取り戻せる過払い金が減ったり、過払い金請求を断られてしまうことがあるので注意が必要です。
一方、弁護士や司法書士なら、正確な過払い金を計算してくれます。過払い金の引き直し計算を無料で行ってくれる弁護士や司法書士も多いです。
2.自分で過払い金請求を行っても、督促や取り立てが止まらない
自分で過払い金請求をする場合、金融機関など債権者に対して過払い金請求を行っても、債権者からの督促や取り立てを止めるのに時間がかかります。
なぜなら、債権者からの督促や取り立てを止めるためには、裁判所に対して過払い金請求の申し立てをしなければ止まらないからです。
借金の督促や取り立てが止まらず困っている方にとって、すぐに督促や取り立てを止められないのは、精神的に悪い影響を与えます。
3.債権者との交渉がうまくいかず、過払い金をほとんど取り戻せないことがある
自分で過払い金請求をした場合、債権者との交渉もすべて自分でやらなければなりません。
債権者側である消費者金融やクレジットカード会社の担当者は、個人との交渉では強気の姿勢を崩さないことが多いです。
そのため、和解を持ちかけてくる可能性も高く、本来取り戻せる過払い金よりも明らかに少ない金額しか取り戻せないことも多いです。
4.借金をしていることが家族にバレる可能性が高い
過払い金請求をする場合、債権者とのやり取りは、電話や書面で行います。
債権者からの書面が自宅に届いたり、電話がかかってきたりするため、家族に借金がバレる可能性が高いです。
もし、家族に借金があることを隠している場合は、自分で過払い金請求をしないほうが良いでしょう。
このように、自分で過払い金の引き直し計算や過払い金請求をやることはおすすめできません。
自分で過払い金請求をしない場合、司法書士や弁護士に依頼します。司法書士と弁護士を比べると、弁護士に依頼することをおすすめします
では、なぜ司法書士よりも弁護士に依頼するのがおすすめなのでしょうか?
引き直し計算や過払い金請求を弁護士へ依頼する5つのメリット
過払い金の引き直し計算や過払い金請求を司法書士や弁護士に依頼するメリットは4つあります。
加えて司法書士ではなく弁護士に依頼した方が良い理由は、5つ目の理由があるからです。
- 複雑なケースでも正確な過払い金を計算してもらえる
- 督促や取り立てがすぐに止まる
- 自分で請求をするよりも過払い金が多く戻ってくる可能性が高い
- 債権者との交渉や書類作成なども代行してくれる
- 過払い金額が高くても対応できる
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1.複雑なケースでも正確な過払い金を計算してもらえる
まず、弁護事務所に依頼すれば、複雑なケースでも正確な過払い金を計算してもらえます。
- 遅延損害金が発生している
- 完済した業者から再度借金をしたため、時効がいつかわからない
- 取引履歴を取り寄せたが、古い履歴を取り寄せられなかった
そのため、弁護士に依頼すれば、間違った金額で過払い金請求をする心配がありません。
2.督促や取り立てがすぐに止まる
弁護士に過払い金請求を依頼した場合、金融機関など債権者に対してすぐに受任通知を送ります。
受任通知を送られた債権者は、督促や取り立てを止めなければならないので、すぐに督促や取り立てを止められます。
債権者からの督促や取り立てに苦しんでいるのであれば、弁護士に依頼すべきです。
3.自分で請求をするよりも過払い金が多く戻ってくる可能性が高い
弁護士に依頼した場合、自分で過払い金請求をするよりも多くの過払い金が戻ってくる可能性が高いです。
特に過払い金請求についての実績や経験がある弁護士に依頼すれば、過払い金を満額取り戻せる可能性があります。
弁護士に支払う費用を差し引いても、手元に残るお金が多いでしょう。
4.債権者との交渉や書類作成なども代行してくれる
弁護士に依頼すれば、債権者との交渉や書類作成なども代行してくれます。これらの手続きには、多くの時間がかかります。
しかし、弁護士に依頼すれば、ほとんどの手続きを代行してくれるので、とても楽です。
債権者との交渉がもスムーズに進むので、交渉が難航して悩むこともありません。
5.過払い金額が高くても対応できる
過払い金請求は、司法書士や弁護士のどちらも依頼できます。しかし、過払い金など債務額が140万円を超えるのであれば、弁護士を選ぶべきです。
司法書士は、司法書士法により債務額が140万円を超えた場合、債権者との交渉だけでなく、法律相談などすべての業務ができなくなります。
裁判も起こせないので、自分で過払い金請求をするか、弁護士を再度探さなくてはなりません。
第三条
司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。
六 簡易裁判所における次に掲げる手続について代理すること。ただし、上訴の提起(自ら代理人として手続に関与している事件の判決、決定又は命令に係るものを除く。)、再審及び強制執行に関する事項(ホに掲げる手続を除く。)については、代理することができない。
イ 民事訴訟法(平成八年法律第百九号)の規定による手続(ロに規定する手続及び訴えの提起前における証拠保全手続を除く。)であつて、訴訟の目的の価額が裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)第三十三条第一項第一号に定める額を超えないもの(データ引用元:司法書士法第3条6項のイ|e-Gov)
一方、弁護士は過払い金の金額にかかわらず、債権者との交渉や裁判代行が可能です。
過払い金請求では、数百万円以上の過払い金を取り戻せるケースも多いので、最初から弁護士に依頼した方がスムーズに手続きを進められます。
おわりに
過払い金請求をするためには過払い金の計算をする必要があります。ただ、自分で過払い金の計算をするのは、手間や時間がかかることがあるので注意が必要です。
過払い金を正確に計算しなければ、過払い金を満額取り戻せなかったり、過払い金請求を断られるリスクもあります。
したがって、過払い金の計算をする際は、弁護士に依頼するのが確実で安心です。