きちんとした返済計画を立てていても、急なリストラや勤め先の倒産、事故やけがによる休職などによって、借金の返済が難しくなってしまう場合があります。このような状況に陥ってしまったら、債務整理によって借金を返済できるように整理しなくてはいけません。
債務整理の中でも比較的素早く問題解決ができる「任意整理」は、裁判所を通さずに行うので法的制限もなく、初めに検討したい手段になります。
ですが、無職・無収入の場合でも任意整理はできるのでしょうか?
・任意整理後も返済は続く!
結論から言うと、無職・無収入では任意整理は難しいでしょう。
そもそも、任意整理とは膨らんだ利息金や借金滞納による遅延損害金の免除、将来利息のカットを貸金業者と交渉して借金を整理する方法なのです。そのため、任意整理後も借金の返済行為は続きます。
無職・無収入ですと、任意整理後に返済継続が不可能と見られてしまい、貸金業者はおろか、弁護士・司法書士といった専門家でも依頼を受けてくれない可能性が高くなります。
無職・無収入でも任意整理がしたい場合には、親や家族が返済を援助してくれる、保険金などを返済資金に充てられる、というような返済資金の当てがなければ交渉は難しいでしょう。
しかし、そのようなお金の当てがあるなら、そもそも債務整理を行う必要はありません。無職・無収入で、返済資金の準備ができない場合には、何か解決方法はあるのでしょうか。
無職・無収入でも申請が可能な「自己破産」
借金を返済するための資金が全くない状況では、とれる手段は「自己破産」のみになります。
自己破産とは、裁判所命令によって全ての借金の返済義務を免責できる債務整理の方法です。裁判所へ破産の申し立てをし、それが許可されれば貸金業者の合意を取らずに借金を帳消しにできます。その代わり、車や住宅など自分の持っている資産を処分しなくてはいけませんし、会社役員、士業などの職業資格も失ってしまいます。
・自己破産のメリット・デメリットは?
以下に自己破産のメリット・デメリットをまとめてみましょう。
<自己破産のメリット>
・全ての債務の支払い義務が免除される
・手続き開始後、強制執行ができなくなる
・認められた資産であれば手元に残すことができる
<自己破産のデメリット>
・必ず免責されるわけではない
・20万円以上の財産は処分される
・住所氏名が「官報」という国が発行する機関紙に掲載される
・免責決定まで一部の職業に就けない
無職状態なら職業資格を失う心配もありませんし、20万円以上の資産を持っていない人であれば、返せない借金に悩み続けるよりは自己破産を検討して、生活再建を図ることをおすすめします。
しかし、家や車を持ってはいるが、資産を処分したくないという人も少なくないでしょう。そういった人はどうすれいいのでしょうか。
少額でも返済できれば、任意整理可能
・任意整理では一時的に返済がストップできる
専門家に任意整理の依頼をした場合、最初に貸金業者へ任意整理を始める旨の連絡をします。そうすることで、貸金業者は債務者へ直接連絡ができなくなり、任意整理が終了するまでは借金の返済もストップします。
任意整理が終了するまでにはだいたい3か月~半年はかかるでしょう。つまり、無職・無収入であったとしても、任意整理を行っている期間内で収入を安定させられれば、任意整理後に無事返済をスタートできるのです。休職の場合なら、その休職期間によっては問題なく任意整理ができるでしょう。
ただし、専門家としては無職・無収入の場合には、自己破産を勧めてくる可能性が高くなります。任意整理と自己破産、どちらが自分に向いた解決方法なのかは専門家とじっくり話し合って決める必要があります。
・まずは収入の確保が大事!
収入のめどはたっていないけど、どうしても自己破産はしたくない、任意整理をしたい、という方はまず定職に就く必要があります。リストラや倒産で仕事を失った場合には失業手当が貰えますから、就職活動に専念できるでしょう。けがや事故と違って、仕事さえ見つかればすぐに働くことも可能です。まずは仕事探しから始めましょう。
ハローワークや求人サイトで仕事探しをする場合に覚えておきたい点は、一定の収入があれば、正社員・契約社員ではなく、アルバイトでも問題がないということです。
無職のままでは任意整理は行えませんが、たとえ次の仕事までのつなぎであったとしても、仕事に就いてさえいれば交渉ができる可能性は高くなります。任意整理のための仕事探しとしては、アルバイトが手っ取り早くておすすめでしょう。
・返済額は毎月数万円程度でもOK
任意整理では、整理した借金総額を36回払い(例外的に60回払い)での返済計画を立てて交渉するのが一般的です。無職・無収入であっても、アルバイトで生計を立てれば月1、2万円の支払いなら可能でしょう。つまり最大2万円×60回=120万円の借金までなら任意整理による返済も難しくありません。
無理に高収入・好待遇の仕事を探して無職期間が長引くよりも、まずは少額でもいいので収入を確保し、早く返済可能な状況にしましょう。
借金が高額なら検討したい個人再生
また、どうしても借金総額が大きく60回の分割払いでも返済できない場合でも、アルバイトで収入を安定化させられれば「個人再生」が行える可能性があります。
個人再生は、裁判所に再生計画を提出し、それが認められれば、借金総額の5分の1程度に債務を減額した上で36回での分割返済ができるのです。個人再生も任意整理と同様に返済が大前提となっていますが、借金の元金を大幅に減らせて資産の処分も必要なくなるので、処分したくない車や家を持っている人におすすめの方法になります。
・個人再生のメリット・デメリット
以下に個人再生のメリット・デメリットをまとめてみましょう。
<メリット>
・借金の大幅な減額が可能
・手続き開始後、強制執行ができなくなる
・住宅や車などの財産を手放す必要がない
<デメリット>
・返済継続可能な収入がないと手続きができない
・信用情報の中の事故情報に記載される
・住所氏名が「官報」という国が発行する機関紙に掲載される
個人再生もまた、任意整理と同様に一定の収入がないことには認められません。どちらの手段を用いるにしても、まずは収入の安定が第一だと考えるべきでしょう。
以上のことから、無職・無収入だからといって諦めることなく、自分の借金がどんな状況なのかをきちんと把握し、解決するためには何をすればいいのかを理解することで、任意整理での借金解決も難しくはないことだと分かります。借金返済のためにも、無職・無収入の方は、まずは自分の収入の確保から始めましょう。