独身時代の借金は、結婚後に影響あるのか
既婚者と比較すると、独身の人は会社の人や友達との付き合いが盛んですよね。独り身だとフットワークが軽い分、自分の趣味や遊びに使う金額も増えがちです。さらに、結婚適齢期を迎えると、友達の結婚式ラッシュで赤字になる月も多くなってきます。
旅行や遊び、結婚式の御祝儀といった理由からキャッシングを利用する人も少なくありません。これらの借金は少額なので、すぐに返済できるでしょうが、借りては返して、を繰り返していると、知らないうちに借金が膨らんでいるということもありえます。
すぐに返済できないような借金を抱えたまま結婚してしまうと、なにか影響はあるのでしょうか? また、債務整理をするのであれば結婚前と結婚後、どちらのほうがいいのでしょうか?
多くの人が気にするポイント、(1)配偶者にバレないか、(2)生活にどんな影響があるか、(3)離婚事由になるのか、をまとめてみましょう。
結婚前に債務整理する場合
結婚生活に自分の借金を持ち込まないように、結婚前に債務整理をする場合にはどのような点に気を付けるといいのでしょう。
配偶者にバレないか
独身時代の債務整理が配偶者にバレてしまうようなことはあるのでしょうか。
基本的に、借金の状況や債務整理の履歴というものは個人情報なので、配偶者に知られることはあまり考えられません。配偶者にバレてしまう可能性があるのは、利用明細書や契約書が見つかってしまったという場合でしょう。このようなケースとして考えられるのは、債務整理後に借金の返済が続く任意整理や個人再生です。
借金を帳消しにしてくれる自己破産の場合には、その後貸金業者との取引は発生しませんので、結婚前に自己破産してしまえばバレることはないでしょう。ただし、任意整理や個人再生でも、結婚前に完済して利用明細書や契約書を処分してしまえば、配偶者の目に触れることもありません。
債務整理した借金の返済が結婚後も続くという場合には、借金をしている形跡が見つからないように注意しなくてはいけません。気を付けるポイントとしては、以下のようなことが挙げられます。
利用明細書や契約書を持ち帰らない
貸金業者との契約書や返済時の利用明細書は、自宅に持ち帰らないようにしましょう。利用明細書をインターネット上で確認できる場合には、紙での発行を停止することもできます。また、貸金業者によっては口座引き落としの返済が可能なこともありますので、その場合には返済に利用している通帳を家に置かないなどの工夫が必要です。
貸金業者からの連絡は自宅に来ないようにする
貸金業者からの連絡先は自分の携帯電話にするなど、家に直接連絡が来ないようにしましょう。ちなみに、任意整理を司法書士などの専門家に依頼すると、その後の連絡もすべて専門家を窓口とすることもできますので、心配な方は相談してみるといいでしょう。
絶対に返済は遅れない
債務整理後の返済は絶対に遅れてはいけません。返済が滞ってしまうと、貸金業者からの督促状などが自宅に届いてしまう可能性があります。さらに、債務整理後に返済できないとなると、減額した借金が元に戻ってしまったり、残債務を一括で請求されたりします。そうなると、配偶者に秘密にしておくことは難しいでしょう。
生活にどんな影響があるか
結婚前の債務整理は、結婚生活にどんな影響を及ぼすのか気になる人もいるでしょうが、基本的には債務整理によって生活に支障をきたす心配はないといえます。
債務整理後は新たな借入れやクレジットカードの作成、ローンを組むことが難しくなりますが、これは債務整理をした本人のみですので、配偶者が何か規制を受けたり融資を断られたりするということはありません。気を付けるべきことがあるとすれば、配偶者の保証人になれない、という点くらいでしょう。
離婚事由になるのか
万が一、配偶者に結婚前の債務整理がバレてしまった場合、これは離婚事由にあたるのでしょうか。
民法770条で離婚事由を定めていて、これによると「婚姻の継続が困難な事由がある場合」のみとなっています。基本的に結婚前の債務整理は、婚姻の継続が困難な事由には当てはまらないとされていますので、これだけで離婚が成立するようなことはないでしょう。
ですが、離婚事由に該当しなくても配偶者が離婚の意思を持っている場合に、これを拒否し続けるのはなかなか難しいでしょう。現在はほとんどが協議離婚ですので、債務整理の過去がバレてしまって離婚を言い出された時には、今は借金をしておらず、しっかりとお金の管理ができているなど、配偶者を説得するための、“心を入れ替えて生活再建を図ったことを示す要因”が必要となってくるでしょう。
結婚後に債務整理する場合
結婚後に借金返済が苦しくて債務整理したい、ということになった場合について考えてみましょう。
結婚後の債務整理としては、一番おすすめなのは任意整理です。自己破産や個人再生はすべての借金を大幅に減額したり帳消しにしたりできますが、逆にいえば整理する借金を選択することはできません。任意整理は資産の処分も必要ありませんし、手続きに必要な書類なども少ないので、家族に秘密で書類を用意するのも容易です。
配偶者にバレないか
借金の存在を家族に隠したまま債務整理をする人はとても多く、司法書士もそのような対応には慣れています。そのため、最初の相談時に配偶者に秘密にしたいと伝えれば、自宅への連絡を控えたり、資料などを入れる封筒も法律事務所名の入っていないものを使用したりしてくれます。
ただし、結婚後の債務整理の場合には、家族共通で使用しているクレジットカードや預金通帳など、注意しなくてはいけないポイントがあるので覚えておきましょう。
秘密にしたい借金だけをリストアップする
整理する借金を選ぶことのできる任意整理であれば、家族で使用しているクレジットカードなどを除外して借金を減額することができます。公共料金の支払いや配偶者も利用する可能性のあるクレジットカードなどは、任意整理後は利用できなくなってしまうので、整理する借金から外しておきましょう。それにともなって、配偶者の目に触れる可能性のある銀行口座は手続きで使用しないように注意が必要です。
滞納前に司法書士に依頼する
借金を滞納してしまうと、職場や自宅に催促の連絡が来てしまうので、借金の存在が配偶者にバレてしまう可能性があります。返済が苦しいと感じたら滞納する前に司法書士に依頼して、すぐに受任通知を発送してもらいましょう。受任通知が貸金業者の手元に届くと、それ以降の連絡はすべて司法書士を通して行うことになり、借金返済も任意整理が終了するまではストップします。
生活にどんな影響があるか
任意整理をしたことで何か家族に影響が出てしまうのかというと、こちらも結婚前の債務整理同様、特に支障をきたすことはありません。
ただし、任意整理後5年は住宅ローンなどを組めませんので、任意整理をする時期はよく検討した方がいいでしょう。
離婚事由になるのか
配偶者に秘密で債務整理することは離婚事由になるのでしょうか。
実は、配偶者が債務整理をすることは離婚事由としては認められません。法的に離婚事由として認められている要因は以下のようなものです。
- 浮気や過度な風俗通いなどの不貞行為
- 同居や協力・扶助の義務を怠り、長期間にわたっての別居がある
- 失踪などにより3年以上安否や消息が不明な場合
- 配偶者が重度の精神病にかかって回復の見込みがない
- そのほか、婚姻の継続が困難な事由があるとき
たとえ自己破産であってもこの「婚姻の継続が困難な事由」にはあたらないというのが裁判所の考えです。ただし、借金の理由が過度のギャンブルや浪費で、生活費を十分に家庭に入れていない場合には、扶助の義務を怠ったと判断できます。また、債務整理をしたことが原因で別居となった場合にも、離婚事由となる可能性はあります。
未婚・既婚にかかわらず、早い借金の解決を
以上のように、結婚の前でも後であっても、借金が配偶者にバレたり生活に影響を及ぼしたりする可能性はあまり変わりません。どちらかといえば、結婚前のほうが自由に動きやすいこともあって債務整理しやすいといえるでしょう。
ただし、借金問題というのは、未婚・既婚にかかわらず早く解決すべきものです。結婚をするから借金を整理するのではなく、返済が難しいと感じた場合にはすぐに司法書士などの専門家に相談するようにしてください。