過払い金

債務整理とブラックリスト~何をするとのり、何ができなくなるのか~

「ブラックリスト」を正しく知り、無駄のない返済をおこないましょう

貸金業者を利用していると、気になるのが「ブラックリスト」の存在ですよね。債務整理をするとブラックリストに掲載されてしまいますので、新規でのローンが組めなかったり、新しいクレジットカードを作れなくなってしまったり……など、不便な部分は確かに出てきます。しかし一方で、ブラックリストに掲載されたくないからと、苦しい中で返済を続けていると返済が滞り、結局ブラックリストに掲載されてしまうというケースも少なくありません。先延ばしにするよりも、きっちりと将来を見越して債務整理をおこない、借金の総額を減らした方が、未来のあなた自身のためにもなります。ブラックリストと債務整理について正しく知り、未来の自分にとって一番無駄のない選択をしましょう。

ブラックリストとは

そもそも、ブラックリストとはどういったものなのでしょうか?
貸金業者は借金の申込みを受けると、その人にいくらまで融資することができるかの「審査」をおこないます。融資の上限額を決定するためには、家族構成や勤務先情報などの個人情報や、他の貸金業者からの借入れ状況・利用履歴から、借金の返済能力がその人にどの程度あるのかを判断しなくてはいけません。

こういった情報は、貸金業者が加盟している「信用情報機関」によって、以下のような項目が管理されています。

(1)登録される利用者の個人情報
 氏名、生年月日、自宅住所、電話番号、勤務先名、勤務先住所、勤務先電話番号

(2)登録される利用者の借入れ情報
 利用している貸金業者、契約商品名称、利用限度額、契約日、借入れ金額、支払い形態、返済回数、借金残高、次回の返済日

(3)登録される利用者の事故情報、移動情報
 長期延滞、特定調停、個人再生、自己破産などの債務整理

肝心なのは(3)の事故情報で、過去に長期延滞や債務整理をおこなっていたことがわかると、新たに融資を受けたくても審査に通らない可能性が高くなります。この「事故情報」が、世間で「ブラックリスト」と呼ばれているものです。

さらに、これらの情報は、キャッシング、クレジットカードやローンの新規申込みだけでなく、クレジットカードの更新時にも参照されます。事故情報が掲載されると、すでに所有しているクレジットカードの更新時の審査に通らない可能性があることは覚えておきましょう。

ブラックリストの情報は、多くの貸金業者によって日々登録・更新されていきます。1社の貸金業者としか取引がなくても、その取引内容は信用情報機関へ加盟しているすべての貸金業者が知ることができます。よって、「貸金業者A社で債務整理や長期延滞をしているから、貸金業者B社で新たにキャッシングしよう」としても、B社の参考にする信用情報機関がA社と同じものであれば、当然審査は通りません。

「債務整理」以外に「長期延滞」でもブラックリストにのる

ただ、気をつけたいのが「ブラックリストに絶対のりたくない!」と無理な返済を続け、長期延滞になり、結局ブラックリストに載ってしまう、というケースです。「無理だとわかった時点で速やかに債務整理をおこなう」でも「無理だとわかりつつも、苦しい返済を続け、結局長期延滞になってしまう」でも、どちらのケースでもブラックリストにのってしまうのです。それならば、一度債務整理をして、借金の総額を減らした方が新しい人生のスタートをいち早く切れます。あとで詳しくふれますが、ブラックリストの情報は一生残り続けるものではなく、一定の期間がたてば消去されます。それならば、早く動くに越したことはありません。
まだ迷っている、という方もぜひ一度ご相談いただければと思います。

信用情報機関とは

貸金業者は銀行、消費者金融、信販会社(クレジットカード会社)の3つに分けられ、この種類によって、加盟する信用情報機関もそれぞれ異なります。現在、日本には以下3つの信用情報機関があります。

(1)全国銀行個人信用情報センター
 銀行や銀行系の信販会社(クレジットカード会社)が加盟している信用情報機関です。

(2)シー・アイ・シー(CIC)
 おもに信販会社(クレジットカード会社)やローンを扱う銀行が加盟している信用情報機関です。一部の消費者金融会社も加盟しています。

(3)日本信用情報機構(JICC)
 多くの消費者金融会社が加盟している信用情報機関です。

ただし、信用情報機関の加盟数に制限はないため、複数の信用情報機関に加盟している貸金業者も多くあります。たとえば、三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行は3つすべての信用情報機関に加盟しています。消費者金融会社でも大手のアイフル、アコム、プロミス(SMBCコンシューマーファイナンス)などは(2)CIC(3)JICCの2つに加盟しています。キャッシング利用者の多い貸金業者は、ほとんどが複数の信用情報機関へ加盟しています。

自分は現在ブラックリストに入っているのか、信用情報の状況を知りたいという方に向け、各信用情報機関では「本人開示制度」を設けています。各信用情報機関に問い合わせれば自分の信用情報を確認することができます。

・全国銀行個人情報センター…郵送のみで受け付けています。
・CIC…窓口や郵送以外にも、パソコンやスマートフォン、携帯電話によるインターネットでの開示依頼を受け付けています。
・JICC…スマートフォン、郵送、窓口で開示依頼を受け付けています。ただし、スマートフォンは手続きのみがスマートフォンでき、結果は郵送されます。

信用情報開示手続きをおこなう際に注意したいのが、貸金業界はとても再編が盛んな業界である、ということです。たとえば「プロミス」の場合、「プロミス」という名称はサービスブランドであり、信用情報機関においては正式な社名である「SMBCコンシューマーファイナンス」で登録されています。名前が変わっていたり、企業合併でそもそもお金を借りた時の会社がその名前ではもう存在していなかったりということもよくありますので、不安な場合、3つの信用機関すべてに開示依頼を出すのが安全でしょう。

事故情報には掲載期限がある~任意整理なら約5年で削除される

信用情報機関で保存される事故情報には、項目ごとに情報の保持期間が決まっています。保持期間を過ぎた情報は削除されますので、一生残り続けることはありません。

まず「債務整理」の場合についてです。債務整理とは、借金返済が困難な場合に用いられる、法的に認められた救済措置です。事故情報に登録される債務整理は、おもに3つあります。

(1)任意整理
裁判所を介さずに、貸金業者と利用者、もしくは司法書士などの専門家を介して交渉をおこないます。借金元本は減らせませんが、利息金や遅延損害金を大幅カットしたり、今後発生する利息を免除できたりなど、返済の負担を軽くできます。
JICCでは任意整理の受任通知を貸金業者に送付してから5年間情報が保持されますが、全国銀行個人情報センター、CICでは任意整理については事故情報として記載はされません。(ただし、全国銀行個人情報センターの場合、任意整理時に保証会社が代位弁済をしたときは、事故情報扱いになります)。

(2)自己破産
裁判所に申立てをおこない、抱えているすべての借金が帳消しになり、今後の返済義務がなくなる手続きです。自己破産をおこなうには、自分の持っている資産(20万円以上)を売却する必要があります。破産免責が言い渡されてから全国銀行個人情報センターでは10年間、CIC、JICCで5年間、事故情報として保持されます。

(3)個人再生
裁判所に再生計画を提出し、借金の総額を5分の1程度に減額した上で、長期の分割払いで返済をおこないます。自己破産では必要とされる「資産の売却」が個人再生では必要ないため、家や車を手放したくない人が多く選択する債務整理の手段です。借金完済後、5年間は信用情報機関で情報保持されます。

つまり、債務整理をするのであれば、最低でも5年間は事故情報が残るということです。
ちなみに、テレビなどで話題の「過払い金返還請求」ですが、これは払いすぎた利息金を返済してもらうための行為であって、借金を整理する目的ではないので債務整理にはあたらず、返済能力にも影響しないものとして、基本的には事故情報へ登録されない決まりとなっています。

事故情報には掲載期限がある~延滞なら1~5年で削除される

ブラックリストへの掲載は「債務整理」以外に「長期延滞」もあります。キャッシングやローンの返済期限までに返済金を支払わないことを「延滞」といい、1、2日程度の延滞であれば、貸金業者へ連絡を入れ、誠意ある対応をすれば返済を待ってくれる貸金業者は多いのですが、長期間返済をしないままだと事故情報に記載されてしまいます。
基本的には、2ヶ月(61日)を超えた延滞は事故情報に登録されると考えられています。ただし、数日の遅れでも、何度も繰り返していると、「返済の意思が見られない」と判断され、事故情報として登録されてしまうケースもあるので、返済期限までに返済できるようにしておきましょう。

長期延滞の場合は、全国銀行個人信用情報センターとCICは延滞解消から数えて5年間、JICCは1年間の情報が保持されます。長期間返済できる目処が立たなければ、ずるずると延滞の状態を長くするよりも、債務整理をおこない、借金の総額を減らしたほうが速やかな問題解決につながります。