基本的に借金の取り立てで職場に連絡したり、訪問することはできません。職場への連絡や訪問は違法です。
借金を返済できないと、職場に取り立てが来るのではないかと不安になっていませんか?
職場への取り立てに怯えている方もいるでしょう。借金の取り立ては違法になるので、心配する必要はありません。
ただし、自身で知識がなければいざという時に対処できないでしょう。
今回は借金の取り立てに関する法律や、実際に訪問された場合の対処法を解説します。
職場への借金の取り立ては違法
基本的に職場への取り立ては違法です。
正当な理由がない場合、職場への電話や訪問は禁止されています。
しかし、あくまで「正当な理由がない場合」です。正当な理由があれば、職場への連絡を認められます。
ただ、職場への連絡が認められるケースの多くは、債務者に原因があることがほとんどです。
もし職場へ連絡が来たり訪問されれば、借金をしていること、返済できていないことも職場にバレてしまいます。職場へ連絡が来る前に、借金問題を解決しておくのが一番良い方法です。
また、職場にバレてしまうと、「解雇されるのでは?」と不安に感じている方も多いでしょう。
基本的に借金が理由で解雇されることはありません。
借金の取り立てや、取り立てによる職場解雇などに関しては、借金している本人が知識をつけておくと良いでしょう。
一般的な取り立ての流れ
一般的な取り立てがどのようにおこなわれるのか解説します。
基本的な流れは、以下の通りです。
- 1.電話や手紙による督促
- 2.内容証明郵便
- 3.裁判
- 4.差し押さえ
いずれかを飛ばして、たとえばいきなり差し押さえになることはほとんどありません。
順番通りの流れでおこなわれます。次の順序に移行するのは、返済が滞った場合や、連絡を無視した場合です。
基本的には連絡さえしていれば、電話や手紙の時点で止まると考えて良いでしょう。
もちろん借金がなくなるわけではありませんが、返済期日の延期のようなある程度の相談は乗ってくれる可能性があります。
差し押さえにならないためには、「連絡を無視しない」を徹底してください。連絡さえとれていれば、差し押さえまでいく可能性は低いです。
電話や手紙による督促
返済が滞ると、まず電話や手紙による督促がおこなわれます。
金融業者に登録した電話番号に電話がかかってきたり、自宅宛に督促状が届く程度です。
手紙の内容は、返済が滞っている件(いつの分が返済されていないか)や、一度連絡してほしいという内容なので、内容にしたがって連絡しましょう。
脅しのような電話や手紙が送られてくることはまずありません。
電話や手紙の時点では、たまたま返済が遅れている場合やなにかしらの事情があって返済できない場合を考えての、金融業者からの「確認」と考えて良いでしょう。
金融業者も平和的な解決を望んでいるので、本来はこの時点で連絡して解決するのが望ましいです。
業者によって異なりますが、大体2か月頃までは電話や手紙による督促がおこなわれます。
こちらの記事もCheck!
内容証明郵便
支払いを滞納して2か月~3か月すると、自宅宛に「内容証明郵便」で、一括請求書が送られてきます。
電話や手紙の時点で対応していれば内容証明郵便が送られてくる可能性は低いので、内容証明郵便が届いたらギリギリの状態だと考えてください。
しかし、内容証明郵便が届いたからとって、一括で払わなければいけないわけではありません。
まだこの時点では、金融業者に連絡をして支払いの意思を伝えれば、取り立てを待ってくれる可能性があります。
金融業者と借金した本人同士でおこなわれる最後のやり取りになるので、内容証明郵便が来たらすぐに対応してください。
裁判
内容証明郵便が届いたにもかかわらず、支払いしないまま無視してしまうと、簡易裁判所で「貸金返還請求」や「支払い督促申立」をされます。
ただ、この時点でも相談は可能です。
簡易裁判所が間に入りますが、どうしても現在返済できない場合は、お互いに納得のいく方法での返済を提案できます。
もし放置してしまうと、「判決」や「仮執行宣言」が下されます。
こちらの記事もCheck!
差し押さえ
判決や仮執行宣言が下された場合、または任意に支払わない場合は、財産の差し押さえに移ります。
相手方(債務者)が,仮執行宣言付支払督促正本を受領しても支払わない場合,あなたは,相手方(債務者)に対して強制執行の手続をとることができます。
(データ引用元:支払督促手続の流れ|裁判所)
貯金や保険、給料や車などが差し押さえられてしまう可能性があります。
ただしあくまで差し押さえは、金融会社にとって最後の手段です。
差し押さえとなると裁判所に提出する書類が多くなるため、裁判になる前に解決したい金融業者がほとんどでしょう。
最悪の段階になる前に、金融業者と本人で相談するのが一番良い方法です。
電話や手紙による督促~差し押さえまでには半年近くかかります。連絡する猶予は十分にあるはずです。
差し押さえになる前に必ず連絡しましょう。
貸金業規制法による取り立て禁止行為
職場への電話や訪問は、貸金業規制法によって禁止されています。
貸金業規制法とは、貸金業者からの借り入れについて定めている法律です。
近年、返済しきれないほどの借金を抱えてしまう「多重債務者」の増加が、深刻な社会問題(「多重債務問題」)となったことから、これを解決するため、平成18年、従来の法律が抜本的に改正され、この貸金業法がつくられました。
(データ引用元:貸金業法のキホン|金融庁)
平成18年以降、大きく変わった貸金業法は以下の3つ。
- 総量規制:年収の三分の一を超える新規の借り入れができない
- 上限金利の引き下げ:上限金利が29.2%から借り入れ額に応じて15%~20%へ引き下げ
- 貸金業者に対する規制の強化:貸金業務取扱主任者を営業所に置かなければいけない
過去には脅すような悪質な取り立てはありましたが、現在では悪質な取り立てはできません。
職場に押しかけたり実家に押しかけたりするような取り立ては、貸金業規制法がある今の時代、ほぼ不可能です。
貸金業法を違反すれば罰を受けるのは金融業者になるので、わざわざ大きなリスクを背負って取り立てることはほとんどありません。
取り立て規制
取り立て規制に関しては、貸金業法に記載されています。
細かくは電子政府の総合窓口e-Gov「貸金業法」ページで確認可能です。
本来貸金業法は第五十二条までありますが、今回は取り立てに関する第二十一条から抜粋し、わかりやすい言葉に置き換えた上で紹介します。
- 脅すような言動や私生活や業務を害する取り立て
- 正当な理由がなく21:00~8:00までの時間帯に電話やFAXによる取り立て、または訪問
- 債務者が連絡してほしい時間を指定しているにもかかわらず、指定時間以外の電話
- 支払いを申し出ているにもかかわらず、電話やFAXなどで督促
- 正当な理由がないのに、職場や自宅以外の場所に電話をかけたり訪問すること
- 債務者の自宅や勤務先へ取り立てに行った際「帰ってほしい」と言われているのに、退去せず居座ること
- はり紙や立て看板などで借金を公にすること
- 債務者以外の人から金銭の借り入れを要求
- 債務者以外の人に対して借金の返済を要求
- 債務者の身近な人に無理やり協力させること
- 債務者が、弁護士や司法書士に債務整理を依頼した後で債務者に直接督促
これらの行為はすべて貸金業法違反にあたります。
もし違反していれば、貸金業者に対して違法行為にあたると伝えましょう。それでも応じないならば、警察に連絡してください。
貸金業法に違反すると、刑事罰として二年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科せられ、貸金業者登録の取り消しや業務停止処分となります。
刑法違反
脅すような取り立ては、貸金業法違反だけではなく、刑法違反になる可能性があります。
もし以下のような取り立てがおこなわれたら、すぐに警察や弁護士に相談してください。
たとえば「返済しないと職場に押しかける」という言葉は、脅迫罪や恐喝罪になる可能性があります。張り紙や立て看板で借金に関する内容を公にした場合、秘密漏洩罪や名誉棄損、侮辱罪となる可能性が高いでしょう。
さらに、職場や自宅に取り立てに来て、「帰ってほしい」と伝えても帰らない場合は、不退去罪になります。もちろん暴力を振るわれれば、暴行罪や傷害罪です。
いずれもドラマや漫画などでよく見かけるシーンですが、実際にはおこなわれません。
法律違反してしまえば、貸したお金が返ってこないどころか逮捕される可能性があります。金融業者にとって、デメリットしかありません。
職場への取り立ては基本的に禁止
職場への取り立ては貸金業法により禁止されていますが、あくまで「正当な理由」がない場合です。
貸金業法があるからといって安心してはいけません。
どんな場合においても職場への取り立てが不可能なわけではなく、正当な理由さえあれば職場への取り立ても可能なのです。
ただし、正当な理由として認められない可能性があるため、ほとんどの業者は職場に来ることはありません。
正当な理由がある場合は可
貸金業法でも記載がある通り、正当な理由がある場合は職場への取り立てが可能になります。
正当な理由とは、自宅や携帯電話、自宅への郵便などで一切の連絡が取れない場合や、故意に連絡を無視しているケースです。
ただし、職場に来たからといって脅すような行為はできません。
正当な理由で認められるのは、あくまで貸金業法のみです。脅すような言動や行動をすれば、刑法違反となってしまいます。
また、もし職場へ訪問されても「帰ってほしい」と伝えれば、不退去罪になるため金融業者は帰らざるを得ません。
ヤミ金の場合は例外
基本的には貸金業法によって債務者は守られています。
しかし、借り入れ先がヤミ金の場合は例外です。
ヤミ金は貸金業の登録をしていない違法業者で、存在自体が違法である可能性があります。
ヤミ金業者の主な違法行為は以下の通りです。
- 貸金業法違反:貸金業として無登録で営業
- 出資法違反:法外な金利
ヤミ金業者はそもそも貸金業法にのっとっていません。そればかりか、刑法違反を恐れていない業者もいます。
そもそも法律違反を恐れていないので、ありとあらゆる方法で督促してくる可能性が高いです。
貸金業法にあるような違法行為をしてくることもあるでしょう。
しかし、ヤミ金の督促に屈する必要はありません。そもそもヤミ金との契約は違法行為であるため、無効になります。
もしヤミ金に借金を返済していた場合でも、元金、利息ともに返還請求できる不当利得返還請求権が可能です。
ヤミ金から借り入れしているならば、すぐに警察や弁護士に相談することをおすすめします。
職場へ取り立てに来た場合の対処法
もし職場へ取り立てが来た場合、どのように対処するべきか、対処法を考えておきましょう。
脅すような言動や行動はできませんが、金融業者に納得してもらわなければ差し押さえ手続きをされる可能性があるので、冷静に対処してください。
また、取り立てに来た業者が消費者金融かヤミ金かによって対処法は異なります。
どうしても自分だけで対処できない場合は、警察や弁護士に相談しましょう。しかし、警察が介入できないケースもあります。
それぞれのケースへの対処法を知っておきましょう。
消費者金融からの借金
消費者金融が職場に来た場合は、貸金業法にのっとり「帰ってほしい」と伝えれば、帰ってくれます。
応じずに居座り続けるならば、貸金業法違反であると伝えましょう。
健全な消費者金融であれば、それ以上居座り続けることはありません。
ただし、そのまま帰らせてしまうと裁判になる可能性があります。
また、弁護士に債務整理を依頼する予定があれば、その旨を伝えてください。
弁護士に債務整理を依頼すると、直接督促することはできなくなるので、職場まで訪問するような行為はなくなるでしょう。
ヤミ金の場合
相手がヤミ金だと、「帰ってほしい」「弁護士に依頼した」と伝えても、迷惑行為や督促を止めてくれない場合があります。
むしろ逆上させてしまう可能性が高いです。その場は素直に応じて帰ってもらうのが良いでしょう。
一旦その場を乗り切った後で、警察や弁護士に相談してください。
ヤミ金の場合、強気に出れば出るほど逆効果になりやすいです。職場にバレてしまいますが、まずは穏便に乗り切ることだけ考えてください。
警察へ相談
正当な理由なく取り立てに来たときやヤミ金相手ならば、すぐに警察か弁護士に相談してください。
特にヤミ金相手には、警察が一番です。
警察へ被害届を出せば、貸金業法違反や刑法違反として逮捕してもらえます。
しかし、逮捕してもらうには証拠が必要です。被害届を出しても、証拠がなければ警察は対応できません。
いざ被害届を出すときのために、迷惑行為や脅し行為などは証拠に残しておきましょう。
特に脅迫罪や恐喝罪は証拠として残しやすいです。
電話や対面で脅してきたり怒鳴ってきたならば、すかさず録音しておいてください。その音声が証拠として使えます。
警察が介入できないケースがある
証拠があるならばすぐに警察に相談するべきです。
しかし証拠がない場合、警察は介入できない可能性があります。
恐喝の証拠があれば刑事事件として動いてくれますが、証拠がなければ民事事件として扱われる可能性があるため、警察は動けなくなってしまうのです。
警察に動いてもらうなら、必ず証拠を残しておきましょう。
弁護士へ相談
警察に相談できないときは、弁護士に相談してください。
警察は証拠がなければ動けませんが、弁護士はヤミ金に対して電話や受任通知を送るなどして対策を練ってくれます。
また、警察に対しヤミ金の刑事告訴や告発をおこなってくれる場合もあるので、迷ったらまずは弁護士に相談しましょう。
もちろんヤミ金ではなく、消費者金融からの取り立てで悩んでいる場合も弁護士に相談してください。
取り立てに困ったら債務整理
借金の取り立てに困ったら、債務整理を検討してみましょう。
債務整理をおこなえば、借金の減額または利息の減額、支払い期日の延期などが可能になる可能性があります。
そもそも取り立ての根本は借金の滞納です。
貸金業法の知識で一時期的に取り立てを止めても、借金自体は残りますし、返済はしなければいけません。
弁護士に依頼して根本的な解決をはかれば、今後取り立てに悩まされることはなくなります。
債務整理の方法は3つです。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
任意整理 | ・利息軽減 ・短期間で済む ・手続きが比較的簡単 |
・今後5年借り入れ不可 ・他の手続きと比べて減額が少ない |
個人再生 | ・大幅に減額される可能性がある ・財産を手放さずに手続きできる可能性がある |
・今後5年借り入れ不可 ・返済を継続できる収入がないと手続き不可能 |
自己破産 | ・借金の全額免除 | ・今後5年間~10年借り入れ不可 ・裁判手続き中の長期旅行や引っ越し不可 ・免責決定まで一部就けない職業がある |
債務整理のなかには、弁護士や裁判所を通さずにできる手続きもありますが、書類の作成や債権者とのやりとりなどは難しいです。
また、督促や取り立てを止める効果を得られません。
取り立てに悩んでいるなら、弁護士に相談するのが一番良い手段です。
債務整理を開始した時点で取り立て不可能
弁護士へ債務整理を依頼すると、金融業者に受任通知(弁護士が債務整理手続きを始めたと知らせる通知)が送られます。
金融業者が受任通知を受け取ると、取り立てはできなくなります。
貸金業法取り立て規制では「債務者が、弁護士や司法書士に債務整理を依頼した後で債務者に直接督促」は禁止です。
債務整理を依頼すれば、取り立てはほぼ確実に止まるでしょう。
ただここで勘違いしてはいけないのが、取り立てが止まるのは「依頼してから」です。
借金に関する無料相談をおこなっても、取り立ては止まりません。弁護士からの受任通知がなければ、取り立ては続きます。
「弁護士に債務整理を相談している」と伝えれば、一時的に取り立ては止まるかもしれませんが、受任通知が送られてこなければ再度取り立てが始まるでしょう。
取り立てを止めたいなら「相談」ではなく「依頼」してください。
債務整理は職場にバレない
結論からいえば、債務整理をして会社にバレる心配はありません。
バレる可能性がゼロとは言い切れませんが、弁護士から職場へ連絡するようなことはないです。
ご夫婦や家族の場合、電話の履歴や郵便からバレる可能性があります。
しかし、職場なら電話や郵便でバレる心配はありません。本人が自ら漏らさなければ、バレる心配はないと考えて良いでしょう。
もしなにかしらの理由で借金が職場にバレても、なにかしらの処分を受けることはありません。
ただ、借金はもちろん債務整理まですれば、お金にだらしないイメージやマイナスなイメージを持たれる可能性があり、周りの評価が気になってしまうでしょう、
職場に知られたくない方は、職場の同僚や上司に漏らさないように気を付けてください。
債務整理を行ったことを理由に解雇されることはない
債務整理が原因で会社を解雇されることはありません。
たとえ借り入れ先がヤミ金で、職場へ迷惑行為があったとしても、解雇して良い理由にはならないので安心してください。
ただし、職場にいづらくなる可能性はあります。
債務整理ならばそこまで影響はありませんが、借金の取り立てが原因で職場の方から冷ややかな目で見られるケースは多いです。
そこまでひどい取り立てになる前に、対策を講じておきましょう。
根本的には借金をしたこと、借金を滞納したことが原因です。
消費者金融だとしてもヤミ金だとしても、事前に対策をとっておけば職場に迷惑がかかることはありません。
解雇された場合「不当解雇」に該当
もし借金の取り立てや債務整理によって解雇されると、不当解雇に該当します。
たとえ債務整理が原因で解雇できるという会社の規則があったとしても、債務整理と会社への労働力の提供は全く関係ないので、その規則は無効です。
もし不当解雇されたとしても、裁判所に解雇の取り消し請求がおこなえます。
取り立てに不安を感じるならまず相談
借金の滞納や取り立てなどに対して不安を感じているなら、まず弁護士に相談しましょう。
警察はなにか事件が起こらなければ動いてくれない可能性があります。取り立てが来ていない状態で警察に相談しても、事態は変わりません。
借金に関する悩みなら、弁護士へ相談しましょう。
- 借金を減額したい
- 借金が返せない
- 取り立てに悩んでいる
違法な取り立てもちろん、債務整理の相談も可能です。根本的な解決をはかるなら債務整理を検討した方が良いでしょう。