借金の返済が滞ると、最初は電話や手紙で督促があり、そのうち取り立てが激しくなってきます。
もちろん返済しないのはいけないことですが、中には違法な取り立て行為のせいで、精神的に追い詰められているケースもあります。
もし、法律の知識がないため「借金の取り立ては何をされても仕方ない」と思いこんでいる方がおられましたら、ぜひこの記事を参考に、借金取り立てのルールについて正しい知識を得てください。
通常の借金の取立て方法
電話・郵便・裁判所からの取立てが一般的
最初に、一般的な借金の取り立て方法について、説明します。
漫画やドラマなどでは恐ろしい借金取り立てシーンが出てきますが、普通の金融機関ではそのような違法行為は行いません。通常は法律に則り、以下の順で粛々と督促が行われます。
電話での問い合わせ
返済が滞ると最初に電話で入金日の問い合わせがあります。
この段階では、まだ取り立てというよりも確認に近いニュアンスです。最初は個人の携帯、応じない場合は自宅の電話にかかってくることもあります。
督促状・催告書
電話に応じなかった場合は書面での督促に切り替わります。
内容は支払いの金額・方法・期日が記されています。中には内容証明郵便で送られてくる場合もありますが、特別な強制力があるわけではなく、法的には一般郵便と同じ扱いです。
さらに、督促状を受け取っても滞納を続けている場合は、「催告書」が送られてきます。多くの場合、催告書では一括返済を迫られます。
また、指定された期日までに返済がない場合は、差押さえを執行するという予告通告が来ることもあります。この順番は金融会社によって前後します。
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訴状・支払督促
催告書を無視すると、裁判所を介して自宅に「訴状」や「支払督促」が送られてきます。
訴状は裁判を起こした原告が、言い分を裁判所に提出する書類で、支払督促は債権者の申立てに基づき債務者に支払を督促する裁判所書記官の処分です
これらは法的な力があるため、無視することはできません。こうなる前に早めに対処を行うことをおすすめします。
借金の取立てに関するルール
金融機関の種類ごとに、独自の取り立てルールが存在します。
どの業者から借りるかによってもルールの厳しさが大きく違いますので、申し込みが簡単だからといって、安易に取り立てのシビアな業者から借りないことが肝心です。
消費者金融の借金取立てのルール
「消費者金融」とは、一般個人に対して融資を行う金融業です。
昔は「サラ金」と言われ、高金利や過酷な取り立てで恐れられていましたが、現在は「貸金業法」という法律で厳しく規制されているため、消費者にとっては安心なサービスになりました。
消費者金融の取り立てルールには、以下のような禁止行為があります。
早朝深夜・連絡をした場合
正当な理由なく午後9時から午前8時までの間に、電話・FAXをしたり、自宅を訪問すること。債務者が連絡した場合も同様。
勤務先など自宅以外
正当な理由がなく勤務先など自宅以外の場所へ、電話・電報・FAXを送ったり、訪問すること。
退去するよう意思表示した場合
自宅・勤務先などへの訪問の際、退去するよう意思を示されたにもかかわらず退去しないこと。
プライベートに関する事実を口外
貼り紙、看板などで、債務者の借入れや私生活に関する事実を債務者以外の者に明らかにすること。
他者からの借り入れで返済するよう要求する
金融機関や他者からの借入れなどで、返済資金を調達することを要求すること。
この他、家族からの取り立てや、協力の強要、弁護士などが受任している場合の本人への取り立て、さらには上記の禁止行為を行うことを予告することも禁止されています。
個人間の借金取立てのルール
「個人間の借金」では、問題がこじれるケースが少なくありません。
その理由は、貸し借りが貸金業法で規制されないため、ルールが存在しないからです。取り立てにも上記のような禁止項目がなく、家族や職場への取り立てが行われることもあります。
ただし、度を過ぎた行為は違法となりますので、その場合は証拠をきちんと残しておくことが重要です。なお、個人間の借金に関しては、2つの注意点があります。
反復継続の意思を持つ金銭の貸し借り
何度も繰り返し貸付を行う場合は、たとえ友人間であっても金融業の登録が必要です。
もし、これに違反した場合は10年以下の懲役もしくは3,000万円以下の罰金、またはその両方という厳しい刑事罰を受けることになります。
「出資法」に違反していないかどうか
出資法とは、高利貸しを禁止するための法律です。
個人間の借金であっても、上限を超えた金利を請求した場合には違法となりますので、しっかりと法律を理解した上でやり取りをする必要があります。
友人や知人だからと言って気軽にお金を借りるのではなく、法律から外れないよう事前に契約書類を交わし、グレーゾーンに足を踏み入れないよう気をつけましょう。
ヤミ金の借金取立てのルール
どんなに困っていても、絶対に手を出してはいけないのが「闇金融(ヤミ金)」です。ヤミ金は貸金業法の登録をせず、違法に貸付を行っている業者の事で、年利換算で数百~千数百%になるような法外な金利を設定していたり、給与ファクタリングや押し貸しなど、悪徳な手口で消費者からお金を騙し取ります。
また、取り立てにおいても、恫喝や勤務先への押しかけなど、被害が多く報告されています。
他の業者の登録番号を騙っていることがあるので、申し込み前には必ず調査をしてください。
金融庁ホームページでは、全国の財務局・都道府県の登録貸金業社を検索することができます。
ヤミ金の貸付は違法
ヤミ金は無登録なので、貸金業法違反となります。
また、金利が法の上限を超えているため、出資法違反にもなります。さらには過酷な取り立てが公序良俗に違反する行為とみなされ、民事・刑事の両面で違法です。
近年、ヤミ金融による被害が拡大していることから、2015年に貸金業規制法及び出資法の一部を改正し、「ヤミ金融対策法」が制定されました。
借りたお金は返済の義務がない
ヤミ金融で借りたお金は、元本・利息ともに返済の義務はありません。
ヤミ金融は違法な無登録業者なので、契約自体が無効と考えられるためです。民法でも「不法な原因のために給付をした者は、その給付した物の返還を請求できない」と定められており、すでに返済してしまったお金に関しても、過去にさかのぼって不当利益返還請求が可能です。
一般人が闘うのは難しい
ただし、法律で返済の義務がないとされていても、実際には一般人がヤミ金の取り立てを跳ねのけるのは困難です。
恫喝や嫌がらせに対して警察に相談しても、暴力行為の証拠がない限り動いてはもらえません。
特に民事に関しては不介入が基本なので、個人で対処するには限界があります。
そのような場合、頼りになるのが弁護士です。債務整理専門の弁護士事務所であれば、本人に代わってヤミ金と交渉してくれますし、警察への被害届も提出してもらえます。
借金の取立ての対処法
ヤミ金など違法な業者は、精神的に追い詰める手口を用いてきます。
生活や仕事に影響が出る場合も多く、その状況から逃げたい一心で言いなりになってしまう人もいます。
しかし、違法な取り立てには対抗措置があります。取り立てが犯罪行為に及ぶ状況であれば「警察」へ、債務整理を含めた総合的な対処であれば「弁護士」へ相談し、有効な解決手段を講じましょう。決して自分一人で何とかしようと思わないことが大切です。
警察へ相談
警察で相談できることは、刑事罰に値する「犯罪行為」です。民事に関することには基本的に介入しないため、どのような行為が対象になるのか理解した上で相談に行きましょう。
以下のような行為は、警察で対応してくれます。
暴行、脅迫、恐喝
殴る、蹴るなどの他、胸ぐらをつかむ、肩を押すなど、人体に物理的な力を行使する行為が暴行です。
また、直接体に触れなくても、水をかける、武器を振り回す、あおり運転、大きな音を出す行為なども暴行に含まれます。
脅迫は「家に火をつけるぞ」など、言葉で相手を脅すことで、これらの暴力を用いて金品を要求するのが恐喝です。なお、暴行により負傷があった場合は「傷害罪」になり、罪が重くなります。
住居侵入、建造物侵入、不退去
個人の住居または共同住宅、艦船などに、住人や管理者の許可を得ず立ち入ると、「住居侵入罪(不法侵入)」になります。
これは未遂であっても同様で、例えば侵入目的で壁を登っているところを見つかっても刑事罰の対象です。また、住居権者から退去するよう言われても居座る行為は「不退去罪」で、住宅だけでなく店舗などにも適用されます。
名誉毀損・業務妨害
公然の場で個人のプライバシーである借金延滞を言いふらし、社会的評価を下げる行為は「名誉棄損」に当たります。
これは内容が事実か虚偽かは関係なく、行い自体が違法です。また、威力により業務の妨げになる行為を行うと「威力業務妨害」となります。
近年ではインターネットの書き込みなども、含まれるようになりました。
弁護士に債務整理の相談
返済の見通しが立たず、厳しい取り立てに悩まされている場合は、債務を整理することもひとつの選択です。
債務整理は法的な手続きが煩雑なので、多くの場合は弁護士に依頼することになります。
弁護士が受任すると、取り立てや督促が本人に来なくなるのが大きなメリットです。
また、警察への被害届や刑事告訴なども、被害者が自分で行うよりスムーズに受理されます。
以下に債務整理の3つの方法をご紹介します。
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任意整理
債権者と交渉のうえ、経過利息や将来利息のカットなどにより、元本を3年程度で分割返済する方法。
裁判所を介さないため手続きがシンプルですが、安定収入があることが条件です。
また、債権者が拒否すれば実行できなくなります。
個人再生
地方裁判所に申し立て、元本を含めた借金を法律で定められた最低弁済額まで減額する方法です。
期間は原則3年間(最長5年間)で、期間内に返済できれば残額が免除されます。
本人が所有し居住する住宅であればローンの継続が認められるため、不動産を処分することなく債務整理が可能です。
自己破産
裁判所に「破産申立書」を提出し、全ての借金の支払い義務を免除される方法です。ただし、養育費や税金などの非免責債権は除外されます。
自己破産が認められるのは破産法で定められている「支払い不能」になった場合のみで、本人が所有する時価20万円以上の資産を手放さなくてはいけませんし、官報にも掲載されます。
違法な取立ては証拠を残すことが大切
違法な取り立てを警察や弁護士に相談するときは、できるだけ多くの証拠があると有利です。
特に警察は民事不介入のため、動いてもらうには「刑事事件として立件できる証拠」が必要です。
弁護士に相談することで、どんな証拠を集めるといいかアドバイスをもらえます。また、警察へ被害届を出したり刑事告訴を行うときも、個人に対してはなかなかスピーディーに対応してもらえない場合がありますが、弁護士を通じて行うと法的根拠が整っていると見なされ、すみやかに受理されます。
貸金業者(取立人)の情報
業者名、住所や電話番号、銀行口座情報、契約書などの書類、着信履歴、留守電メッセージ、メール履歴、防犯カメラ映像、会話や電話の録音物など
例「金を返さないと殺す」「家族に被害が及ぶぞ」……などの文言は、肉声であってもメールの文面であっても、脅迫の証拠として有効です。
暴力を受けた場合の証拠
もし、肉体的な暴力行為を受けた場合は、すぐに病院を受診しましょう。ケガの程度は関係ありません。
医師に診断書を書いてもらうことで、暴力を受けた証拠になります。また、器物を破損された場合も暴力行為に当たります。
破損個所の写真を撮って、日付がわかるようにしておきましょう。あおり運転をされた場合も、ドライブレコーダーの画像が証拠になります。
窓外賠償請求も可能
弁護士に依頼することで、違法な行為で被った損害賠償請求も可能です。暴行を受けた際の治療費はもちろん、破損個所の修理費用、精神的苦痛に対する慰謝料の請求も請求できます。
また、取立てが原因で退職や休職した場合は、減収分や病気の治療費など「財産的損害」も請求できます。
まとめ
他人に相談しにくい借金の悩み。違法な取り立てで、精神的にダメージを受けている人も多いはずです。
違法行為に関しては、しっかり証拠をそろえて対抗措置を取りましょう。証拠が多いほど、後に裁判になった時にも有利です。返済の目途が立たない場合は、債務整理を専門とする弁護士に相談するのがおすすめです。
債務の問題が解決されるだけでなく、受任と同時に取り立てや督促がストップするので、通常の生活が取り戻せます。