借金

強制執行で給料差し押さえを受けた場合の対処法!

貸金業者は、借金が返済されないとわかると、お金を回収するために債務者の財産を差し押さえます。債務者が借金の返済ができない経済状態であっても、会社員であれば給料の一部を差し押さえられるのです。

給料の差し押さえは突然されるわけではなく、その前に貸金業者からの連絡や督促があるため、連絡や差し押さえの予兆に気づくことが重要です。

この記事では、給料の差し押さえがどのように行われるのか、差し押さえによってどのようなリスクが生じるのかを解説するとともに、差し押さえを防ぐ方法についても説明していきます。借金の滞納や督促に悩んでいる人は、ぜひ参考にしてみてください。

「強制執行による給料の差し押さえ」はどんなときに起こる?

強制執行では、債務者が貸金業者などの債権者に対して返済を行わなかった場合、法律に基づき強制的な手段によって債権を回収します。

貸金業者は何度も債務者に対して電話での返済意思の確認や郵送での督促、一括請求の通知をします。債務者が貸金業者からの連絡も放置していると、債権者は裁判所に申し立てを行い、差し押さえに踏み切ることになるのです。

債権者は、お金の支払いや建物の明渡しをしてくれないとき、裁判所に対して強制執行の申し立てをすることができます。強制執行による差し押さえには給料のほかに不動産、家財道具、銀行口座の差し押さえがありますが、給料の差し押さえは裁判所から会社に通知され、会社は従業員の給料の一部を指定された口座に振り込むことになります。

「強制執行による給料の差し押さえ」を受ける条件

債権者である貸金業者が差し押さえを実行するためには、次の条件を満たしていなければなりません。

  • 債権者が債務名義を取得している
  • 債務名義に執行文が付与されている
  • 差し押さえの対象となる財産を特定できている

これらの条件を満たしている場合、会社の給料が差し押さえられるリスクがあります。

債権者が債務名義を取得している

「債務名義」とは、強制執行を行なう際に必要となる公的機関が作成した文書のことです。

文書の中でどのようなものが債務名義になるかは、民事執行法22条に定められています。その中でも主なものは以下のとおりです。

  • 確定判決
  • 仮執行の宣言を付した判決
  • 仮執行の宣言を付した支払督促
  • 執行証書(債務者が強制執行を受けることを同意したことが公正証書化された借金の契約書など)
  • 調停調書

これらの文書があるかどうかが、給料差し押さえを受けるかどうかのポイントです。

債務名義に執行文が付与されている

「執行文」というのは、簡単に言うと債権者が裁判でに勝利して判決を得た際に、「判決を使って強制執行できますよ」ということを示した文章のことです。

執行文は債務名義を作成した機関に付与してらもうため、確定判決が出た場合は判決を出した裁判所、執行証書の場合は公正証書を作成した公証人が付与することになります。

差し押さえの対象となる財産を特定できている

債権者が裁判所に差し押さえを申し立てる場合は、差し押さえ対象となる財産を債権者が特定していなければなりません。

消費者金融や銀行などで借金やローンを申し込んだ場合、会社から必ず勤務先への在籍確認が行われます。勤務先を正確に把握することで差し押さえ対象の財産である給料が特定できないことを防ぐためです。

また、令和2年4月には改正民事執行法が施行されており、債権者に対する債務者の財産開示制度が強化されました。改正法では、銀行や消費者金融などの第三者に対して裁判所が債務者財産の情報を提供できる制度も創設され、債権者がより差し押さえをしやすい環境になっています。

「強制執行による給料の差し押さえ」を受けるまでの流れ

強制執行による給料の差し押さえは、いきなり行われるわけではなく、いくつかのプロセスを経て行われることになります。

ここでは、給料差し押さえまでの一連の流れとポイントについて解説していきます。

いきなり差し押さえを受けることはない

借金の滞納をしたからといって、即座に勤務先の給与が差し押さえられてしまうことはありません。債務者が決められた返済日に返済できなくなり滞納しはじめると、債権者である貸金業者などは、手紙や電話などで督促を行ないます。手紙での督促の場合、「督促状」や「催告書」という書面が送付されます。

このような督促は何度も行われますが、それでも無視し続けると、滞納が数か月続くことになります。督促を無視すると、残った借金の一括返済を求められるようになります。一括請求を受けるということは、今までのように分割返済ができなくなることを意味します。

一括請求をする段階になると、借入先も自主的な返済を促す段階から、法的措置による債権の回収へとシフトさせてしまうことになります。また、この段階ですでに借入先から債権回収会社に債権回収業務が委託されていることもあります。

訴訟が提起される

借入先からの一括請求を受けても、債務者が借金を一括返済できるケースは極めて珍しく、ほとんどの場合は返済できません。もともと分割払いでも滞納していたため、一括返済に応じるほどの資金は持ち合わせていないことが大半です。

一括請求にも応じないままでいると、借入先は債権を回収するために訴訟を提起するか、裁判所の特別送達を利用して「支払督促」が送付してきます。

借入先の会社が裁判に勝訴するか、支払督促を債務者がそのまま無視し続けると、借入先は債務名義という強制執行をするための根拠になる文書を取得し、強制執行ができるようになります。

なお、訴訟により相手の借入先との間で分割返済の和解ができた場合は、作成した和解調書も債務名義の一種となります。そのため、和解後に和解条項に記載の約束事を破った場合、債権者は再度訴訟をする必要なく、すぐに強制執行を行うことができます。

強制執行により給料差し押さえが行われる

債権者となる借入先の会社は、債務者の勤務先を特定し、裁判所に対して強制執行の申し立てを行います。裁判所が申し立てを認めると、裁判所は債務者が勤務する会社に対して、給与差し押さえを通知し、債権差押命令を送達します。

このように、裁判所が給与の差し押さえを認めた時点で、勤務先の会社のうち少なくとも何人かには借金の存在がバレてしまうのです。

また、給与の差し押さえは1か月だけではなく、債務者がその会社に勤務して給料が発生する限り、債権が完全に回収されるまで毎月続きます。

給与の差し押さえがどのくらいの期間で行われるかは借入先や滞納状況などにもよりますが、おおむね滞納後約半年前後で実際に差し押さえが始まると考えて良いでしょう。

「強制執行による給料差し押さえ」を受ける範囲

強制執行によって給料が差し押さえられる範囲は、全額ではなく一定額までと決められています。

ここでは、差し押さえられる給料の範囲、ボーナスや退職金の扱いなどについても解説します。

差し押さえの上限金額は給料の1/4まで

差し押さえをされても、給料のすべてが回収されてしまうわけではありません。

給料は労働者の生活に不可欠なもので、銀行預金などとは異なり全額差し押さえをすることができないように決められています。

民事執行法第152条1項2号では、給料の3/4は差し押さえをすることはできないと規定されています。したがって、1/4だけ強制執行で差し押さえられる対象になるということになります。

手取りが20万円の場合は5万円が差し押さえ対象になる

例えば、手取りが20万円のサラリーマンの場合、強制執行で差し押さえられる金額は20万円の1/4の5万円となります。

手取りが44万円以上の場合はさらに差し押さえ額が増える

給料の差し押さえは原則1/4までですが、この規定は生活するための収入確保という観点から設けられた決まりです。

そのため、収入が多い場合は、規定によって制限されていません。

民事執行法第152条柱書・民事執行法施行令2条では、月に1回給料日があり、手取りが44万円を超える場合は、33万円を超える範囲について全額差し押さえ対象となります。

手取りが90万円の場合33万円を超えた部分が差し押さえ対象

例えば、手取りが90万円の人の場合、90万円−33万円=57万円が差し押さえ対象となります。

このように、手取りが多いとその分差し押さえ対象も広がり、銀行口座に振り込まれるお金が大きく減り、家族に不審に思われるリスクも増加してしまいます。

ボーナスや退職金も差し押さえの対象

強制執行により差し押さえは、月々の基本給だけでなく、ボーナスや退職金にも及びます。差し押さえの額は給料と同じように計算されます。

ボーナスや退職金は基本給よりも額が大きくなるため、借金が多額の場合、債権を回収するためにかなりの金額が差し押さえられてしまう恐れがあります。

「強制執行による給料の差し押さえ」を受けるリスク

強制執行による給料の差し押さえを受けるリスクとしては、

  • 差し押さえは事前に知らされない
  • 長期間毎月給料が差し押さえられる
  • 会社に差し押さえが知られてしまう

などがあげられます。

差し押さえは事前に知らされない

給料の差し押さえも含め、差し押さえは債務者に対して事前に通知することなく実行されます。

これを強制執行の密行性と言うことがあります。通知がない理由は、債務者が事前に差し押さえられることを知ってしまうと、差し押さえ対象の財産が隠されてしまう恐れがあるからです。

そのため、債務者に対して裁判所から債権差押通知が送達された時点で、すでに勤務先の会社には同様の通知が送達されているはずです。

また、強制執行は、一般的な民事訴訟よりもスピーディーに進められます。密行性の理由と同じく、差し押さえまでの手続きに時間を要すると、債務者が財産が隠したり処分してしまう可能性が高まるからです。

これらにより、「差し押さえ前になったら返済しよう」と考えていても、実際は通知が来た時にはもう遅いということになります。督促や一括請求を無視し続けることは、差し押さえをされる大きなリスクになるのです。

長期間毎月給料が差し押さえられる

借金の滞納によって給料が差し押さえられた場合は、借入先が滞納している借金を全額回収するまで差し押さえが続きます。そのため、滞納額が多額の場合は差し押さえ期間も長くなり、勤務先にかける毎月の負担も大きくなります。

また、毎月給料が差し押さえられると、給料やボーナス、退職金が大きく目減りするため、生活への影響も出てきます。他のローンや借金などを抱えている場合は、これらの返済に苦労することになるでしょう。

また、長期間の差し押さえがあると、毎月の給料や生活面に変化があるため、家族に不審に思われたり、差し押さえがバレてしまうリスクも大きくなります。

会社に差し押さえが知られてしまう

差し押さえは会社の給料に対して行われるため、会社には差し押さえの事実が知られてしまいます。

実際に給料が差し押さえられる際には、勤務先の会社が差し押さえに相当する金額を債務者に支払わず、差押口という指定の口座に振り込む(供託)必要があります。

勤務先の会社の給料担当者にとっては、本人への給料の支払いとは別に差押口に振り込む作業が発生するため、手間が増えます。これが何年も続くとなると、会社への負担も大きくなってしまうのです。

給料の差し押さえを受けても会社をクビになることはない

給料の差し押さえを受けると会社に事実がバレますが、これによって直接解雇されることはありません。

労働基準法の上では、従業員が給料の差し押さえを受けても懲戒解雇の事由に該当せず、返済の滞納による給与差し押さえが理由で解雇することを合法とした判例も存在しません。会社が社員を解雇するには合理的な理由が必要であり、給料の差し押さえを受けても仕事をしっかりこなしていれば、解雇されることはありません。

また、会社側から見ても、給料の差し押さえは会社側の支出を増やすことにはなりません。差し押さえはこれまで支払っている従業員の給料の一部に対して行われるだけなので、会社も従業員の給料が差し押さえられたからといって直接会社に損害はありません。

ただし、会社内で差し押さえの事実が知られ、印象が悪くなる恐れはあります。場合によっては上司に辞表を書くように促されることも考えられますが、まずは弁護士などに相談し、必要な手続きを取ることが大切です。

「強制執行による給料差し押さえ」を回避するために

強制執行による給与の差し押さえを回避するためには、督促を受けた段階で借入先と話し合うこと、債務整理を検討することなどが対策としてあげられます。

督促などの段階で早めに対処する

約束通り借金の返済ができない場合は、債権者である貸金業者としっかり話し合うことが大切です。話し合いによっては、差し押さえを先送りできる可能性があります。

債権者である貸金業者などは、差し押さえを行うために手続きの時間や手間を負担する必要があるため、債務者が誠実に対応をしている場合は、できるだけ差し押さえによる回収をしたくないと考えている可能性もあります。給料の差し押さえは貸金業者にとってもメリットはないのです。

借金を滞納している人の中には、貸金業者の担当者などと話すことを恐れ、連絡を長期間無視してしまう人もいます。しかし、これでは事態がどんどん悪化していき、貸金業者も強制執行による給料差し押さえに踏み切らざるを得なくなってしまします。

給料の差し押さえを回避するには債務整理を行う

どうしても借金の返済ができないとわかったら、一刻も早く債務整理を行い、給料差し押さえを回避することが重要です。

債務整理とは借金を整理し、借金の残高を減らしたり、月々の返済額を減らす手続きのことです。債務整理には任意整理、個人再生、自己破産などの手続きがあります。

任意整理によって債権者と条件の交渉を行い、和解が成立すると、差し押さえを受ける可能性はなくなります。一方、すでに給料が差し押さえられている場合は、止めることはできないため、注意が必要です。

また、個人再生・自己破産を申し立てた場合でも、債権者が個別に財産を差し押さえることは禁止されます。個人再生・自己破産は任意整理と異なり、すでに行われた差し押さえもストップさせることができます。そのため、個人再生・自己破産の手続きすると借金を減らしつつ、今後の給料の差し押さえを止めることができるのです。

債務整理はメリットとデメリットを考えて手続きする

債務整理は主に任意整理、個人再生、自己破産の3つがありますが、いずれも強制執行による給料の差し押さえを止めることができます。

債務整理は差し押さえを止めるだけでなく、借金を整理することがそもそもの目的です。それぞれの手続きにはメリット・デメリットがあるので、適切なものを選択しましょう。

種類 メリット デメリット
任意整理 ・将来発生する利息などをカットできる
・裁判所を介さず手続きが簡単にできる
・他の債務整理よりも減額幅が小さい
・一定の収入があることが条件
個人再生 ・借金が大幅に減額される
・持ち家や車などの財産を手放す必要がない
・借金が少ない場合は認められないことが多い
・手続きが複雑で費用がかかる
自己破産 ・すべての借金が免除される
・無職や生活保護受給者でも申請可能
・家や車といった価値のある財産を手放す必要がある
・一部の職業に就くことが一時的に制限される

任意整理では、将来の利息などをカットして月々の返済を軽減することができます。返済に苦しむ人の中には、借金の利息が膨れ上がって苦しんでいるケースがあります。このような場合には、任意整理によって負担を軽減することが可能です。

また、任意整理の手続きの中で過払い金請求をすることも可能です。過払い金が発生していれば、借金残高を大幅に減らすことができるかもしれません。

個人再生は、借金が多額になるほど大幅に借金を減らすことができる手続きです。また、持ち家や車などの財産を手放さずに手続きできる可能性もあります。

最後に自己破産は、すべての借金をゼロにすることができる代わりに、家や車といった価値のある財産を手放す手続きです。

これらの中から状況に合わせて最適な手続きを選ぶことで、給料の差し押さえを回避しましょう。

デメリットがあっても債務整理すべき?

債務整理は、任意整理、個人再生、自己破産すべての手続きが信用情報に影響を与えます。

任意整理であれば5年程度、個人再生であれば7年程度、自己破産であれば10年程度新たなクレジットカードの発行や消費者金融などからの借入、ローン契約などができなくなります。

しかし、デメリットを恐れて滞納が長引くと、給料の差し押さえという最悪の結果になってしまうリスクがあります。

また、滞納が長引くと信用情報に悪影響が出ているケースも多く、放っておいても良いことはひとつもありません。

滞納が続いているということは、家計の収入や支出に見合わない借金を抱えていることが考えられるため、借金の返済を見直すために債務整理を行うべきでしょう。

差し押さえを受けそうになったら弁護士に相談

差し押さえを受けそうになったら、弁護士に相談して、債務整理を行うことを検討しましょう。

借金問題で困っており、将来的な差し押さえに不安な場合は、弁護士のアドバイスが必要不可欠です。差し押さえを受けそうになったら、一刻も早く弁護士に相談することをおすすめします。

支払督促などを受け取った直後であれば、債務整理の手続きを弁護士に依頼することで、毎月の返済や督促、差し押さえをストップさせることができます。給料がすでに差し押さえられてしまっていても、個人再生や自己破産をすることで、差し押さえをストップすることができます。

過払い金の有無の確認

弁護士に相談すれば、過払い金の有無を確認し、必要に応じて過払い金請求の手続きすることができます。特に、借入をしてからかなり時間が経っている借金は、過払い金が発生している可能性があります。

過払い金が発生していれば、過払い金請求によって払いすぎたお金を取り戻し、借金の返済に充てることができます。もし借金残高を超える過払い金があった場合は、その分を取り戻すことが可能です。

過払い金の有無は任意整理の手続きの中で確認することができるため、もし心当たりがある場合は、早めに弁護士に相談しましょう。

任意整理での解決の検討

債務整理の中でも、任意整理は最も生活への影響が少ない手続きです。将来の利息や滞納による遅延損害金などをカットできる可能性があり、返済も無理のない範囲で3~5年で完済を目指すことになります。

また、弁護士に依頼すれば家族にバレないように手続きを進めてくれます。差し押さえまで自体を悪化させてしまうと、会社だけでなく家族にもバレるリスクは高まるため、ひとりで借金問題を解決したいなら早めに任意整理に踏み切った方が良いでしょう。

おわりに

強制執行による給料の差し押さえは、借入先からの電話や督促、一括請求などに応じない場合に行われます。そのため、差し押さえ前に適切に対処をすれば、必ず防ぐことができるものだと覚えておきましょう。

給料が差し押さえられると、裁判所から会社に連絡が入るため、必ずバレてしまいます。また、差し押さえは借金が完済するまで続くため、会社に迷惑がかかるほか、自分の給料やボーナス、退職金も目減りし、生活に大きな影響が出るでしょう。

給料の差し押さえが行われそうだと感じたら、債務整理によって差し押さえを回避することが重要です。任意整理を弁護士に依頼すれば利息のカットや月々の返済額の見直しを行うことができるため、もう一度返済を無理のない条件でやり直すことができます。