そもそも個人再生とは債務整理の中においてどんな特徴があるのでしょうか。個人再生は裁判所に申立を行う手続きであり、自己破産と類似しているように感じます。しかし実態は大きく異なっています。
個人再生の特徴は現在の借金総額の「5分の1」程度を目安に減額することができる手続きです。免責許可が下りると借金がゼロになる自己破産とはまずこの点で大きく異なります。それではまず、個人再生の利用条件や手続きの種類を解説します。
個人再生には利用条件や手続きの種類とは?
個人再生の利用条件には,民事再生法で定められた再生手続開始の要件をクリアする必要があります。また、自己破産とは異なり減額後の借金を債権者へ返済できる能力が必要です。
個人再生における2つの利用条件
①再生計画に沿って返済できる能力があること
個人再生は借金を再生計画に沿って返済を行います。この再生計画は裁判所が認可を行う際に収入状況を給与明細等で確認し、返済能力があるかどうか確認されています。返済能力が乏しい場合には計画の見直しを行い、利用条件を満たせない場合は自己破産を検討します。
できれば安定した正社員や個人事業主としての収入があることが望ましいですが、アルバイトやパートでも勤務歴が長く収入が安定していれば認められています。家族の協力を得ていることで認可がスムーズなケースもあります。
②借金の総額が5000万以下であること
借金の総額が5000万以上ある場合や、法人の借金を裁判所に申立をして減額する場合は個人再生ではなく民事再生という条件の下で進めることになります。個人再生は5000万以下の借金総額であることが利用条件の1つです。
ここで1つ気になるのは住宅ローンの取り扱いです。住宅ローンだけで数千万の借金になっている方もいます。この場合「住宅ローン特則」を使うことで5000万の中に住宅ローンの残債を含まずに手続きが可能です。
この2つの条件は個人再生の方法である「小規模個人再生」および「給与所得者等再生」のいずれにも適用される共通の利用条件です。
個人再生には2種類の選択肢がある
個人再生には2種類の方法があります。1つ目は「小規模個人再生」、2つ目は「給与所得者個人再生」です。後者の給与所得者個人再生は全国的に手続数は少なくなっており、基本的には小規模個人再生による手続きが一般的です。
1つ目の「小規模個人再生」は本来個人事業主のための民事再生として作られた手続きです。原則3年以内に返済する再生計画を提出し、認可を求めます。最低弁済額と清算価値のいずれか高い方を返済します。
小規模個人再生は再生計画案を各債権者に対して裁判所を経由して提出し、同意を求めることが必要です。債権者の過半数以上の同意が小規模個人再生の利用条件となっています。
2つ目の「給与所得者個人再生」は給与所得者のための民事再生として作られた手続きです。そのため個人事業主は利用条件の対象外です。最低弁済額と清算価値に加え可処分所得の2年分についても提出し、一番高い方を返済します。
給与所得者個人再生は債権者の同意を求める必要が無く、一見するとメリットがあるように見えます。しかし、可処分所得の2年分が大きな負担です。給与所得者個人再生の方が返済金額が大きくなることが多いため、あまり利用されていません。
給与所得者個人再生ならではの利用条件には、給与変動についてが挙げられます。給与変動が年間20%以下であることが利用条件となっており、この幅を超えると認可が下りません。
個人再生と自己破産の違いとは?自己破産が難しい場合には個人再生を
裁判所に書類と提出して手続きを進める点では、個人再生と自己破産は類似しています。しかし、個人再生には自己破産にはない制度があり、利用条件を満たせばメリットが大きい手続きです。
自己破産には無い「住宅資金特別条項」とは
自己破産は借金がなくなる手続きのため、3つある債務整理の中でも最も効果が高い手段と言えるでしょう。一方で失う財産も多いのがデメリットです。預貯金や保険はもちろんのこと、大切な家も失ってしまいます。
そこで、個人再生には自己破産には無い「住宅資金特別条項」(通称・住宅ローン特則)という制度が設けられています。大切な家を守るために用意された制度で、住宅ローンを債権者としない方法です。
住宅資金特別条項の4つの利用条件
住宅資金特別条項を使うためには4つの利用条件を満たしている必要があります。では1つずつ解説していきましょう。
住宅資金特別条項を使うためには4つの利用条件を満たしている必要があります。
1つ目は「申立人が所有し、居住するための住まい」であることです。両親のためにプレゼントした別宅や、別荘は該当しないので注意が必要です。なお、単身赴任等の理由で一時的な不在なら裁判所が認めることが多いでしょう。
2つ目は「住宅資金貸付債権」であることです。あくまでも住宅ローンであることが利用条件であり、ノーローンや事業ローンなどは該当していません。なお、住宅ローンであればリフォームローンも利用条件を満たしています。
3つ目は「滞納が無いこと、もしくは代位弁済から6か月以内である」ことです。滞納が続きすでに保証会社による代位弁済が行われ、6か月を超えてしまった場合には利用条件を満たせません。
4つ目は「住宅ローン先以外の抵当権がない」ことです。住宅ローン先以外の債権者が既に抵当権を付けている場合には利用できません。
このように住宅資金特別条項には利用の条件があります。適用できる場合には滞納が無ければ今まで通り住宅ローンの返済を続ければよく、滞納がある場合には遅延分を弁済するか、リスケジュールを行います。
個人再生は自己破産よりも制限が少ない?資格制限や免責不許可事由はある?
個人再生は借金が減額できますが、自己破産と同様に信用情報機関に事故情報も登録され、債務の返済も続きます。しかし、個人再生には自己破産と比べると制限が少ないのです。
個人再生には資格制限がない
自己破産は破産手続中の一定期間において「資格制限」が実施されています。税理士や司法書士等の士業、警備員や保険外交員など幅広い職種が対象となるのです。一方で個人再生には資格制限はありません。
個人再生の手続き期間中であっても自己破産なら資格制限となる職種でも、業務上に影響はありません。この点は個人再生のメリットと言えるでしょう。
個人再生には免責不許可事由はない
自己破産の場合、ギャンブルや遊興費等が原因で借金が膨らんだ場合、「免責不許可事由」に該当するため自己破産ができない可能性があります。特に悪質な理由で借金を重ねた場合には免責許可を得ることは容易ではありません。
一方で個人再生には免責不許可事由はありません。免責不許可事由に該当する可能性がある場合には、最初から個人再生で申立をすることも視野に入れましょう。
個人再生と自己破産はどちらを選ぶべき?
個人再生と自己破産は借金が残るか否か、住宅ローンを除外できるか否かなど大きな違いがあります。では、個人再生と自己破産に悩んだらどちらを選択すると良いでしょうか。
住宅資金特別条項を使いたい、資格制限を受けたくない場合などは個人再生を 選択することが基本です。しかし、先に解説のとおり、個人再生には細かい利用条件があります。
加えて、住宅資金特別条項を使う場合、既に滞納が発生している場合には使えなくなる可能性があります。まずは早急に法律相談を受けることが理想です。
個人再生の手続きは誰に相談できる?借金の相談は迷わず法律家へ
この記事では個人再生における利用条件に重きを置き、自己破産との比較も解説しました。個人再生は借金がなくなるわけではありませんが、自己破産と比較するとメリットとなる条件もたくさんあります。
しかし、個人再生は大変難しい手続きであり、裁判所によっては手続きに再生委員も選任され厳しく監督されます。難解な書類も多いためまずは弁護士や司法書士へ相談し、個人再生が利用できるか確認をしましょう。