これまで消費者金融を利用したことがない方は、過払い金請求の話を聞いても、他人ごとと考えているかもしれません。
実はクレジットカードのキャッシングについても、過払い金請求の対象に含まれるのです。
この記事では、
- なぜクレジットカードのキャッシングも過払い金請求ができるのか?
- クレジットカードで過払い金請求ができない4つのケース
- 過払い金請求ができる可能性があるクレジットカード会社
- 過払い金請求を行う際に注意しなければならない点
などなど、クレジットカード会社を利用している方の過払い金請求について解説します。
この記事を読めば、過払い金請求ができるクレジットカード会社やその特徴について理解できるので、過払い金を取り戻せるかもしれません。
クレジットカードのキャッシングも過払い金請求ができる
過払い金請求は、クレジットカードのキャッシング枠を利用してお金を借りていた人も可能です。
実際に日本貸金業協会発表の月次実態調査詳細時系列データによれば、消費者金融だけでなく、クレジットカード会社に対しても過払い金請求が行われていることがわかります。
たとえば、令和2年7月を例にとると、過払い金請求金額のうち41.2%がクレジットカード会社などに対してのものです。
発表時期※ | 消費者金融業態 | クレジット業態等 |
---|---|---|
令和2年4月 | 56.7% | 43.3% |
令和2年5月 | 61.2% | 38.8% |
令和2年6月 | 63.5% | 36.5% |
令和2年7月 | 58.8% | 41.2% |
※令和2年4月については確報値、5月以降については速報値
(データ引用元:月次実態調査詳細時系列データE2利息返還金シェア|日本貸金業協会)
では、なぜ消費者金融だけでなく、クレジットカード会社に対しても過払い金請求ができるのでしょうか?
それは多くのカード会社が、年利15%〜20%を超える金利でお金を貸していたからです。
過払い金は、利息制限法に定められている年15%〜20%を超えている金利で借金をしていた場合に、取り戻せる利息のことです。
そして、過払い金請求が行われるようになったのは、平成18年1月13日に最高裁判所で、利息制限法を超えての弁済が有効でないという判決が出されたのがきっかけです。
3 利息制限法所定の制限を超える約定利息と共に元本を分割返済する約定の金銭消費貸借において,債務者が,元本又は約定利息の支払を遅滞したときには当然に期限の利益を喪失する旨の特約の下で,利息として上記制限を超える額の金銭を支払った場合には,債務者において約定の元本と共に上記制限を超える約定利息を支払わない限り期限の利益を喪失するとの誤解が生じなかったといえるような特段の事情のない限り,制限超過部分の支払は,貸金業の規制等に関する法律43条1項にいう「債務者が利息として任意に支払った」ものということはできない。
(データ引用元:最高裁判所判例集|裁判所)
当時は、消費者金融だけでなく、多くのクレジットカード会社も利息制限法を大きく超える金利でお金を貸していました。
平成18年1月13日の判決をきっかけとして、多くのクレジットカード会社も、平成18年〜平成19年頃にキャッシングの金利を利息制限法の範囲内に改めるようになったのです。
そのため、当時からクレジットカードを利用していた方のなかには、過払い金請求ができる可能性がある方もいます。
また、クレジットカードの返済方法として、リボルビング払いと呼ばれる、毎月の返済額を一定にできる方法もあります。
リボルビング払いは、毎月の負担額が減るので、収入が高くない方には、便利な返済方法です。
しかし、リボルビング払いはいくら借金をしても毎月返済する金額が少ないので、返済期間が長引く傾向があります。
返済期間が長引けば、利息もその分膨らむため、いつまで経っても完済できないこともあるのです。
以下の事例は、50万円のキャッシングを年18.0%の金利で借りた場合の最終的に支払う利息金額です。
借金額50万円に対して最終的に支払う利息も20万を超えていることがわかります。利息制限法を超える金利を取られていれば、さらに支払う利息は膨らみます。
このように、クレジットカードでリボ払いをしている方も利息が多くなりがちです。そのため過払い金請求をすることで、取り戻せる金額も多くなります。
クレジットカードを利用しても過払い金請求ができない4つのケースとは?
クレジットカードを利用していれば、必ず過払い金請求ができるとは限りません。以下のように、過払い金請求ができないケースもあります。
- クレジットカードのショッピング枠は過払い金請求の対象外
- 返済が終了した日から10年以上経過している
- 利息制限法に定められた年15%〜年20%を超える金利で借金をしたことがない
- クレジットカード会社が倒産している
1.クレジットカードのショッピング枠は過払い金請求の対象外
まず、クレジットカードのショッピング枠は過払い金請求の対象には含まれません。
なぜならショッピング枠に適用される法律は、利息制限法ではなく、割賦販売法だからです。
利用枠 | 適用される法律 | 支払う手数料や利息の上限 |
---|---|---|
ショッピング枠 | 割賦販売法 | なし |
キャッシング枠 | 利息制限法 | 年15%〜年20% |
そもそも、ショッピング枠を利用して支払ったお金は、借金をして支払ったわけではないので、利息はつきません。
そのため、過払い金の対象である利息を取り戻せないので、ショッピング枠の費用については、過払い金請求の対象外です。
では、なぜショッピング枠を利用すると、支払いができるのでしょうか?その理由は、ショッピング枠から支払っている費用は、クレジットカード会社が利用者の代わりに立て替えて支払っているからです。
そして、利用者が毎月カード会社に対して支払っているお金は手数料として扱われます。以上の理由から、クレジットカードのショッピング枠は過払い金請求の対象外とされています。
2.返済が終了した日から10年が過ぎている
クレジットカードのキャッシング枠を利用してお金を借りた場合、過払い金請求の対象になる可能性があります。
ただし、返済が終了した日から10年が過ぎている場合は、過払い金請求ができなくなるので注意が必要です。
その理由は、民法第166条に定められている通り、過払い金には時効があるからです。
(債権等の消滅時効)
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
(データ引用元:民法第166条|e-Gov)
クレジットカードのキャッシング枠で借りたお金であっても、最後に返済した日から10年が過ぎていれば、過払金の請求ができなくなります。
そのため、時効がくる前に過払い金請求をする必要があります。
3.利息制限法に定められた年15%〜20%を超える金利でキャッシングをしたことがない
クレジットカードでキャッシングをしても、利息制限法に定められた年15%〜20%を超える金利で借金をしたことがなければ、過払い金請求ができません。
過払い金請求は、支払いすぎた利息を取り戻すために行います。
キャッシングしたときの上限金利が年15%〜年20%の範囲内であれば、過払い金請求の対象にはならないのです。
4.クレジットカード会社が倒産している
過去にクレジットカード会社からキャッシングをしている場合でも、カード会社が倒産している場合は、過払い金請求ができません。
ただ、会社が倒産する段階で、民事再生や自己破産などの法的手続きを行う際に、債権者に対して配当金などを支払います。
そのため、過払い金について戻ってこないものの、配当については請求できます。ただし、配当金額は過払い金と比べるとはるかに少ない金額にしかなりません。
たとえば、平成20年に沖縄のクレジットカード会社である株式会社オークスが破綻した際に支払われた配当金は、ほんのわずかな金額でした。
過払い金額 | 配当として戻ってくる金額 |
---|---|
10万円まで | 全額 |
10万円超〜300万円 | 過払い金の1割 |
300万円超 | 過払い金の0.5% |
そのため、すでに過払い金請求を行う予定の会社が倒産している場合は、ほとんどお金が戻ってきません。
ただし、すでにカード会社が存在していなくても、別の会社に吸収合併されており、過払い金の債権者が代わっていれば、過払い金請求ができる可能性があります。
たとえば、ライフカードは、平成23年に消費者金融大手のアイフルに吸収合併されているため、アイフルに対して過払い金請求をすることになります。
また、倒産はしていなくても、経営状況が著しく悪い会社の場合は、過払い金請求の交渉に応じても、低い過払い金額しか提示しないことがあります。
ただ諦める必要はありません。
カード会社が提示する過払い金額が低い場合でも、裁判まで持ち込めば、過払い金を多く支払ってもらえる可能性があります。
まずは弁護士や司法書士に相談しましょう。
過払い金請求ができる可能性があるクレジットカード会社
過払い金請求ができる可能性があるクレジットカード会社を解説します。
もし過去に以下のカード会社を利用していた場合は、過払い金請求ができるかもしれません。
過払い金請求ができる可能性がある会社 | キャッシングの金利を利息制限法の範囲内にしていない時期 |
---|---|
アプラス | 平成18年2月12日 |
エポスカード | 平成19年3月以前 |
セゾンカード | 平成19年7月14日 |
UCカード | 平成19年6月11日 |
オリコカード | 平成19年3月31日 |
三菱UFJニコス | 平成19年3月以前 |
OMCカード | 平成19年9月以前 |
たとえば、エポスカードは、平成19年3月以前まで、利息制限法の金利を超える27%の金利で、貸し出していたことがあります。
そのほか、セゾンカードでも平成19年7月14日以前は、24%〜25%前後の金利でお金を貸していました。
また、最高裁で利息制限法を超える金利での貸し出しが無効と認められた後、すぐに利息制限法に定められた金利に改正した会社もあれば、1年以上経過して金利を改正したカード会社もあります。
いつキャッシングの金利を利息制限法で定められている金利に変更したのかについても、調べておきましょう。
クレジットカードの過払い金請求を行う際の注意点
過払い金請求の対象者であっても、過払い金請求を行う際に注意しておくべきことは以下の5つです。
- 過払い金請求を行うと、対象のカードが使えなくなる
- 過払い金請求を行っても、借金を完済できない場合はブラックリストに載ってしまう
- 過払い金よりもショッピング残高が多ければブラックリストに載る
- 別のカードも利用している場合、すべてのカードが過払い金請求の対象になる
- 過払い金請求は弁護士や司法書士に依頼するのがおすすめ
もし、知らずに過払い金請求を行った場合、後悔する可能性もあります。事前に注意点を把握しておきましょう。
1.過払い金請求を行うと、そのカード会社のクレジットカードが使えなくなる
過払い金請求を行うと、そのカード会社のクレジットカードは解約扱いになります。
カードが使えなくなるため、以下のようなサービスも利用できなくなります。
- 貯めたポイントが交換できず失効する
- クレジットカードに付帯するサービスの利用
- 携帯料金やサービスの月額料金などの支払いができなくなる
カードにポイントがたくさん貯まっている場合は、よほど返済が厳しくない限り、過払い金請求をする前に交換しておいた方が良いでしょう。
また、毎月携帯料金や何かしらの月額料金の引き落とし先にカードを設定している場合も注意してください。
過払い金請求をする前に他の支払方法に変えるか他のカード会社から支払うようにしておきます。
2.過払い金請求で借金を完済できない場合はブラックリストに載る
すでに返済が終了したクレジットカード会社に対して過払い金請求を行った場合は、社内ブラックに載ることはあっても、信用情報機関に情報が記載されません。
そのため、他のカード会社の審査やローン審査に悪影響はないので安心です。
ところが、現在も返済を続けているカード会社に対して過払い金請求をする場合は、注意しなければなりません。
仮に、過払い金請求をしても、借金を全額返済できなければ、債務整理の手続きをしたことになるため、ブラックリストに載ってしまうからです。
返済期間中に過払い金請求をするときは、事前に返済途中の借金よりも多くの過払い金を取り戻せそうか調べておいたほうが良いです。
どのぐらい過払い金を取り戻せるかは、弁護士事務所や司法書士事務所の経験や実績により異なります。そのため、まずは弁護士事務所や司法書士事務所に相談してから、過払い金請求を検討すべきです。
3.過払い金請求を行う際にショッピング残高が残っているとショッピング残高と相殺される
クレジットカード会社に対して過払い金請求を行う際にショッピング残高が残っている場合は、過払い金がショッピング残高と相殺されます。
ただ、取り戻せる過払い金がショッピング残高よりも少ない場合は、ショッピング残高をすべてを相殺できるわけではありません。
したがって、カード会社に対して任意整理の手続きをしたことになり、ブラックリストに載ってしまいます。
取り戻せる過払い金額がショッピング残高を下回りそうな場合は、先にショッピング残高を減らしてから、過払い金請求を行えば、ブラックリストに載ることはありません。
4.別のカードも利用している場合はすべてのカードが過払い金請求の対象になる
過払い金請求は、それぞれのカードごとではなく、クレジットカード会社ごとに行います。
したがって、過払い金請求の対象には、利用しているカードだけではなく、そのカード会社が発行した別ブランドのカードも含まれます。
また、カード会社が合併した場合、合併先のカードも使えなくなる可能性があるので注意しましょう。
5.過払い金請求は弁護士や司法書士に依頼するのがおすすめ
過払い金請求を行う際は、以下の理由から弁護士や司法書士に依頼することをおすすめします。
- 自分で請求を行った場合、過払い金を満額取り戻せない可能性が高い
- 弁護士や司法書士に依頼をすれば、督促や取り立てが止まる
- 必要書類の準備や面倒な手続きも代行してくれるので楽
過払い金請求を自分で行った場合、費用を抑えられます。ただ、クレジットカード会社との交渉を自分で行わなければなりません。
クレジットカード会社は、最初に本来の過払い金よりも低い金額を提示してくることが多いので、交渉せざるを得なくなります。
さらに、和解になった場合、低い金額しか取り戻せない可能性もあります。
しかし、弁護士や司法書士なら、過払い金請求についての知識や経験もあるため、多くの金額を取り戻せる可能性が高くなります。
また、自分で過払い金請求を行った場合、督促や取り立てが止まることはありません。
一方、弁護士や司法書士に依頼をすれば、過払い金請求をする旨が記載された受任通知を送ってもらえるので、督促や取り立てが止まります。
必要書類の準備や面倒な手続きも代行してくれるので、弁護士や司法書士に依頼した方が精神的にも楽です。
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過払い金請求をする際の手順
過払い金請求の手順について知っておけば、過払い金請求を行う際に、何からやれば良いのかわかるようになります。
以下の手順に沿って過払い金請求を行います。
- まずは弁護士や司法書士に相談
- クレジットカード会社に受任通知を送ってもらい、取引履歴を取り寄せる
- 過払い金の引き直し計算をする
- クレジットカード会社に対して過払い金請求を行う
- カード会社と交渉を行う
- 裁判で過払い金が確定
1.まずは弁護士や司法書士に相談
以前キャッシングを利用していた、あるいは現在もキャッシングを返済しているクレジットカードが以下の条件にあてはまる場合は、弁護士や司法書士へ相談します。
- 最後の返済日から10年経過していない
- 過去に年利15%〜年20%を超える金利でキャッシングを利用したことがある
弁護士や司法書士に相談することで、過払い金についての相談にのってもらえたり、正確な過払い金を計算してくれます。
相談料無料の事務所もあるので、ぜひ活用しましょう。
2.クレジットカード会社に受任通知を送ってもらい、取引履歴を取り寄せる
弁護士や司法書士への相談後、弁護士や司法書士は、クレジットカード会社に対して受任通知を送ります。
受任通知がカード会社に届けば、督促や取り立てはすぐに止まります。
同時に過去のクレジットカードの取引履歴も請求するので、いつから取引を開始したのかわからない場合でも、過払い金の請求が可能です。
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3.過払い金の引き直し計算をする
クレジットカード会社から取引履歴が届けば、弁護士や司法書士が過払い金の引き直し計算を行ってくれます。
過払い金の引き直し計算をすることで、
- そもそも過払い金請求の対象なのか
- 取り戻せる過払い金がいくらなのか
がわかります。
過払い金の引き直し計算を無料や格安でやってくれる弁護士事務所や司法書士事務所も多いので、一度引き直し計算をしてもらうことをおすすめします。
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4.クレジットカード会社に対して過払い金請求を行う
過払い金の引き直し計算を行った結果、過払い金があれば弁護士や司法書士を通して、クレジットカード会社に過払い金の請求を行います。
この時点ではまだ交渉で解決するのか訴訟を起こすのかはわかりません。
5.クレジットカード会社と交渉を行う
弁護士や司法書士がクレジットカード会社と書面や電話で過払い金請求の交渉を行います。
交渉の結果、双方が合意すれば和解になり過払い金が返還されます。和解の場合、過払い金が戻ってくるまでの期間は短いです。
ただし、裁判をするよりも戻ってくる過払い金が少ない傾向があります。交渉内容に満足できない場合は、裁判で解決するしかありません。
6.裁判で過払い金が確定
裁判の結果、過払い金が確定します。裁判になった場合、和解よりも時間はかかりますが、より多くの過払い金が戻ってくる可能性が高いです。
過払い金を満額取り戻したい場合は、和解ではなく、裁判をする必要があるので注意しておきましょう。
このように、過払い金請求を弁護士や司法書士に依頼すれば、手続きを任せられるので、手間をかけずに解決できるので楽です。
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おわりに
クレジットカードでキャッシングをした場合も過払い金請求ができます。ただし、ショッピング枠については過払い金請求の対象外です。
また、クレジットカード会社に過払い金請求をする場合、
- 過払い金請求をしたカードが使えなくなる
- ショッピング残高が残っていると過払い金と相殺される
など、注意しなければならない点もあります。
クレジットカードを利用していた場合は、過払い金請求ができる可能性があるので、弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。