「銀行口座って本当に差し押さえになるの?」「給料も合わせて全額持っていかれる!?」「実際に強制的に取り立てられるの……?」といった悩みや疑問を持っていませんか?
銀行口座の差し押さえは日々実際におきていることです。支払いに苦労しているなか、差し押さえになってしまうのは困るという人も多いでしょう。
しかし、差し押さえを回避する方法はいろいろとあるのも事実です。
今回、銀行座の差し押さえの流れや回避策、借金を減らす方法などを紹介していきます。
銀行口座の差し押さえとは滞納分の強制徴収
銀行口座の差し押さえとは、滞納し続けた金融機関からの借金などを口座から強制的に取り立てられることです。
裁判所からの許可を得た上でおこなわれているので、差し押さえが始まってから預金を守ったり後から取り戻したりするのは難しいです。ここでは、口座を差し押さえられる原因などを解説していきます。
口座を差し押さえられる原因
口座を差し押さえられる原因は、税金や借金の滞納です。税金や借金には支払う義務があるので、踏み倒すといった行為はできません。
たとえば下図は岩手県で発生している差し押さえ件数です。
(引用元:自主納付件数と差押件数の推移|岩手県)
差し押さえの発生率自体は0.1%と低くなっています。しかし、個人県民税を除いた岩手県の発生件数だけで896~1550という数字になっています。
つまり、「滞納を催促するために差し押さえるといっているだけだろう」と考えて滞納し続けていると、本当に差し押さえられるわけです。また、滞納すると延滞利息や遅延損害金などを払わなければいけなくなり、支払う金額が大きくなってしまいます。
しかし、借金などの支払いを滞納したからといって、すぐに差し押さえが始まるわけではありません。なぜなら裁判所への申し立てや預金のチェックといった作業が必要だからです。
借金を滞納している場合であっても、収入の状況や対応の姿勢しだいで一時的に返済額を小さくしてもらったり、返済計画を修正してもらえたりする可能性もあります。
滞納している場合は、金融機関や役所などに相談して返済計画を立て直してみてください。
口座の預金を含めて差し押さえられるもの
差し押さえの対象は口座の預金だけではありません。差し押さえられる可能性のあるものをまとめて紹介すると、以下のとおりです。
- 給料
- 現金
- 貴金属
- 機械
- 有価証券
- 不動産(家や土地など)
差し押さえ対象者の生活が立ち行かなくなるほどの差し押さえはできないので、66万円以下の現金や衣服などは対象にならないルールもあります。
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差し押さえの基本は給料や口座の預金
差し押さえの金額にもよりますが、給料や口座の預金は対象になりやすいです。しかし、給料も全額差し押さえとはなりません。
具体的には、手取りが44万円以下なら4分の1は差し押さえられ、手取りが44万円を超える人は33万円を差し引いた金額が差し押さえられます。
また、ネット銀行の預金は債権者(差し押さえる側)が口座の存在を知っていれば差し押さえられます。
銀行名や支店名などを債権者に伝えていなければ、差し押さえの対象にならない可能性もあります。しかし回収する金額になるまで取り立ては続き、他の財産などが差し押さえの対象になるので注意が必要です。
そして、基本的に車は差し押さえの対象になりません。なぜなら、車の差し押さえには手間がかかり、費用も20万円ほどかかるからです。高級車などでないなら、車の差し押さえは心配しないで良いでしょう。
給料振り込み直後に口座全額の差し押さえは基本的にされない
銀行口座が差し押さえの対象にはなりますが、基本的に給料の振り込み直後には口座の差し押さえはされません。
国税庁「差押禁止債権が振り込まれた預貯金口座に係る預貯金債権の差押えについて(指示)」では、下記のように記載されています。
給料等が振り込まれた預金債権に対して差押えを執行した場合、滞納者の生活状況等の勘案により、そのまま全額を取り立てることが不適当と認められれば、明確な規定はないものの、差押禁止制度の趣旨などから、給料等であれば差押禁止となっていた額を限度として差押えの解除が認められると解することもできる。
(引用元:差押禁止財産に関する考察|国税庁)
つまり、口座の全額を差し押さえて滞納者が生活できなくなるなら止めましょうということです。
差し押さえ可能なのは手取り44万円以下なら4分の1まで、手取りが44万円以上なら33万円を差し引いた金額までになります。
口座を差し押さえられるタイミングの目安
口座を差し押さえられて預金を取り立てられるタイミングの目安は、給料日から10日ほどたってからになります。
国税庁「差押禁止債権が振り込まれた預貯金口座に係る預貯金債権の差押えについて(指示)」では、預金の取り立ては差し押さえた日から10日間ほどの間隔を置いてからおこなうとべきと記載されています。
口座の差し押さえをする側は、給料の振り込みがあった後にお金を回収しやすいと考えます。10日間ほどの猶予はもらえるものの、給料を振り込まれた後に口座の預金を取り立てられる可能性は高いでしょう。
口座差し押さえの期間
差し押さえ自体は回収する金額になるまで続きますが、口座の差し押さえは基本的に1回のみです。2度3度と口座の差し押さえをするには、差し押さえの度に手続きをしなければなりません。
なお、口座ではなく給料自体の差し押さえが続きます。給料の差し押さえ後に残った金額まで差し押さえられることはありません。ただし、口座の預金などを差し押さえられても口座自体は使えるので、入金なども可能です。
しかし、手続きすれば口座の差し押さえされることを忘れないようにしましょう。一度差し押さえられた口座だからといって、生活を切り詰めてつくったお金や残った財産を現金化してまとめて入金するといったことは避けましょう。仮に再調査をされて差し押さえの手続きをもう一度してでも取り立てる価値があると判断されてしまうと、再度口座の差し押さえとなる可能性があります。
口座の差し押さえが解除されるケースがある
例外的に口座の差し押さえが解除されるケースがあります。具体的には、差し押さえをする側に不備や不当な行為があった場合です。
たとえば、以下のようなケースが考えられます。
- 税金の滞納による差し押さえなのに課税の計算にミスがあった場合
- 禁止されている領域まで差し押さえをしている場合
- 債務整理(個人再生と自己破産)をする場合
債務整理以外のケースは不当な差し押さえになるので、解除と返金が可能です。しかし、あくまでも例外的なケースになります。債務整理(個人再生と自己破産)はタイミングにもよりますが、裁判所の強制執行を止められるので差し押さえの解除も可能です。
ただし、いずれの場合でも裁判所への申し立てが必要になります。個人でおこなうのはどうしても難しい部分があるので、早めに弁護士に相談するのがおすすめです。
口座差し押さえにより予想される問題3つ
口座が差し押さえられると、発生が予想される問題が3つあります。具体的には以下のとおりです。
- 会社に差し押さえられたとバレる
- 家族や同居人にバレる
- 生活にさまざまな影響が出る
会社に差し押さえられたとバレる
口座が差し押さえられると、会社に差し押さえされたとバレる可能性が高いです。なぜなら、口座と合わせて給料が差し押さえの対象になりやすいからです。
口座の差し押さえ命令は銀行などの金融機関にいくので、口座の差し押さえだけで会社にバレることはありません。しかし、口座差し押さえへの調査がされているなら、給料の支払い状況の調査が会社にされていることが多くあります。
差し押さえをする側は、口座に毎月振り込まれる給料(給与債権)を取り立てる方がお金を回収できると考えます。そして、裁判所から命令が出ると会社に連絡が入って会社に差し押さえの事実、ひいては借金の返済などを滞納しているとバレてしまいます。
そのため、差し押さえをされると、借金などを滞納している事実を高い確率で会社に知られます。
差し押さえの前であれば、バレることを防ぐことができます。過払い金請求や債務整理などを早めに検討するがおすすめです。
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家族や同居人にバレる
家族や同居人にも差し押さえや借金返済の滞納などをしている事実がバレます。
家計の管理をまかせていると、給料の入金を確認をされたときにバレてしまう可能性が高いです。口座の貯金を差し押さえられると「サシオサエ」や「サシオサエトリタテザンキン」などと通帳に記載されます。
また、差し押さえになるまでに金融機関や裁判所から送られてくる書類でもバレてしまうでしょう。
なお、自分以外の人の財産まで差し押さえにはなりません。しかし、差し押さえや借金の返済に苦労している事実が明らかになって、人間関係にまったく影響がないとは言い切れません。後で詳しく紹介する借金減額の方法などを参考に、問題が深刻になる前に対策を始めましょう。
生活にさまざまな影響が出る
差し押さえになると生活に影響が出る可能性は高いです。口座の預金や給料の差し押さえで当座の生活資金が減るのはもちろん、他にも以下のような影響があるからです。
- 金融機関から新しい借金はできない
- 各種ローンを組めない
- 保証人になれない
- スマートフォンなどの分割払いができない
- クレジットカードの発行や利用ができない
差し押さえされると信用情報に事故の情報がのって、いわゆるブラックリスト入りした状態になるからです。
なお、差し押さえの命令が裁判所から出るまでに借金を減らせれば、ブラックリスト入りを回避することができます。たとえば、過払い金請求によって借金を完済できた場合は、ブラックリスト入りを回避できるのです。
滞納先の確認方法
ここからは、滞納先のどこから差し押さえをされたかを確認する方法を解説していきます。借金や税金、保険料など、滞納先が複数あるなら必ず確認しましょう。
なお、差し押さえられた口座には「サシオサエ」程度しか書かれず、どこが差し押さえの手続きをしたのかまではわかりません。したがって、滞納先の確認は自分でする必要があります。
確認方法は、届けられた書類を確認することです。
裁判所から書類があるなら、内容を見れば差し押さえをした相手がわかります。税金などの公的な支払いの滞納が原因だった場合は役所にいきましょう。借金返済の滞納が原因だった場合は、弁護士に依頼して金融機関と交渉していくのがおすすめです。
口座差し押さえまでの流れと各ステップの対応方法
口座の差し押さえは大きく分けて6つのステップに分かれており、各ステップでやるべきことが変わります。
具体的なステップは以下のとおりです。
- 支払い催促の連絡が督促状が届く
- 一括請求をされる
- 差押予告通知が届く
- 支払督促をされる
- 仮執行宣言付支払督促をされる
- 差し押さえ
各ステップの詳細と対応方法を解説していきます。
1.支払い催促の連絡が督促状が届く
まず、「支払い催促の連絡」や「督促状」の受け取りです。
支払うべき金額や支払いの期日、返済の方法などが記載されています。差し押さえまでは猶予がある状況です。
しかし、支払いを滞納していると延滞利息や遅延損害金などが発生するため、早めに支払うのがおすすめです。どうしても支払いが難しいなら、滞納先に連絡して交渉してみましょう。
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2.一括請求をされる
支払い催促の連絡や督促状が来ても、借金を滞納し続けていると「一括請求の通知」がきます。
一括請求をするタイミングは借入先によって異なりますが、おおよその目安としては滞納から2ヶ月です。滞納している金額や延滞利息などをまとめて払わなければいけません。一括請求で支払うことができれば、差し押さえは回避できます。
3.差押予告通知が届く
一括請求がきても滞納し続けると、「差押予告通知」が届きます。
差押予告通知といっても、まだ法的な拘束力はありません。あくまでも支払わないと差し押さえるべく裁判をおこすという通知になります。差押予告通知が届く目安は、滞納から3ヶ月程度です。
まだ差し押さえの回避は可能ですが、延滞利息や遅延損害金が発生します。早急な支払いや借金減額にむけた行動が必要です。
4.支払督促をされる
差押予告通知を受け取ってから2週間から4週間ほどたつと、裁判所から「支払督促」が送られてきます。
すでに裁判所に話が届き、自分と金融機関などの間だけの話しではなくなった状況です。
差し押さえを止める方法は、同封されている異議申し立て書の提出と出廷となります。
自力で申し立てをするのはハードルが高く、期限も2週間以内なので調べながら対応するのも難しいです。そのため、借金や債務整理が得意な弁護士に依頼するのがおすすめです。
5.仮執行宣言付支払督促をされる
支払督促をされてから2週間以内に異議申し立て書を提出しなかった場合、裁判所から「仮執行宣言付支払督促」が届けられます。
差し押さえを申し立てを裁判所が許可して、差し押さえが目前にせまっている状況です。
なお、仮執行宣言付支払督促にも異議申し立て書が同封されています。2週間以内に異議申し立てをすれば、差し押さえを回避することができます。
6.差し押さえ
仮執行宣言付支払督促をされてから2週間以内に異議申し立て書を提出しなければ、差し押さえが強制執行されます。
会社や家族にバレたり、ブラックリスト入りしてしまったりする問題が発生してしまいます。
取り立てが始まるまでには少し時間があり、タイミングしだいでは差し押さえを回避する手段も残されています。具体的には債務整理(個人再生と自己破産)です。個人でおこなうにはどうしてもハードルが高い部分があり、時間に余裕もないので早めに弁護士へ相談するべきです。
公正証書を作成している場合は差し押さえまでの期間が短い
公正証書を作成している場合は、一括請求などのステップを飛ばして差し押さえされます。そのため、差し押さえされるまでの期間が短いです。
ステップを飛ばせるのは、公正証書が法的な執行力を持っており、下図のように差し押さえの強制執行に同意する文言が含まれているからです。
(引用元:金銭消費貸借契約公正証書の例|松戸公証役場)
借用書(消費貸借契約書)などに公正証書と記載されている場合は、滞納しだい差し押さえになる可能性があるので注意が必要です。
借金を減らして問題を根本から解決する3つの方法
借金減額を目指すのは、差し押さえを回避するおすすめの方法になります。早めの支払いができれば延滞利息や遅延損害金が高くなってしまうのを避けることができます。また、どうしても支払いが難しい場合は減額してもらう手段もあるからです。
また、過払い金が発生していれば、借金を完済できることもあります。
そこで、借金を減らして問題を根本から解決する方法を紹介します。具体的には、以下の3つです。
- おまとめローン
- 過払い金請求
- 債務整理
それぞれ詳しく解説していきます。
おまとめローン
おまとめローンは、複数の借金を1つにまとめる金融商品です。金利を減らしたり、月々の返済額を抑えられたりできるメリットがあります。支払先が1つになるので、毎月の支払いが一度になり、返済に追われるストレスを減らせるでしょう。
注意点としては、申し込みの際に企業の勤続年数や年収、信用情報などが重視されることがあげられます。
つまり、返済の滞納をしていたり、差し押さえがせまっていたりするなら、利用するは難しいでしょう。また、何度もおまとめローンに申し込むのも信用情報への悪影響が懸念されます。
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過払い金請求
過払い金がある場合、請求すればお金がもどってくるので借金の返済が楽になります。実際、過払い金が多くあったので、借金完済の上でお金がもどってきた事例もあるほどです。また、過払い金で借金が完済できれば、ブラックリスト入りすることはありません。
ただし、過払い金は借金をしていれば必ずあるわけではありません。また、2010年までに契約を結んだ借金が対象だったり、時間の経過や民法の改正で時効がせまっていたりします。
債務整理
債務整理はデメリットはあるものの、借金の大幅な減額や免除といった大きなメリットもある手段です。
債務整理の種類によっては、間近にせまった差し押さえを止める効果も期待できます。債務整理の種類は以下の3つです。
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産
メリットとデメリットがあるので、それぞれの特徴を簡単に解説していきます。
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任意整理
任意整理は、返済方法などを金融機関などと交渉する手続きです。裁判所を介さずに手続きをするので自由度が高く、債務整理をしたい人が最初に検討する方法でもあります。
多くの場合、借金の元金が減ることはありませんが、延滞利息や手数料の軽減を目指せるので返済の負担を軽くできます。
個人再生
個人再生は、借金の元金も減らせる手続きです。最大で借金を10分の1まで減額することができます。
また、自宅を手放さなくてすむようになるといったメリットもありますが、借金が5000万円以下までしか利用できないといった決まりもあります。
個人で個人再生をおこなうのは難しいです。個人再生を行う場合、弁護士に依頼するのがおすすめです。
自己破産
自己破産は、破産申立書を裁判所に提出することで借金を0にできる手続きです。
信用情報に影響が出るといったデメリットがありますが、メリットがもっとも大きな手続きでもあります。取り立てられた後は別ですが、タイミングを逃さなければ口座を含めた差し押さえを止められるのも大きなメリットです。
ただし、手続きに弁護士の手助けはほぼ必須になります。債務整理の実績が豊富な弁護士に依頼するのがおすすめです。
おわりに
口座差し押さえは会社や家族にバレて関係が悪化するおそれがあり、今後の生活にもさまざまな影響が出ます。根本的に借金をどうにかしないと回避するのも難しいです。
そのため、口座を差し押さえられる前に借金問題を解決するべきです。借金の減額を目指す方法はいろいろとあります。まずは、一日でもはやく弁護士に相談することを強くおすすめします。