借金と聞くと、消費者金融からの借入のことをイメージすることが多いのではないでしょうか。消費者金融は一昔前まで「サラ金」と呼ばれており、高い金利を取る悪徳業者のイメージがまだ残っているかもしれません。
消費者金融に比べて、銀行からの借入は消費者金融よりも安心できると考えている人もいます。しかし、銀行からの借金は消費者金融からの借金などと同様に注意すべき点が多くあります。
今回は、銀行から借金する場合の注意点、返済ができなくなった場合の対処法などを解説します。
銀行の借金は2種類ある
銀行から借金をする場合は、
- 目的別ローン
- フリーローン
の2種類があります。
目的別ローンとフリーローンは使用できる範囲や金利、審査の厳しさなどが異なります。
目的別ローン
目的別ローンは、お金の使い道が明確に決められており、他の用途には使えないローンのことです。
住宅の購入の際に組む「住宅ローン」や車を購入する際に組む「マイカーローン」、子どもの教育費のために組む「教育ローン」などが目的別ローンに該当します。同じ目的別ローンでも、金融機関によって金利が異なり、手続きや融資実行までにかかる時間も変わってきます。
目的別ローンのメリットは、フリーローンよりも金利が低いことです。
反対に、デメリットはローンの内容に合わせた書類の提出などが必要になるため、フリーローンより手続きに時間がかかることです。
目的別ローンのメリット・デメリット
メリット | フリーローンよりも金利が低い |
デメリット | フリーローンよりも手続きに時間がかかる |
フリーローン
フリーローンは、その名の通り目的に制限がなく自由に使えるローンのことです。
「カードローン」もフリーローンの1種ですが、多くの銀行では両者が別々に扱われています。
カードローンではないフリーローンは、契約に基づき、借入金額や金利、返済金額を決め、契約内容に基づいた融資が行われます。そのため、1回の利用につき借りられる回数は1回だけとなっており、再び利用したい場合は、再度申し込みと審査を受けなければなりません。1回の利用につき借入は1回だけなので、ローンの管理はしやすくなります。
一方、カードローンは限度額まで必要であれば何度でも借りることができますが、その分返済額などが把握しづらくなることもあります。
フリーローンは、目的別ローンに比べて手続きや審査が簡単に済む場合が多いものの、金利は高めに設定されています。
目的別ローンのメリット・デメリット
メリット | 目的の制限がなく自由に使える 目的別ローンよりも手続きが簡単 |
デメリット | 目的別ローンに比べて金利が高い |
銀行ローンでも安心はできない
銀行に借金をする場合は、消費者金融よりも安心できると考えている人もいます。
しかし、銀行からの借金であっても、
- 消費者金融よりも総額が高くなってしまう場合がある
- 銀行ローンに苦しんでいる人もたくさんいる
ということを認識しましょう。イメージだけで安易に借金してしまうと後悔してしまいます。
長期の借金では銀行の方が高い場合もある
「消費者金融は金利が高い」というイメージだけが先行し、「銀行なら金利が低くて安心」と考える人も多いはずです。
たしかに、銀行のカードローンの金利は年15%前後、消費者金融の金利は18%となっており、銀行のローンの方が安いことは事実です。金利によって毎月の返済額は決まるため、借入額が同じであれば毎月の返済額も銀行の方が少なく済みます。
しかし、毎月の返済額は銀行の方が安くても、完済までに支払う利息の総額は銀行の方が高くなってしまう場合があります。
例えば、50万円を借り入れた場合、
- 銀行:毎月1万円返済
- 消費者金融:毎月1万5000円返済
のように返済することが一般的です。
これを返済まで続けると、それぞれの利息は
- 銀行:27万3068円(77ヶ月で完済)
- 消費者金融:19万8737円(47ヶ月で完済)
となり、銀行の方が7万5000円ほど多く返済しなければなりません。
金利がそれほど違わない場合は、返済期間が短い方が支払う金利は少なくて済みます。
月々の返済金額が安いからといって長期の借金をしてしまうと、返済総額が高くついてしまうため、注意が必要です。
銀行の借金で苦しんでいる人も多い
銀行から借金をすると、消費者金融などでは負うことのないリスクが発生します。
消費者金融などでは、「総量規制」という規制によって、債務者の年収の1/3を超える貸し付けができないようになっています。これにより、債務者の収入に見合わない無理な貸付を制限することができます。
ところが、銀行はこの総量規制の対象外のため、どこまで貸付を行うかは銀行の自主規制に任されているのです。
銀行の審査は消費者金融などに比べて厳しいため、「無理な借金を認めるはずがない」と考えてしまうと、自分の支払い能力以上の借金をしてしまう恐れがあります。
最近では銀行の「過剰融資」が問題視されており、金融庁が大手銀行に立ち入り調査に入りました。
銀行だからといって、決して借金のリスクを軽視してはいけません。
銀行の保証会社の多くは消費者金融
銀行からのローンは一般的に2か月以上滞納すると強制解約となります。残ったローンは保証会社が銀行に代位弁済する仕組みになっています。
代位弁済が行われると、債権者は銀行から保証会社に変わることになり、その後の督促手続きは保証会社によって行われます。
つまり、銀行からの借金であっても、借金の返済が困難で滞納してしまった場合は保証会社である消費者金融などを相手に交渉を行う必要があるのです。
このように、銀行からの借金には必ず保証会社が存在し、多くの保証会社が銀行傘下の消費者金融やクレジットカード会社です。
借金において、銀行と消費者金融は全く別のものだと考えることは適切ではありません。
銀行で借金をする場合の注意点
銀行から借金をしなければならない場合は、
- 返済計画を立てておく
- 適用金利を確認する
- 追加の借入がないように心がける
など、手続きをする前にしっかり準備しておきましょう。
返済計画を立てておく
計画的な返済をする上で返済計画の作成は重要です。
返済計画では、家計の収入と支出を分析し、どのくらいの返済額が妥当かをあらかじめ決めておきます。
支出面では余計な出費がかさんでいないかを注意し、可能な範囲で節約を行います。
収入面では、副業などの新たな収入源が確保できないかを検討しましょう。
また、臨時収入、ボーナスなどのまとまった収入も計画に入れておき、できるだけ繰り上げ返済を心がけましょう。
返済期間は長くなるほど利息が上乗せされ、返済総額が大きくなってしまいます。月々の返済額と返済期間のバランスを意識し、現実的な返済計画を立てることが重要です。
適用金利を確認しよう
手続きを進める前に、借金に適用される金利を確認しておきましょう。
目的別ローンや担保を提供したローンは金利が低くなりますが、そうでない場合は必ずしも金利が安いとは限らないため、安心してはいけません。
カードローンの金利は安いとは言えず、銀行によっては消費者金融とほぼ同じ金利を設定しているところもあります。
特に長期の借金になると、少しの金利の違いで返済総額に大きな影響を及ぼします。借金に苦しまないためにも、銀行が提供する返済シミュレーションなどを活用し、あらかじめ返済のイメージをしておくことが重要です。
追加の借入をしないように心がけよう
銀行の借金の中でも、カードローンは「極度額方式」の融資と呼ばれ、契約で決められている限度額の中で何回でも借入をすることができます。
また、極度額方式では、一度返済をするとその分再度借金をすることができます。例えば、限度額50万円のカードローンで50万円を借入れたとしても、10万円を返済するとまたその分の借入ができるのです。
銀行のカードローンはカード1枚で簡単に借金をすることができるため、一時的に手元にお金がない場合に非常に便利な商品です。しかし、これを何度も繰り返していると、金利を余計に払い続け、延々と借金生活から抜け出せなくなってしまいます。
何度も銀行から借入をしてしまう場合は、新たな収入源の確保や支出の削減を検討したほうが根本的な解決に繋がります。
銀行からの借金が返せなくなったら
銀行からの借金が返せなくなった場合は、借り換えや銀行相談窓口への相談などを行いましょう。一時的なお金の不足であれば、これらの手法で対処できる場合があります。
まずは「借り換え」で借金を一本化する
複数の銀行から借金をしている場合は、「借り換え」によって借金を一本化すると返済の負担を軽減することができます。
借金がかさんで多重債務に陥ると、借りたお金を別の会社の借金返済に充てるといった自転車操業状態になり、借金の把握が難しくなります。また、多重債務状態になると借金の返済で頭がいっぱいになり、精神的に追い詰められてしまうこともあります。
銀行の「おまとめローン」では、借金を一本化することで多少金利が低くなることもあり、借金の返済先も一本化されるので借金が管理しやすくなります。弁護士などへの手続きも必要ないため、比較的ハードルの低い方法です。
一方、借金を一本化しても金利を大きく減らすことはできません。また、おまとめローンは審査を通過しなければならず、年収や勤続年数などの経済状況をチェックされます。
借金の一本化は、借金そのものを大きく減らすためというよりは、一本化により管理がしやすくなることを目的として手続きすると良いでしょう。
おまとめローンのメリット・デメリット
メリット | 借金を一本化でき管理しやすくなる |
デメリット | 一本化しても金利はそれほど下がらない おまとめローンの審査を受けなければならない |
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銀行窓口で返済日の相談をする
決められた返済日までに返済が難しい場合は、必ず銀行の相談窓口に相談しましょう。
銀行の借金は、返済期日を1日でも過ぎると「遅延損害金」という延滞料が発生します。何日も返済を送らせてしまうと、その分遅延損害金も増えてしまい、結果的にさらに返済が厳しくなってしまいます。
銀行の相談窓口で直接借金や金利の減額の相談に応じてもらえる可能性は低く、そのような場合は別の手段が検討する必要があります。
銀行の借金に悩んでいる場合は、直接取引をしている銀行の相談窓口のほか、全国銀行協会が設置するカードローン相談窓口やカウンセリングサービスを受けることができます。これらのサービスでは、多重債務や延滞などの悩みについて相談に乗ってくれるほか、必要に応じて法テラスなどの機関も紹介してくれます。窓口への相談に抵抗がある人は、まずこちらに相談してみるのも良いでしょう。
借金を大きく減らすには債務整理が必要
銀行から借りた借金は、債務整理という方法で利息や元金を減額することができます。債務整理には、
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産
という3つの方法があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
債務整理は返済額を大きく減らせる
任意整理は、借入先である銀行と直接交渉をして借金を減額してもらう手続きです。
任意整理は、裁判所を介さず直接銀行とやりとりをするため、裁判所との郵送でのやり取りなどはなく、周囲に借金返済が知られるリスクも少ない方法です。
借入先との借金減額の交渉は、専門的な知識も必要で、借入をした本人が直接銀行窓口に行って交渉してももあまり効果は期待できません。弁護士事務所で任意整理の手続きをすることで、専門家が適切な対応をしてくれます。個人再生は、裁判所の認可を得て借金の残高を原則5分の1まで減額することができる手続きで、任意整理よりも大幅に借金を減らすことが期待できます。
個人再生は借金が少ない場合はあまり減額幅は大きくありませんが、借金額が500万円以上1500万円未満では最大5分の1まで、借金額が1500万円以上3000万円未満では最大300万円にまで減額されるなど、大きな借金を抱えている場合はメリットが大きい手続きになります。
自己破産は、借金をゼロにできる最も強力な債務整理の方法です。支払い能力がないと判断された場合に自己破産が可能で、自己破産後も最低限の現金や生活必需品は残すことができます。
債務整理の効果
任意整理 | 裁判所を介さず手続きが比較的簡単 金利をカットし借金を減額できる 督促を止めることができる |
個人再生 | 任意整理より大幅な借金の減額ができる 借金額が大きいほど減額率が高い |
自己破産 | 借金をゼロにできる 最低限の現金や生活必需品は残せる |
銀行に借金がある場合、事態の深刻さがどの程度なのかによってベストな選択肢は変わってきます。金利のカットだけで返済の目途が立つのであれば、任意整理だけで済ませてしまったほうが良いでしょう。反対に、多額の借金を抱えてしまい、返済の目途が立たない場合は、個人再生や自己破産を検討することになります。
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債務整理にはリスクもある
債務整理にはメリットばかりではなく、手続き後の生活に影響が出ることもあります。
債務整理は任意整理・個人再生・自己破産いずれも手続き後の信用状況に影響を与え、借入やクレジットカードの発行ができなくなってしまいます。今後ローンを組もうと考えている人には要注意です。
個人再生と自己破産は国の機関紙である「官報」に手続きの事実が掲載され、周囲に知られる可能性も高くなります。
自己破産では、財産を現金化する必要があるため、高額な財産などは手放す必要があります。士業などの一部の仕事が一定期間制限されることもデメリットです。
債務整理による生活への影響
任意整理 | 信用情報に傷がつく |
個人再生 | 信用情報に傷がつく 官報に事実が掲載される |
自己破産 | 信用情報に傷がつく 官報に事実が掲載される 財産を手放す必要がある |
債務整理は借金を大幅に減らせる可能性がありますが、その分手続き後の生活や経済活動に少なからず影響があることも覚えておきましょう。
銀行の借金を債務整理できるかは弁護士に相談しよう
債務整理は弁護士によって手続きが行われます。例えば、任意整理でもどの借金を整理対象にするのかなど、詳しい手続き内容は弁護士とともに進めていく必要があります。
債務整理は状況によって対処法が異なるほか、多重債務の場合は複数の金融機関に対応しなければならず、ひとりで悩みを抱えていても事態は良くなりません。借金返済の目途が立たない場合は、早めに弁護士に相談してみましょう。
銀行の借金を滞納すると様々なデメリットが!
銀行の借金を滞納すると、生活に大きな影響がでます。
具体的には、
- 督促が届く
- カードが使えなくなる
- 信用情報に傷がつく
など重大なデメリットがあります。
滞納してしまいそうな場合は早めの対処が必要です。
督促が届く
返済日が過ぎても入金が確認できない場合は、銀行から入金の目途を確認する電話やメールが来ます。その後も入金が確認できなかったり、連絡を無視した場合は、新たに設定された支払日と遅延損害金を上乗せした金額が払い込み用紙によって請求されます。この時点で返済ができれば、督促が止まり、カードなども使用可能になります。
2か月を経過すると借金の一括請求をする書類が郵送され、さらに事態が進行すると、最終的に給料が差し押さえられることもあります。
催促しても支払いに応じない場合、保証会社は裁判所に申し立てを行うことがあります。全額返金の訴えが裁判所によって認められると、滞納している分を一括して返済しなければなりません。この際、和解が成立すれば、分割して返済したり、金利が減免される可能性もあります。裁判所の督促にも応じない場合、裁判所は勤務先に差押通知を送り、債務者の給与の一部を差し押さえます。
給与を差し押さえる際は勤務先に連絡が入るため、会社に借金や滞納の事実を知られることになります。
ただし、給与の差し押さえは会社に直接損害を与えるものではないため、会社側は差し押さえを理由に容易に解雇することはできません。
銀行との借金問題は、連絡を無視するなど対応の誤りから来ることも多く、滞納の際は素早く適切な対処をすることが重要です。銀行からの連絡は怖がらずに必ず対応するようにし、返済の目途などを詳細に伝えるようにしましょう。
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遅延損害金が大きくなる
銀行からの借金の滞納を続けると、その分遅延損害金は増えつづけます。
銀行にもよりますが、遅延損害金は年率14%~20%程度が一般的です
遅延損害金の具体的な計算式は、
返済額(元金) × 遅延損害金利率 ÷ 365(日) × 延滞日数
で算出することができます。
借金の元金が100万円、遅延損害金が20%で1か月滞納した場合は、
100万円×20%÷365×30日=約1万6500円
となり、その分余計に返済をしなければなりません。当然、借金の額がより大きかったり、滞納期間がより長ければ、その分遅延損害金も膨らみます。
借金は滞納している間にも膨らみ続けます。滞納をしてしまいそう、あるいは既にしてしまっている場合には、早めに専門家に相談することが重要です。
信用情報に傷がつく
一定期間を超えると、信用情報機関(個人の借入や返済情報を管理している機関)に事故情報としてブラックリストに入れられてしまいます。ブラックリストに入ると、借入やクレジットカードの発行ができなくなるなど、生活に影響を及ぼします。
信用情報がブラックリスト入りする期間は、借金を滞納してからおよそ2か月程度です。たった2か月の滞納でも、その後数年間借入などができず不便を強いられることになるのです。
滞納が長引いてしまいそうなときは、家族や知り合いからお金を借りるなど、当面の資金不足を補う対策が必要です。どうしても返済の目途が立たないのであれば、事態が悪化する前に弁護士に相談しましょう。
カードローンが使えなくなる
返済を一定期間滞納してしまった場合、カードが使えなくなります。
カード利用停止のタイミングは銀行によって異なり、翌日から使えなくなる場合もあれば、数日経過後に使えなくなる場合もあります。
カードローンが停止になった場合、決められた返済額を振り込むまでカードローンは使用できません。必要な額を返済すると再び利用することができます。銀行によっては利用再開まで数日かかることもあります。
また、2か月程度借金を滞納した場合に郵送で行われる一括請求は、ブラックリストに掲載されるタイミングとほぼ同じ時期になるため、滞納している借金を別の銀行のカードローンで支払おうとしても、借入ができない状態になっていることがあります。
一括請求をされた場合は、一刻も早く弁護士事務所に相談しましょう。弁護士に相談すれば、督促を止めたり差し押さえを防ぎ、最悪のケースになることを避けられる可能性があります。
銀行から借金する際は計画性が重要!
銀行からの借金は、決して安心できるものではなく、多額の借金や長期にわたる返済、滞納などによって様々な生活リスクを引き起こします。
銀行のカードローンなどは目的別ローンに比べ手軽で何回でも借りられるため、借金に依存した生活を引き起こしやすいこともリスクのひとつです。
「銀行だから」といって安心せず、金利や返済までの期日、毎月の返済額を入念に確認しておき、現実的な返済計画を立てることが重要です。
どうしても借金が返せない場合は、借金そのものを減らす債務整理の手続きをし、生活を立て直すことを検討しましょう。